2話生い立ち
初心者私は転生者だ。
転生した世界は剣と魔法の世界で、魔王と勇者のいる世界だった。
私が生まれたのは、とある深い森の中に住む伝統を重んじる一族だった。
集落の人たちは、弓や剣を巧みに使いながら猟をしたり、木の実でクッキーを焼いたりして生活していた。最初は(原始時代かよ)と思ったけれど、前世にはなかった技術…魔法によって現代と変わらない利便性を備えていたし、魔物の素材なんかはもう何でもありだろという性能だった。夜にめちゃくちゃ光る角とか、乾くことなく永遠に濡れている羽根とか、一体どんな進化を遂げたらこうなるんだ。
私たちの住む森は特に魔物の数が多いらしく、私たちが森を管理することで一帯の安全は守られているのだと、集落1番のお爺さんは繰り返し繰り返し私に話した。
当時の私はファンタジーの世界に胸を弾ませて、自身にチート能力があるか色々試したりしていた。
笑わないで欲しい。チートって萎える時もあるけど自分には欲しいものでしょ。決して俺TUEEEE展開がしたかったとかそんなことはなく…。
閑話休題。
結果として、私には魔法の才能があった。私は集落で誰より幼かったのに才能はピカイチで、周りは私を持て囃した。当時は身内びいきもあるかな、と思ったけど、現在な私を鑑みれば私は非凡な才能を持っていたと断言できる。
あの頃、私は私が特別なんだと信じていた。
特別な集落の生まれで、魔法の腕がすごくて、おまけに結構可愛い。もしかしたら、魔法の腕をかわれて魔法学校にスカウトされるかもしれない。これから長く生きて、魔女として世界の重要人物になるかもしない。この世界がゲームなら、主人公にはなれなくてもキャラクターのひとりにはなれるかもしれない。眠りにつく度に、そんなことを考えていた。まぁ、夢物語に過ぎなかったけれど。
転機は12歳の時。
私の故郷は、一夜にして滅んだ。
突然訪れた魔王の手によって。
何故なのかは分からない。幹部となった今なら知ることもできるだろうけど、どうせ大した意味は無いに違いない。なにせ、気まぐれなお方だから。
魔王の放った炎は、集落を瞬く間に火の海に変えた。私の魔法なんて彼の魔法の前には塵と同じだ。
奇跡を待った。勇者が助けにこないだろうか。騎士が助けに来ないだろうか。もしくは、私の力が覚醒したりしないだろうか。
___終ぞ、奇跡は起きなかった。
どれだけ人が死んでも、世界にとっては大した損失では無い。私は特別な存在なんかではなかった。あの経験から学んだのはそれだけだ。
私以外みんな死んだけど、私は魔法の才能を見抜かれて、魔王軍に攫われることになった。それで必死に鍛えて、幹部の席ここ
にいる。
死にたくない。
前世で1度死んだ経験と、集落で苦しみ抜いて死んだ人々を見て、私は死が恐ろしくなった。
私は死なないために、何でもする。
簡単に殺されないくらい強くなろう。
何人だって殺そう。
どんな命令だって聞こう。
逆らうなんて以ての外。
死ぬことに比べれば、大抵の事はマシだから。
「でもまさか勇者パーティに潜入任務とか、そんなことある?」
絶対上手くいかないよぁ。
どうせ嘘はバレるし、殺せって言われたって私が殺せたらもうとっくの昔に死んでるよ。
「せっかく転生したのに、私ってばかませなのかぁ…」
魔王軍入ってからも魔王軍実はアットホーム説とか同僚は魔王子様で下克上企てる説とか考えてたんだけど、ダメかぁ。
潜入しても死ぬ、任務放棄しても死ぬ。
「殺せるよう頑張るしかないか…」
自分で言って笑う。
勇者殺すって、すっかり悪役だ。