95%♀サンジちゃん①
この身体が月に一度の流血を伴うようになってから、一体どれほどの月日が経過したのだろう。
肩にもつかなかった髪は姉を超えて母のように背中まで伸びて。
頬は丸く、骨は頼りなく、肉は柔らかく、声は愛らしく……なにより、この足は弱くなった。
かつては岩や鉄をも砕いた自慢の蹴りは、今となっては丸太を割ることさえままならない筈だ。
寝ても覚めても、やることは飼い主である女天竜人のためのお菓子作りと、それから愛玩人形のように楚々と振る舞い笑って着せ替えられることだけ。
『俺』と口にするたびに自分が女であることを思い知らせる目に遭わされたから、いつしか意識しなくても『私』と言えるようになった。
苦痛による悲鳴も快楽による嬌声も、ソプラノの高さで囀っては金糸雀のようだと褒められた。
鏡を見るたびに思う。
こんな有様で、はたして助けに来てくれる仲間たちは、自分が『黒足のサンジ』だと気付いてくれるのか。
今更「助けに来るな」なんて言えない。何があっても仲間を見捨てないのがアイツらだ。
けど助けに来てほしくない。
もっと言うなら、レディを助ける強ささえ失って、部屋ではこんな風に一人で膝を抱えて震えるしか出来なくなった自分を見てほしくなかった。
いつ天竜人からお呼びがかかるか分からないから、あてがわれた部屋の中にいる時でも油断はできない。
どんな挙動が『男』を捨てていないと判断されて懲罰の対象になるか分からないから、誰に見られていなくても、こうして儚い淑女のように縮こまって大人しくしていなければ落ち着けなくなった。
ましてや今日は、身体を女性に近いものに改造され始めてから起こるようになった現象……いわゆる月経の初日を迎えている。
人権を無視した角度のヒールブーツのせいでズキズキと痛む爪先よりも、これからの一週間はお腹と腰のほうが痛くなるのは経験則で知っている。
だから余計に身動きする気にもなれなかった。
「ナミさんと、ロビンちゃんは。毎月こんな風に痛いのを耐えてたんだな……凄いな……」
定期的に骨盤をハンマーで叩かれるような感覚に耐えかねて、座り込んでいるベッドの上に放置してあった毛布を手繰り寄せる。
ごそごそと最低限の身じろぎでそれにくるまって、そらから視界に入る靴をじっと見下ろした。
お風呂に入る時しか脱がせて貰えないコレは、黒足と呼ばれた己を戒めるための変わり種の枷だ。
冷たく、重く、錠までついている。
コツを掴まなければフラフラと怪談話の幽霊みたいに歩くことさえ覚束ない、洒脱な拘束器具。
もう慣れたが、足の腱を切る代わりにと履かされてから数日は立ち上がるのも難しかった。
肌に纏わりつくような締め付けの不快感は今もなお健在で、血流の妨げが余計に生理痛を悪化させている感覚さえある。
脱げるものならば今すぐに脱ぎ捨てて裸足でベッドに寝そべりたい。
そんなことをすれば爆発するから、もちろん思うだけだが。