>>99 月に見守られて

>>99 月に見守られて


船長として無意識の重圧や辛い思い出が頭をよぎり

不安や吹っ切ることが出来ない悲しみを一味に悟られまいと毎夜人知れず曇るルフィ

ウタはそんなルフィを見掛け叱咤激励慰撫する



____ここは……!?


彼の目に映るはシャボン玉が浮かぶ森

そこに立つは本を持ったくまのような大男

彼の肉球のついた手のひらに触れられたら最後、仲間たちは次々とその場から消え去った


「____やめろ…」


「やめてくれ!!!!」


麦わら帽子の船長は動けない

仲間たちが次々とその場から消されるというのに氷で凍らされたかのように動けなかった


____氷…連想されるは再び苦い記憶


それはロビンを狙った海軍大将である青雉との一騎打ち


あの場は相手が律儀に一騎打ちを承諾し仲間に危害が及ばなかったが…もしもその男がもう一人の赤い海軍大将のように徹底した行動力を持っていたのなら 一騎打ちに負けた船長とその仲間たちを間違いなく殺していただろう


____赤い服を着た海軍大将 赤犬

麦わら帽子の彼の兄であるエースを殺した男

そして彼自身もそれが起きた戦場からは無傷では帰れなかった

赤犬によって腹に大穴を空けられてしまったのだ

もしも彼が一味を率いてあの戦場に突撃していたら仲間たちは____


「うわああああ!!!!」


「____へんな夢見せんなよ……」


「そうならないために二年間頑張ったんじゃねェか……」


彼は悪夢が見せた自分の奥底にある不安を振り切ろうといつも以上に一緒にいて欲しい仲間たちに笑顔で接していた


「__な…大丈夫だっただろ今のあいつらは強い…くまのおかげで前よりも強くなった…だからもうあんなことは二度と起こらない」


自分に言い聞かせるように麦わらの一味の船長は誰もいない自分の部屋で静かにボヤいた

その行為はこれから眠る時に昨夜と同じような夢を見ないようにするためだろう


「ルフィ〜!!今夜は満月だよ!一緒に見に行こう!!」


「っ!?____ウタ!そうか!じゃあ見に行こう!!」


本日の見張り番であるウタはルフィを"月を見に甲板まで一緒に来ないか"と誘いに来たのだ

断る理由のない船長は引きつった笑顔で彼女と共に部屋を出た


「ね 綺麗でしょ!!」

「そうだな!」


「___で?何悩んでんの?」

「……バレてたか」

「みんな知ってたよ…あんたのことをよく分かってるからね」


「悪夢を見てから おれは怖いんだ」

「また前みたいにどうしようもないことが起きて仲間や友達を救えないんじゃないかって考えちまったんだ」


「な〜に考え込んでんのよ」

ここまで黙って聴き込んでいた彼女は彼の不安を一蹴しようとした


「あんたは気楽にやってればいいの…船長が不安を見せてたら、クルーは不安になるんだから!!」


うさぎの耳のような後ろ髪をした彼女は彼女の経験で得た彼女なりの答えで彼を鼓舞した


「___おれも分かってはいるんだけど……夢ん中で見ちまったら変に意識しちまうんだよ」

「そっか!!分かったよ!!!!」


「なら悪夢を見ないでいいように私が毎日子守唄を歌ってあげるよ!!」


「そうすればルフィはいつものルフィに戻ってくれる?」

「…ああ!!じゃあ早速頼む……」

「だ〜め 今日はここで私と一緒に満月を見るの!!」

「いいなそれ!!そっちのほうが気持ちが晴れそうだ!!」


満月の夜、兎は月で餅をつかずに船の上で麦わら帽子の船長の小さな不安を大きな優しさで押し潰した


END



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