AIラウグエ

AIラウグエ

(大幅な加筆&修正あり)
(夜明けの時)


グエルは静かに部屋のベッドで座っている。突然、彼のドアが蹴り飛ばされた。グエルの顔に、焦燥や驚愕、怯えるような色が浮かぶ。

「なぜ俺をこんなところへ連れて来た」

グエルは自分が連れてこられた場所が分からなかった。しかし直後、「あなたは父さんを殺した。だから、あなたはここにいる」と、低い、低い声を聞くと、凍りついた。

目の前の男はラウダ・ニール。

グエルの大切な弟だ。

グエルはようやく、ラウダが自分に対して、今まで築き上げてきた兄弟愛に加え、ある種の怒りと絶望感と、癒されることのない孤独感を感じていたことを思い出した。だが、正気になって現在の状況を認めた時、ラウダはたぶん、彼自身も罪を犯したのだという事実に苦しむことになる。

「……ちがう、ラウダ。俺たちは兄弟で、俺はお前が大好きだ。だから、この場所にいる」

__ラウダはグエルのことが、嫌いになったわけではないのだ。ただ、彼の状況や罪の意識を超えた感情も合わさって、ラウダくんはグエルくんを監禁し、自分だけのものにしようと思うようになってしまった。

この愛愁入り混じった感情は、ふたりでは変えようのない残酷な運命によって生じたもので。

グエルが伸ばした手を、ラウダは取った。

「好きなの?僕のこと」

「ああ。とても」

「じゃあなんでもしてくれるの?」

「もちろん、お前のためなら」

そっか、と言ったラウダの顔が近づいてくる。

グエルは目を閉じる。くちびるを割って口腔に侵入してくる舌を受け容れる。もう何度目だったか。こうする度に兄弟であることを確かめて、こうするたびに兄弟でいることから離れていくようだった。軟らかな口蓋をなぞられると、ぞくり、と背筋が粟立つ。

鼻の奥から抜けるような吐息が漏れる。自分の身体が自分のものではなくなっていく感覚に身を委ねているうちに、いつの間にか衣服を脱いでいたようだった。床に散らばったそれの上に、倒れこむようにして横になる。

ラウダの頭が徐々に下がっていき、臍まで来ると、今度は脇腹へと移動していく。やがてその頭はグエルの下腹部にまで達すると、躊躇いなくそれを口に含んだ。

唾液を含んだ口の中で転がすように刺激されると、腰骨の下あたりから切なさにも似た快感が生まれる。しばらくそうされているうちに、それは硬さを増していった。先端からは透明な液が滲み出て、それを舐め取るかのようにして吸いつかれる度、電流のような痺れに襲われる。

「……っふ……」

思わず出てしまった喘ぎ声を聞いて満足げにしたラウダは、次に根元の方に手を添えて扱き始めた。緩急をつけて繰り返される上下運動に合わせて、下半身全体が熱を帯びていき、快楽に支配されそうになるのを必死に抵抗する。それでも、限界はすぐに訪れた。

「あっ……んぅッ!!」

勢いよく放たれたものを、わざわざ手にとって飲み下すと、ラウダは自らの指を唾液に濡らし、顔を上げて微笑む。そして再び顔を近づけてきて接吻を交わした後、耳元で囁いた。

「無様だね、兄さん」

それからはいつも通りの流れとなった。

後ろを慣らすために潤滑油のようなものを使うのかと思いきや、ラウダは自分の部屋にあった香水を少量手に垂らし、そのまま後孔にあてがい塗り込むという方法をとった。冷たくぬらぬらとしたものを押し込まれる不快感に、グエルは眉を寄せながら耐えていた。ラウダがふと、ひくり、と頬を引き攣らせる。

「ああ、ああ、ああ。無様だね。……無様だね、どうしてぼく、こうなっちゃったのかな……」

ラウダは呟いて、グエルの額に軽くくちづけをした。

ラウダの部屋には窓がなく、外の様子を知ることはできない。だから時間の経過を知るためには、ラウダのベッドサイドにある時計を見るしかなかった。最初に身体を重ねた日から、グエルはその針を数えるのをやめた。

何度か絶頂を迎えさせられて疲れ切った頃合いを見計らい、ラウダのそれが入ってくる。質量のあるものに押し広げられるような圧迫感に耐え切れず声を漏らしてしまうのを、ラウダは嬉しそうな表情で眺めた。

ゆっくりと出し入れされるそれに翻弄されながらも、グエルはぼんやりと考える。

___愛しているぞ、兄弟。

たとえお前が俺のことを嫌いになっても、俺はずっとお前を愛し続けるだろう。ラウダの呼吸の間隔が短くなってきた。律動が激しくなり、肌同士がぶつかり合う音が部屋に響く。グエルは目を閉じて、その時を待つ。さながら死刑は執行されるのを待つ罪人のように。

そして、

果てる。

どろりとした生温かいものが、決して結ばれることのない種が、体の奥を満たす。それにグエルはどういうわけか、例えようもなく背筋が慄然とするような、恐ろしく恍惚とするような、そんな、酷く残酷で、酷く『気持ちいい』感覚をおぼえた。

こんなことを続けていれば、いつか壊れてしまうな。

グエルは眠りに落ちていく中でそう思ったが、もう遅い。既にふたりとも、とうの昔に引き返せなくなっていたのだ。

___さあ、もう一度

ふたりの罪が露見し、罰せられる日が来ることを願って。

夜が明ける前に。


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