7. The Red Cheeked Girl③

7. The Red Cheeked Girl③



ぬかるむ地面を、死神達の脚が踊る。曇天に暗む中、幾つもの剣閃が生じ、流れた血が雨に解ける。

(参ったな…想定以上に手練だ。何より——"救援"が遅い)

"野外学習"と偽りこの土地へ生徒達を集め、わざと襲撃する隙を与える。そうして誘き寄せられた襲撃者達を離れた場所で待機している『隠密機動』等と共に挟撃する作戦に、破綻が生じていた。

(…これは…京楽の懸念通りだな)

浮竹は刺突を右手の斬魄刀で受け流すと、横から迫る刃を左手の斬魄刀で弾く。そして海燕を挟んで蒼純と背中合わせになり、死角から放たれた暗器を打ち払った。

「…気付いたか」

「ええ…」

異様なほどに、攻勢が弱い。

攻めあぐねているのではない。この技量ならば無理にでも突破する事は可能だろう。

何より、敵は別れた一班を別働隊で襲うことによって戦力の分散を図りながら、目標である綱彌代梨子を討つ本隊にも13名という過剰な戦力を投入している。

それにも関わらず、その強い殺意に反比例するように消耗戦を選び戦っているのだ。

当然、このままだとこちら側の救援が間に合い、彼等は撤退せざるを得なくなるだろう。買いかぶりで無いのなら、この戦意の無さには何かしらの意図がある筈だった。


そして、浮竹は逡巡の後——最悪の可能性を導き出す。



一方、梨子達一行は断崖の中に人工的に造られた細い通路を急ぎ足で進んでいた。

「つまり僕達は囮だったんですか…!?」

「そうだ! この地で演習を行うってのは単なる方便。実際はこの地に敵を誘い込むのが目的だよ!」

生徒達が男を質問攻めにするのを梨子は男のすぐ後ろを走りながら聞いていた。

梨子が自身を見上げているのに気づいた男は優しく声をかける。

「という訳で安心してくれ。この先の出口にも仲間が待機しているから襲われる心配は——」

その直後、一行の来た道から低い爆発音が聞こえる。小刻みに揺れる洞窟に全員が背後を振り返った。次いで大きな揺れが届き、死神の男が鋭く叫ぶ。

「不味い! 急げ!!!」

今のは何かと言う生徒の悲鳴に「崩落かッ、そうでなければ通路が爆破されたんだ…!」と男が返す。

爆破という単語に生徒達は青ざめる。

もしそうなら、隊長や席官の二人、何より残った同期の二人は一体どうなってしまったと言うのか…?

一行はわけも分からぬまま、足場の悪い洞窟を鬼道の光源のみを頼りに出口へ向かってひた走る。

「こっちだ!」

そして、左右への分かれ道が現れると、男が右手側の通路へ生徒達を誘導した。

しかしそこで、梨子が思わぬ行動を取る。——男の指示を無視し、左手側の通路へと飛び込んだのだ。

「ッ!? オイ!」

「梨子様ッ…!?」

「何をなさっているのですか!? お戻り下さい!!」

梨子は男と生徒達の制止に振り向きもせずに、明かりのない洞窟の奥へと消えていった。

「なんてこった…! 村長ッ、生徒達を出口まで連れて行ってくれ! 俺はあの子を追いかける!」

「わかりました…!」

村長は男が左の通路へと消えるのを見届け、生徒達を出口方面へと先導する。

——いったい何故…?生徒の心情が梨子への猜疑心で溢れる。その中でただ一人、やはり都だけが心配そうな顔で、洞窟の奥を振り返っていた。





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