696話辺り
プルプルプル、プルプルプル、ガチャ
頬についた血を拭いながら、鳴り響く電伝虫の受話器をとる。
よく聞きなれた声が耳に入り、また次の仕事だろうかと尋ねると、電伝虫の主はとある人物の訃報を知らせる。
3分もなかった会話を終え、受話器を置いた。
その場に座り、気を落ち着かせるために息を深く吐き出す。
「そっか……。
そっかぁー………」
薄暗い室内にある大きな窓を見る。その外には雲の多い青空が広がっている。
ボロボロと涙が零れていくものだから空が歪んでいく。
服の袖で涙を拭い、持っていた仮面を被り直す。
「はぁ……うん、もう大丈夫……」
気持ちを切り替えるためにそう言ってから、足を一歩踏み出した。
────────────
パンクハザード。
昔はこの島は美しい緑豊かな島であったらしいが…多くの人の介入により、その美しい景観はもう見る影もない。
そんな島では今、海賊と海軍達の異色な宴が行われていた。
「あ、俺まだ貰ってない」
「ん? ほらよ、冷めないうちに食えよ」
宴で食べる食事を配り終えたサンジは、皿にスープを盛り付ける。
「いやー、盛り上がってんな」
「うちの船は宴が好きでね」
「へぇ…あ、それも貰っていい?
喉がカラカラなんだよ」
指を差されたのは飲み物が入っているであろう瓶だ。
「おう、持ってけ」
「って、これ酒か……俺酒は飲めないんだよ」
どうやら瓶の中身は酒だったらしい、瓶の蓋を開けてしまい、どうしようかとアタフタしていると、横からゾロが手を差し出した。
「だったらこっちにくれよ」
「いいの? 悪いね」
「ジュースなら子供達の所にあるぞ」
話を聞いていたであろうウソップが、サンジからおかわりのスープを貰いながら子供達の方へ指を差す。
「どうも、ありがとう」
子供達はサンジの作った食事を美味しそうに頬張っている。
「こっちにジュースがあるって聞いたんだけど?」
「それならここにあるぞ!」
チョッパーは差し出された手にジュースの瓶を手渡す。
そこでふ、と手袋の隙間からから見えた酷い火傷の跡を見る。
「……お前、その火傷……」
チョッパーはこの火傷を負っている人物を確認しようと顔を上げた。
が、そこに居たのは不気味な梟の仮面をつけた人物であった。
「ぎやぁーーー!!!???」
思わず叫ぶと、周りの人間達が顔をそちらへ向ける。
「お、おい…あんなやつ麦わらの一味にいたか?」
「お前ら(海軍)の仲間じゃねぇのか?」
「見た事ねぇよ、あんな奴!」
騒いでいる人々を尻目に、仮面の人物はサンジの作ったスープを一口啜る。
「トラ男、知り合いか?」
「いや…………ただ、心当たりならある」
すると、目を覚ましたベビー5が声をあげる。
「フェーネ!?
貴方、来ていたの!?」
その声を聞いて、ローは僅かに冷や汗を流す。
「よりにもよって、面倒なのが来たな……!」