>>54 これで最後

>>54 これで最後


能力は過剰な覇気には耐えられないらしいので、自分がウタワールドにいることを知ったルフィが覇王色を発動して強制的に夢の中から脱出して解毒剤飲ませて解決


解毒剤の入手先は決まんないんで思いついたやつで

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「間もなく現実世界のウタは体力が尽きて……死にます」


「死ぬ!?ウタが?」


彼女の夢の世界で明かされる彼女の計画、覚悟。

能力者であるウタが眠れず"肉体が"死んでしまえばこの夢の世界から開放されるどころか永遠に幽閉されてしまう


そしてそれを止める手立ては未だ見つかってはいない

希望の綱はエレジア城の地下書物だけだった

麦わらの一味はそれを捜索するために動き出し、ルフィもまたウタを止めるべく動き始める


「……ルフィさん?立ち止まっていては見つかってしまいます。早くこっちに」


「……ここで話してもあいつには届かねェからな」


「麦わら屋?」


「"あっち"でウタと話つけてくる」


そう言い放つと彼はコビー達の目の前から突如消えてしまった



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「……もうすぐ争いが無い平和で自由な新時代がやってくる」

「……」

「……ルフィ。なんで戻って来たの?あっちにいれば幸せにしてあげたのに」

先ほどまで夢の世界に幽閉されていたはずのルフィ、彼は彼の内にある力で脱出を成功させていた


だがウタはそのことに対してあまり驚きを見せなかった。

まるで彼ならこんなことも出来てしまうと最初から不安視していたかのように……


「あの世界じゃおれは幸せになんてなれねェ」


「なにそれ?昔とは違って楽しい場所になったでしょ。あんただって誰かに言われなければ"夢の世界"だって気づけなかっただろうし」


「肉体があるこの世界では雨が降るけど"新時代"なら虹の空を創り出せる。病も飢えもない……その世界がどうして幸せじゃないの?」


「……そんな世界が幸せなわけがねェ」


「お前がそんな顔してまでつくろうとする世界が!幸せなわけねェだろ!!」





「……相変わらず口だけじゃ解決しないね」


「喧嘩で決着を付けるしかないね」

ルフィの訴えも届かず、ウタは暴走を続ける

眠りにつく彼の仲間を操り彼に差し向ければすぐに決着は着くだろうが、彼女はそれをしなかった


ルフィは彼女の眼前に現れ攻撃する素振りを見せるが、ウタは何もせず ただ棒立ち


「……ぐっ!」

ルフィは足を伸ばして振り上げたがそれは彼女にかすり傷を負わせることすらなく、肩の上を通り過ぎた


「当てる気も無いくせに」

彼女の中では最早ルフィは"新時代"にとって邪魔な存在。

再度夢の世界に送り込もうとはせずにネズキノコによって体力が尽きることを待っているのだった


「…お前は間違ってる!」

やり場のない怒りの拳が地面に伝わり足場のステージにヒビを入れる


「それはルフィの方だよ。なんで新時代を受け入れられなかったの?そんなに大海賊時代が良いの?私を否定してでも海賊王になりたいの?なんのために?」

「"新時代"のためだ」

「……くっ!ルフィィィ!!!!」

激昴するウタは時間を稼ぐということを忘れ足元に置いたバスケットからナイフを取りだす

昂るウタの怒りはルフィに向けられ、切っ先をルフィの喉元に狙いをつけた彼女は走り出す


彼はその場から動かずに足を振り上げナイフの刃の部分を砕く

思わず口が空いてしまった彼女にルフィは追い打ちを与える

それは彼女の空いた口に左手で隠し持っていたキノコを突っ込むというものであった


「あぐっ!……んむっ……ゴックン」


「……ルフィ!何を食べさせたの?」


「"ネムルダケ"。味は"不味い"けどネズキノコの毒を消すキノコだ。ネズキノコの近くに生えるから見つけるのには苦労しなかった」


「毒が…消える?なんでそんなもの食べさせたのよ!」

怒りに震える彼女はドアを叩くかのようにルフィの胸元に握りこぶしをぶつける


「お前と話すためだ。落ち着いた本当のお前とおれは話をしたい」


「……このっ!」

脱力で膝を着いても彼女は彼の腹筋に拳を当てる。






駄々をこねる子供はようやく止まりルフィに拳を付けたまま動かなくなる

彼女の足元は雨と涙でびしょ濡れだった


「……落ち着いたか?」


「……ルフィ。なんで私の夢を壊したの?」


「ウタ。お前の計画、ライブ前に誰かに話したのか 誰とも相談しなかったのか」


「話してないよ。だってみんな私の新時代を待ち望んでいたから話さなくたって受け入れて……」


「そいつらが待ち望んでいた新時代はお前が作ろうとした新時代とは違うんじゃないのか」


「……そんなわけない!みんな海賊に怯えていた!だから争いが無い私の世界を──────」


「ウタ。お前はその世界で幸せになれるのか?」


「なれるよ!だってあそこは私が描いた世界なんだから!」


「シャンクスがいないのに?」


「……グズッ…」

「シャンクスと何があったかなんて知らねェ。けどお前の"本当の夢"が今も変わってないんだったらシャンクスの船に戻ってもう一度赤髪海賊団の音楽家に戻ればいいだろ」


「……シャンクスは港にいる。お前に会いにここまで来たんだ」


「……そんなはずない。あいつは…」

少女は否定しようとしたが先程までには無い、胸にざわつく懐かしさが彼の存在を証明してしまう


「……だめだよ。ファンのみんなを見捨てられない」


「ファンがお前のことを思うやつのことを言うなら、お前が幸せそうに歌を届けるようになることが一番なんじゃないのか」


「……決めろよ。家に帰るのか、それともここに留まるのか」


──────あの事件の日。私には選択肢なんてものは存在しなかった。けれど今は…今だけは自分で選択できる


私は……


「……ありがとうルフィ」


「あんたの"新時代"楽しみにしてるよ」

シャンクスと一緒にもう一度世界を回ってたくさんの曲を作って世界中に届けるよ

そうすることで世界を幸せにしてみせる


「にしし!あぁ待ってろ!」





「そうだ帽子!返すの忘れるところだった」


「その帽子誰よりも似合ってるよ」

「ししし!またな ウタ」


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この事件が解決したあとも、彼女が海賊になってもウタの歌は市民、海賊、海兵。世界中の誰にでも愛され、その歌声は海風に乗って運ばれた



サニー号の帆を押す風。その風の中にもウタの歌声は乗っていただろう


ルフィはその歌声で"ライブでは感じることが無かった"懐かしさを初めて得た


彼女が心の底から歌うことを楽しんでいる時でしか発せられない…届けられない彼女の歌声を──────



END

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