64話

64話


「ハァ───ッ」

ライダーが大きく息を吐き崩れ落ちる、ランサーとの戦闘の後十分と言えるほどの休憩を取り切れておらず未だに影響が残っていた状態でキャスターを打倒したのだ。

限界を迎えていたとしてもおかしくない。

「ライダー!!」

隼人がライダーへと駆け寄る。

「あ、主殿…」

「大丈夫かライダー!?」

倒れたライダーを抱き起こしながら問いかける隼人。

「主殿の方こそなにか体に不調は無いのですか…?」

「いや、不調は無い。頭もスッキリしてるし問題は無いよ。」

「それなら良かった…」

ライダーは安堵の声を上げる、そんな2人の様子を見ていた美作が近づいてくる。

「二人とも、まだ終わってないわよ。キャスターを倒したんだから後は幹久さんをどうにかしないと、それに違和感も───」

そう言って先程幹久が向かった奥へと向かおうとする。

───その瞬間、矢が暗闇から美作へと向かい飛んできた。

「危ないっ!!!」

ライダーが飛び出し美作を突き飛ばす、飛んできた矢はライダーの脚に突き刺さる。

「っぐう……!」

「ライダー!一体何が!?」

サーヴァントの肉体を傷つけるなど並大抵の武器では不可能だ。可能なのは相当古い神秘を帯びた武器、あるいは宝具もしくは、同じサーヴァントによる攻撃。

「一体何が…」

「…全く、せめて一撃でと思ったが無理だったか」

暗闇の奥から声が聞こえてくる、姿は明かりがないため見えないがその声には聞き覚えがある。

「まさか、アーチャー!?なんで!?」

「色々あったのさ、強いて言えばマスターを守る為、だな」

声は暗闇の奥から聞こえ続けている。

「待って、貴方のマスター、フィリアはもう敗退したって言ってたわよ!なんで…まだ現界しているの!」

「何って、マスターが居るからさ。まぁフィリアではないが。」

「…幹久がマスターってことか、大方フィリアさんを人質に取られ仕方なく自身の身を差し出した。」

ライダーが矢を引き抜いた傷を治癒するため魔力を回しつつ神永が声を上げる。

「ほお、よくわかったな。まぁ冥土の土産として教えても問題は無いか」

そうしてアーチャーは暗闇から姿を見せ真実を語り出す

───

燃え盛る土御門亭にてキャスターと対峙し追い詰められたフィリアは令呪を使いアーチャーを呼び出そうとした。しかし張角の陣による阻害でパスが途切れかかっているためか令呪の効果が発揮されなかったのだ。

(───さて、どうするか。ここから逃げるにも隙がない。アーチャーは…来るならばあと二分以内には来るだろうな。)

フィリアが現況を打破する為に思考を回転させているとキャスターが何か話していた。

「何?…成程、確かにそれならワシらにとっては利になる。」

そして、キャスターが此方を向き直った瞬間。何処からか矢が跳びキャスターの肩を貫いた。

「ヌグッ!?」

「悪いマスター、少々手間取ってしまった。」

マスターの横にアーチャーが立ち守るようにボウガンを構える。キャスターはたたらを踏み後ろへ下がるが、アーチャーが来る可能性を考えないわけが無い。フィリアの足元から傀儡兵が飛び出しフィリアの足を捕らえる。

「なっ!?」

「フゥ…危ない危ない、もう来るとはな」

肩の傷を抑えながらも余裕を見せるキャスター

「おっと、動くでないぞアーチャー。ワシの傀儡兵は優秀なのでなワシのことを矢で貫く前にお主のマスターの頭を潰すぞ?」

「…ちっ、アーチャー。ボウガンを下げろ」

「……了解だ」

アーチャーはボウガンから手を離し両手を上げる。

その様子を見て満足気なキャスターは口を開いた。

「さて、アーチャーのマスターよ。再び聞くぞ、生き残るためにすることは決まっておるな?」

「わかった、令呪を持って───『待て』」

フィリアが令呪を使おうとした瞬間、何処かからか声が響く。

『アーチャーをそこで殺すのは惜しい、フィリアと言ったな?アーチャーの契約と残りの令呪を私に寄越せ、そうすれば貴様だけは生かしてやろう』

キャスターのマスターからの要求はシンプルなものだった。

「…わかった、本当に私の命だけは助けてくれるんだな?」

『無論だとも。令呪をもって命ずる、キャスター。アーチャーのマスターが契約を渡したのなら手出をするのを禁ずる。』

「ふむ、まぁ令呪が手に入るのなら使ってもよかろう」

令呪を持ってキャスターへ拘束を施す、ここまでされたのならば確実に命は助けてくれるのだろう。

「わかった、……済まないアーチャー」

「いや、お前さんは生き残ることが重要だ。……息子を大事にしてやれ」

そうしてアーチャーの契約はキャスターを介して土御門へと移ったのだ。その際に何らかの術で記憶を処理していたようだ。

───

「───と、こんな所かねえ」

アーチャーは話終えると新たな矢をボウガンに番え再び三人を狙う姿勢となった。だがその動きは何処かぎこちない。まるで自分の意思と肉体が乖離しているような…

「何をやっとるんじゃ、さっさと打ってしまえ」

奥から声が響く、この声は───

「嘘……キャスター…なんで生きて…」

「ワシの最終手段じゃよ、本来ならばこのワシが目覚めることは無かったはずなのじゃがのぅ」

マスターめが令呪を切らんからとブツブツ文句を呟くキャスター。アーチャーをよく見ると右手には黄色の義手が付けられていた。

「サーヴァントの意思を奪うのは難しくての、精々が肉体を操る位しか出来ん。だがそれで今のお前たちには十分」

アーチャーのボウガンが美作達に向けられる、ライダーは既にキャスターとの戦いで限界を迎え、脚にも矢傷を受けている。

「…クソッ」

「若造にしてはようやった、殺れアーチャー」

「…すまん」

そして、アーチャーのボウガンから矢が放たれ───

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