6. fatalcrack⑥
「——それで、話ってなんだい?」
童女はその問いに返答せず、おもむろに浮竹へと右手を伸ばした。
「……!」
大きく、鼓動が跳ねる。浮竹は慌てその手を遮り、声を絞り出した。
「待ってくれ…!」
「なんで?」
「それはッ…」
脈拍が速まり、落ち着いていた筈の呼吸が再び荒れ始める。ゴホゴホと咳込み、唇の端から血が垂れた。
「体わるい? どうして?」
「……肺の、病気なんだ」
「治らないの?」
「……………ああ…治らない」
浮竹は逡巡の後、そう答えた。まるで命を盾に取って懇願するような真似をした事に、罪悪感が押し寄せる。
「そうなんだー?」
童女は気にも留めてないという顔で頷くと、再び浮竹へと右手を伸ばす。浮竹は今度こそ抵抗をやめて、幼いその手を受け入れた。
「えいしょ〜」
「……?」
布団へと押し倒され、毛布を掛けられる浮竹。きょとんと童女を見上げれば、深い水底のような瞳が此方を見下ろしていた。
「『友達』…ではないか。『知り合い』がねー? 寝ないといけない時には寝なさいって言ってたのー。だから寝ないと駄目なんだよー?」
「ああ…」と掠れた声で答える浮竹に、童女が満足気に頷く。そしてハッとした顔で浮竹の耳元へと近付き、囁いた。
「——"ソレ"、貸してあげるから、私のこと誰にもナイショだよ?」
その言葉に浮竹は否が応でも確信せざるを得なかった。目の前の彼女が、そうであるのだと。
「…ああ、勿論だよ」
「ほんとにー?」
「本当にだ。約束しよう。何があっても違えないと」
童女は今度こそ、にっこりと微笑む。
「ありがとうございました! 浮竹隊長ー!」
そして、ぺこりと頭を下げると、嬉しそうにパタパタと部屋を出ていった。浮竹はその小さな背を痛ましげな表情で見送り、瞼を閉じる。
そして、生徒達の喧騒へと耳を傾けるのだった。
ガッ
ガッーーー……
『…答せよ!』
ザザッ
ザザッーー…
『こち…南方…外区第一区…南門前!』
ザザーーーー……