ASMR

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Nera

世界政府が行なった研究で興味深いデータがある。

女の声と男の声、どっちの方が安らぐのかというものだ。

その結果は、7割以上の人物が女の声の方が安らぐと返答を得た。

では、それを利用すればどうなるのかは賛否あり、未だに結論は出ていない。



「ルフィ!!またやらかしたわね!!」



世界政府直下海軍本部が所有する大型軍艦。

その甲板で正義のコートを羽織った女将校が怒声を出している。

名前を呼ばれた青年は顔面を真っ青にして硬直し、動く気配はない。

部下たちは、またかと感じながら黙々と作業を行なっていた。



「あんたは、いつもいつも!!」

「だってよ!」

「言い訳無用!今日という今日は許さないんだから!!」



ルフィ大佐とウタ准将が口論するのは日常である。

ただし、世界一の歌姫から発せられる怒声は、もはや兵器に等しい。

桁違いな肺活量と発声力は、訓練された兵士たちの脳すら揺さぶるほどだ。



「おい耳栓を付けろ」

「了解!」



慣れた手つきで耳栓を填めた兵士たちは、上官たちを無視して任務を続行する。

ところが、とある兵士は業務をサボってウタ准将が居る方を見つめていた。



「おっ!音声が録れそうだ」



彼は、普段はライブ音声を加工したり“音貝”の調整をしていた。

ただ、兵士としては戦力にならず、軍人としては評価が低いが仕方ない事だ。

下手に介入するよりは何もしない方が良いと半ば同僚から放置されていた。

そんな彼は、歌姫の怒声を聞いてバックから“音貝”を取り出した。



『さて、音声の収録といきますか!』



“音貝”は、空島で収穫できる文字通り、音を記録できる貝である。

その貝は、殻頂を押す事によって音声を記録する事ができる。

もう一度、押すと記録した音声を再生する事が可能だ。

彼は、これを使って日常的に上官の音声を入手していた。



「どうして私に相談しないわけ?私ってそんなに信用できないわけ?」

「違うぞ!」

「ちゃんと教えたのに全く…いつも寝てばっかりいてさ!覚えてないでしょ?」

「はい、すみませんでした」

「せっかく教えてあげたのにさ…それに何で失敗を報告しないの?」

「ごめんなさい」



ルフィ大佐は必ずウタ准将の質問を全部聞いてから返答をする。

その為、よっぽどの事が無い限り、ウタの上質な音声が録れるのだ。



「私は、あんたの為を想って言ってるの!」

「分かってる」

「じゃあ、今度こそ理解できるように視聴覚室に行こうか」

「うげっ!!」

「たっぷりルールを教え込んであげるから覚悟しなさい!」

「どうすれば許してくれるんだ!?」

「どうすればって、あんたがミスしなくなったら許してあげる!ほら来なさい!」



どうやら、海軍の規則を破ったせいでルフィ大佐は叱られたようだ。

何故かウタ准将は、大佐に対して主語や具体的な失態内容を口にしない。

幼馴染という関係もあるのか、時折で他者に悟らせない喋り方をする。

だが、彼にとっては好都合であった。



「よし、良い音声が録れた」



先ほどの会話を録音した貝を持って彼は職場へと向かって行く。

傍から見ればサボり癖のある兵士に見えるが立派な班長でもある。

職場に到着した瞬間、気持ちを切り替えて音響設備の調整を始めた。



「まーた、録音してきたんですか?」

「ああ、今回もバッチリだ!」

「ウタ准将に激怒される前に辞めた方が良いですよ」

「バカ言え。おれが居なかったらライブは成り立たんさ」



紅白の髪がトレードマークのウタ准将が率いる部隊は特殊である。

複数の軍楽隊が所属する他に様々な電伝虫が飼われている。

これは、歌姫を兼任している准将がライブをしたり作詞作曲をしているからだ。

すなわち、この部隊は通常の業務に加えて音楽関連の業務に携わる。

その影響からか、音響設備の整備班である班長にお咎めは無い。



「それに今回の音声は上質だ。編集し甲斐があるほどにな!」



それでも盗聴染みているせいで部下から咎められる声は絶えない。

そんな声を無視した班長は、複数の貝を持って防音室に閉じ籠った。



「もうじき多忙になるっていうのに何考えてるんだあの人は!!」

「まあいいじゃないか。休ませてあげるのも手だぞ」



部下たちの苦言は絶えないがそれでも看過するには理由がある。

それほど班長は優秀であるので口出しできないのだ。

他の兵士と違って有能さを知っているからこそ、性癖を見逃していた。



「……もうじき4時間が経過しますよ」

「まいったなーそろそろ報告をしないといけないんだがなー」



それでも4時間以上私情で動かれるとどうしようもない。

とりあえず、下士官に報告しようと考えた瞬間、防音室の扉が開いた。



「おいお前ら!!」

「どうしたんですか?そんな嬉しそうになさって」

「音声フェチ待望のTDが完成したんだ!!」

「またですか…」



TDは、音貝を養殖して量産化させた端末である。

音貝と同じ機能を持つが、専用の再生機で使用すると高音質で再生が可能となる。

本来なら当分先に一般開放される予定であった発明品であるが先行販売されていた。

世界政府の看板役に命じられた歌姫ウタの唄を世界中に届ける必要があった為だ。

結果としては大成功し、僅か数年でウタは“世界の歌姫”と呼ばれるほどになった。



「どうだ?聴きたいだろ?……そうか、聴きたいか!そうだよな!」



ニヤケ顔で部下たちに質問してくる班長は、正直キモかった。

それでも首を縦に振ったのは音楽界に従事する者の定めか。

とにかく自分の質問を肯定してくれた部下たちを見て班長は上機嫌になった。



「耳の穴をほじくって良く聴けよ!!ちょいちょいのちょいっと!スタート!」



口調がぶっきらぼうな班長は予め再生機にあったTDを交換。

さきほど完成したTDに差し替えてスイッチを押した。



《あら?寝ちゃってる…ミスしない様にたっぷり教え込んだのに…》

《あんたの為なのに全く…どうすれば覚えてくれるのかな?》



TDから再生された音声は、ウタ准将の声であった。

しかし、さきほどの騒動と違って優しく語りかけるものである。



《私に相談するのはいいけどさ。覚えないといけないでしょ》

《私はあんたを想っているのに…》



班長の趣味は、ウタ准将の声を編集したTDに録音する事である。

今回の場合は、勉強嫌いの人の為にウタは勉強を教えている場面だ。

ところが、勉強を教えている途中で寝てしまい彼女は困惑してしまった。

その際に思わず好意を漏らしてしまうという内容であった。



「今回の音声では、もう1パターンができたんだが、聴くか?」

「班長、そろそろウタ准将がいらっしゃいますよ!」

「クソ、せっかく聴かせてやろうと思ったのにな!」

「准将に聴かせる気は?」

「さすがにやめておこう」



音貝のエキスパートでもある彼は、TDの編集に加わっていた。

そこから音楽や唄だけではなく声を録音して編集する事に拘り始めた。

未だに部下に理解されていないが、いずれ必要になって来る技能だと信じている。

ただ、ウタ准将に直接聴かせるのは、彼でも躊躇う行為であった。



「おっ!来ましたぜ!」



ノック音がして兵士が扉を開けば、そこにはウタ准将が立っていた。

湿っている紅白の髪に寝間着姿、そして彼女から漂う鼻をくすぐる甘い香り。

以上の事から風呂上り直後に直行してこの部屋にやってきたようだ。



「「「准将、いらっしゃいませ!!」」」

「どう?先日録音したライブは、ばっちり?」

「もちろんですとも!!」



ウタ准将は、自分の歌には自信があるが、音響に関しては素人である。

だが、彼女の固有能力で自分の望んだ音楽を再現する事が可能だ。

そのせいで、音響班や軍楽隊など音楽に携わる者たちに妥協は許されない。

こうやって僅かな私時間を削ってまでしてウタは自身の唄をチェックしに来ていた。



「どうぞ、こちらに腰掛けてください」

「ありがとう」

「何かお飲みになりますか?」

「いえ、唄をチェックしたらすぐに戻るから遠慮しとくわ」



何かとルフィと張り合うイメージがあるウタであるが、今の彼女は疲れ切っていた。

僅か19歳で海軍本部の准将に上り詰めた彼女は階級に成長が追い付いていなかった。

世界から一番注目されていると言っても過言ではない彼女の心中は計り知れない。

椅子に腰かけて専用のヘッドホンを付けたウタは部下からの指示を待った。



「準備はよろしいですか?」

「お願い」



カンペを持った部下に対して親指を立てて歌姫は返事をする。

「カチッ」と音がすると録音したデータの再生が始まった。

ここで兵士たちは准将の行動を見て違和感を覚えた。



「…もういいわ」



何故か音声を流してから10秒も満たないのにウタはヘッドホンを外した。

音程を外したルフィの唄ですら最後まで聴く性格なのは全員に周知されている。

だからこそ、チェックを中断したのは異常事態だと分かってしまった。



「何か問題でも?」

「聴いてみれば分かるわ」



編集責任者の班長は血相を変えて歌姫に理由を問うとヘッドホンを手渡された。

疑問に思いながらヘッドホンを填めた瞬間、彼女が作業を中断した理由が判明した。

それと同時に彼は身震いをして上官の顔を見た。

客先に見せる笑顔であったが、これは作り笑いだとこの場に居る全員が知っている。



「何か言う事は?」

「ウタ准将、申し訳ありませんでした!!」



ウタがヘッドホンを外した班長に尋ねると彼は頭を床に叩きつけて謝罪した。

土下座よりも誠意があるように見えるが問題なのはこの後の対応である。



「“痛み”か“夢”か“現実”か。どれを選びたい?私のオススメは痛みかな?」

「ひいいいいい!!“痛み”でお願いします!」



自分の発言を録音されているのは、ウタも周知していたが言葉に出さなかった。

てっきりエコーの練習だったり音響編集の練習に使われていると思っていたからだ。

だが、まさか音声を加工して個人の嗜好で楽しんでいたとは予想外だった。

そんな裏切りが大嫌いなウタが放った3つの選択肢は、どれも悲惨な物である。



『“痛み”以外に選択肢がない!!』



床と激突した額から血を流す班長は、真っ先に『痛み』を選択した。

文字通り、激痛を伴うが少なくともそれで終わるからだ。

他の選択肢は、地雷どころか精神に異常をきたすレベルでヤバかった。



「でも、私は処罰する為にここに来たわけじゃないの。そこは理解してる?」

「はい、速やかにTDを変えて完成品を提供します」



風呂上りで手を汚したくなかったのか、それとも唄を優先したのか。

処罰は先送りと暗に告げられて班長は急いで立ち上がってTDを変更した。

それをじっと見つめているウタの視線は、本当に痛かった。



「できました!」

「次は無いわよ?分かってるわよね?」

「もちろん!今回も前回を越えて最高傑作です!!」



海軍本部の将官クラスは、戦闘能力が半端じゃない。

それはウタ准将であっても例外ではない。

少なくともこの軍艦の乗組員は、ルフィ大佐を除いて瞬殺される実力差だ。

それでも痛みを選択したのは、それ以上に能力がヤバ過ぎるせいである。

本心から意見を述べた班長は、再びヘッドホンを上官に手渡した。



「コレ、おれたちもヤバくねぇ?」

「間違いなくヤバいだろな」



同室していた班長の部下たちも顔面が真っ青になって佇んでいた。

下手に動けば、自分たちも巻き添えを喰らうと理解していたのだ。



「うん、コレに関しては満足」



数分間しっかりと曲を聴いていたウタは、ようやく作り笑いをやめて感想を述べた。

すなわち、依頼されていた件は満足したという事である。



「では…」

「顔をあげて」



立ち上がった上官の顔を見れない班長に顔をあげろとウタは命じた。

命令に従って彼は顔をあげると真剣な眼差しで見つめられているのに気付いた。



「ねえ、ルフィにも言ったけどさ。なんで相談しなかったの?」

「それは個人の嗜好を満足させようとこっそり始めた事なのですから」

「ふーん。バレず済むならそれで良いと思ったの?」

「滅相もございません!!作成した証拠品は全て提出します!」



海軍本部の将軍クラスは、下士官未満の兵士ならその場で処刑できる権限がある。

もちろん、その権限はよっぽどの事が無い限り、施行されることは無い。

この世界の神々に対する利敵行為か、上官侮辱罪に触れない限りは…。



「さっきの音声を聞いたけどさ。中々完成度が高かったと思うの」

「…いえ、それは」



いきなり上官から褒められたが班長には嬉しい気持ちなど一切無い。

上官の尊厳を踏み躙ったどころか、信頼されていた職場で悪用してしまった。

これが飴だと分かっているからこそ、返答がはっきりできなかった。



「ぶはっ!!」



甲高く肌が鳴り響く音と共に班長は頬を平手打ちされて床に転がった。

目に見えぬ速さで行なわれたビンタが相当痛いのは部下たちにも理解できた。



「発想は中々良い線をいってると思うの。でもさすがにこれは許せない」

「翌日の午後8時までにこの件の始末書を書いて私に提出しなさい」

「それと依頼の件に関しては合格、データをしっかりと管理しなさい。以上!」



ウタは、倒れ込んだ班長ではなくその部下たちに話しかけた。

上司が責任を負ったとはいえ他人事ではないと釘を刺す行為である。

もちろん、班長に追撃してもよかったがあえてやらなかった。

彼女は、海軍大将の赤犬から必要以上の処罰を行なわない様に厳命を受けていた。

そのせいで、こうやって遠回しに警告をするしかできなかった。

などとそんな裏事情を知らない兵士たちは彼女が退室をしても敬礼を続けていた。



「ふーん、自分の声に欲情する人が居るとは思わなかった」



一方、さきほどの合成音声を聴いたウタに新たな価値観が芽生えた。

彼女自身、お世辞にも自分の声が可愛いと思った事が無かった。

自分が発する声と他者が聴く声が違うという点を踏まえても、そう思っていた。



「これは使えるかも!!」



一流の音楽や有名な唄を聴いてきたウタだが、経験不足は否めない。

むしろ、それを気にしているからこそ、世界一の看板は荷が重かった。

妥協すれば、どんどん落ちぶれると分かっているからこそ彼女は妥協しない。

ところが、自分の声をツギハギにして作った合成音声に興味を持った。



「例えば、目覚ましとかリラックスするように語り掛けるとか」

「こうしちゃいられない!すぐにノートに記さなきゃ!!」



ウタの肺活量と発声力による目覚ましコールは、さぞかしうるさいだろう。

残念ながらTDはそこまで再現はできないが、本人の声は記録されている。

つまり、今までは音楽や唄しか使い道がなかったTDの用途が増えた。



「手軽に出せる効果音などにも使えるかも!」



せいぜい応援歌までしか想像できなかったウタの頭脳は新たな発見をした。

ルフィの耳かきする時にやっていた発言を記録するのはどうだろうかと。

子守唄を歌う前に語り掛ける事とか録音したい事は山ほどある。



「あっ、准将!「そこ退いて!!」えええ!?」



ウタの執務室兼私室の扉を警護していた少尉は異常と判断したのだろう。

あまりにも慌ただしい上官に話しかけようとするが途中で一蹴されてしまった。

「バタン!」と音を立てて閉まった扉を見て彼は困惑するしかなかった。



「あーだめ!!“私”だけじゃ足りない!!」



いろいろ案を思いついたがそれを記すには身体が足りない。

そこでウタは、唄を歌って能力を発動した。

すると机の上に居た複数の電伝虫が夢の世界に飛び立った。

彼らの意識が行き着く先は、ウタが生成したウタワールドである。



「みんな!!今から私が案を書いてから記録してね!!」



創造主ウタは、広い講義室を生成し、大きな黒板を囲うように座席を用意した。

そしてすぐに【音符の戦士】と名付けた兵士たちが湧いて椅子に座り込んだ。

彼らは、ウタが生み出した存在であり、彼女の意向で動く眷族みたいなものである。

そんな彼らに向かって彼女は命令を下して黒板に向き合って見つめた。



「はい、書いてね!」



この世界は、ウタの都合が良い世界である。

チョークに触れなくても瞬時に考えていた案が黒板に箇条書きで書かれた。

それを音符の戦士たちは、一糸乱れずに案をノートに記していった。



『ホントは、部下を入れたかったけどね…』



ツギハギ音声を合成した班長の罰の1つである“夢”はこの場を意味する。

唄で魂を仮想世界に誘致するというとんでもない能力による罰である。

当然、現実世界ではありえない処罰ができるので皆から恐れられている。

ここでの刑罰を受け入れるのは、ルフィ大佐くらいしかいないほど過酷であった。



「まあいいか!今度は強制的にこの場で作業させちゃおう」



最後の選択肢である“現実”は痛みでも夢でもない。

つまり、痛みにも夢にも逃げられない処罰を与えるという事だ。

以前、施行する前に気配で駆けつけたルフィに制止されるほどだった。

それは、育て親に裏切られて置いて行かれた積年の恨みが積もった怒り。

善意という暴走は、なによりも恐ろしい事を意味している。



「よし、一通り書き終えたね!映像電伝虫さん出番だよ!」



ウタは音符の戦士たちが記したノートを回収して電伝虫に内容を見せる。

ただひたすらにノートを視界に入れる行為であるがここでは意味は無い。

現実世界では、映像電伝虫に取り付けられた映写機が映像を映している。

それは、ウタワールドで見ているノートの内容そのものだった。



「シャッターチャンス!!うごかないでね!」



2つの世界で同時に存在するのに慣れているウタは並行タスクなど容易かった。

彼女は、映し出されたノートの内容を「パシャパシャ」とカメラで撮影していく。

自分の想像を他者に簡潔に伝える手段があるからこそ世界一に登り詰めた。

一見すごい事をやっているが、これをするきっかけを作ったのはルフィだった。

お互いに性格や感性が違うからこそ、自身で気付けない点を見つける事ができた。



「そうだ、始末書を受け取ったら『目覚ましコール』を作ってもらおうっと!」



この時、ウタが作った「耳かきボイス」や「目覚ましコール」は現存が少ない。

何故ならそのすぐ後に発禁されて大量に処分されてしまったからだ。

それでも彼女が残した物は、無駄にはならなかった。

後に「ASMR」と称されるシリーズの基礎を作った偉大さは今でも語り継がれる。



「ブエックション!!」

「どうしたんですかルフィ大佐?」

「なんか鼻がムズムズする」

「ホコリが舞ってるんでしょうね。部屋の掃除を依頼させます」



それはともかく最大音声の「目覚ましコール」の実験台にされるという未来。

何故か感じ取れたルフィは身震いし、クシャミをして部下に心配された。

何も知らない青年は、今回も他人事の様に垂れた鼻水を吸う為に鼻を啜った。


END

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