AVを見つけたオモダカさん
勝手知ったるアオキの家。時間が空いた時には何度も彼の家に押しかけて一緒に映画を見てきた。トップの借りてくるものはどうしてこんなものばかりなのですかと文句を言いつつもたいていは付き合ってくれるし、何だかんだ言って拒否されたことも、それに乗じて私の望まぬようなことを要求されたこともなかった。
だから、すっかり油断していた。
それを見つけたのはたまたまだった。今日はノー残業デーだからと私は彼の家に押しかけて、一緒に新作のサメハダー映画を楽しんだ。彼は好みではなかったようで微妙な顔をしていたが。
終わったところでお茶でも飲みますか、と彼が台所へ向かい席を外していた時のこと。デッキからディスクを取り出した際、ふと彼自身が所持しているものらしいディスクがしまい忘れて置かれたままなのに気付いてしまった。
それを片付けようと私はいつもは触れさせてくれない引き出しを開けた。そしてついでに彼の収蔵品のひとつを手に取る。
私とアオキは映画の趣味はさほど合わないのか私の好きなタイプの映画はたいてい彼は微妙な顔をしている。ならたまには彼が好きそうな映画でも持ってきてあげようかと、その参考にしようと、そう思っただけだったのだ。
それはあられもない格好の女性がパッケージに書かれているものだった。
ひとつを手にとってそれを見るまで、それがいわゆるアダルトビデオというものだとは思いもしていなかった。
いや、一般的な男性がこう、時折放出する必要があるらしいという知識くらいは男性経験のない私だって持っている。年齢を思えばアオキがそういうものを持っていても、おかしいわけではないのだ。
ただ枯れたような見た目の、今まで何度も家にお邪魔しているのに一度も私に触れてきたこともないアオキが、そんなことをしているというイメージは一度たりとも持ったことがなかった。
それに、この内容は、
「……興味がおありなのですか?」
そのパッケージに気を取られ過ぎていたのだろうか。いつの間にかすぐ後ろからアオキの声が聞こえて、私はびくりと身を震わせてしまった。
お茶をちゃぶ台に置くと、溜息を吐いてこちらを見下ろす。そんな彼にわたしはしどろもどろになりながら言い訳をする。
「い、いえ、ただ、貴方が出しっぱなしにしていたこれを片付けようとした際に、貴方の好みの映画の傾向でも知りたいと思っただけで、ですから、その」
何を考えているのか彼は少しの間こちらを見ながら逡巡しているように見えたが、やがて私の持っているディスクのパッケージを取り上げる。そしてとんでもないことを言い出した。
「なら、見てみますか?」