6. fatalcrack③

6. fatalcrack③




——ポツ。

——ポツリ、と雨が降る。


甲高い音を立てて浅打が吹き飛び、草地へと突き刺さる。


「……ッ!!」


片膝をついた海燕の首筋に蒼純の浅打が添えられた。

海燕は嘔吐くような荒い呼吸を繰り返し、震える左手で地を握り締める。

対して蒼純の持つ浅打は静止したまま、僅かな脈動すら伝えてこない。

真新しい刃が、降り出した雨に反射して鈍く光っていた。


浮竹が「流石だな…」と呟く。

蒼純は水滴を振り払うと鞘に収め、蹲る海燕に手を差し伸べる。


「海燕殿、済まない。少しやり過ぎた。手を貸そう」

「…ハァ…いや…ッ大丈夫だ……」


海燕は助けを拒み、自力で立ち上がる。そして、払い飛ばされた浅打のもとへ、痛む両足を叱咤し歩いた。


「…………昨日は…随分手加減されてたんだな。…………くそッ、手も足も出てねェじゃねえか俺は……!」


悔しさに顔を歪める海燕。浅打を拾い、付いた土を拭って鞘に収め、三人のもとへ戻る。


「…あれ、どうしましたか?」


浮竹の周りに生徒達が集まり、何やら話をしていたらしいのを見た海燕が尋ねた。


「ああ、雨が降ってきたからね。場所を移動しようと思う。一区の村長さんが近くで小屋を管理しているから、そこへ行こう…」


言葉が僅かにしりすぼみになった浮竹に、蒼純が心配そうに声を掛ける。


「浮竹隊長、もしや体調が優れないのでは?…今日はもう、」

「ありがとう蒼純君。だけど大丈夫だ! この位なら、まだまだ動けるからな! それより急ごう。みんな風邪を引いてしまう」

「…悪化したら、きちんと報告をお願いしますね?」


蒼純の圧に、浮竹はから笑いをしながら「勿論だ」と返す。


「念の為、応援を呼ぶよ」


そう言って、浮竹は首に携帯していた小さなボタンを押し込み、そのボタンに向かって幾つかの指示を出した。


「それじゃあ皆、着いて来てくれ」









畦道にできた水溜まりを、梨子はちゃぷちゃぷと踏み鳴らしながら歩いていた。


「楽しそうですね、梨子様」

「うん! 楽しいよー!」


今朝からずっと梨子の周りは綱彌代家に仕える一族の生徒達で固められ、同じ班になった海燕や蒼純、特別講師である浮竹すら寄せ付けないでいた。


(しっかし、過保護だなぁ。まあ、警戒するに越した事はねぇか。…よし、だったら俺は周囲の気配でも探っとくかな)


海燕は前方を歩く集団を横目に、生い茂る森林に霊圧知覚を広げた。


「みんな〜! こっちだ〜!」


遠くから浮竹が声を張り上げる。少し歩いた先に、流魂街の建築物にしては上等な造りをした小屋が一棟現れた。

浮竹は既に開いていた小屋の戸から体をずらす。そこには一人の女が立っていた。

暗い紫の髪がふわりと揺れる。

梨子はそれを興味津々に見上げた。


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