2人目のBW
海軍を振り切り、無事アラバスタを発った麦わらの一味。しかし船内には少々重い空気が流れていた。
「…あのな、何だよその気のねェ返事は…。」
「「「「「さみしー……(泣)」」」」」
その理由は、仲間の1人が船を降りたから。わずかながらも同じ船に乗り苦楽を共にした『ビビ』はアラバスタに残った。その理由は明快、彼女はアラバスタの王女だからだ。もちろん旅を続けたい気持ちもあったようだが、苦悩の末に彼女自身が選んだ道、一味の全員がその意志を受け取り別れた。
「めそめそすんな!そんなに別れたくなきゃ力づくで連れてくりゃよかったんだ。」
「うわあ野蛮人」「最低」「マリモ」「三刀流」「待てルフィ三刀流は悪口じゃ…」
…別れたのだが、それとこれとは話が別、悲しいものは悲しい。
「……」
悲しむ仲間たちを見て、マリアンヌはふと物思いにふける。
「(ビビさんが船に乗ったのはウィスキーピークからなんだっけ。そのあとリトルガーデンで私を乗せて次はドラム王国…)」
自分がこの船に乗る前後の航路を思い出す。
「(乗っていた期間はそこまで長くないのに、みんなここまで彼女を大切に思ってるのね。もちろん私もだけど…)」
マリアンヌもアラバスタに着いた頃には麦わらの一味としてビビに協力、クロコダイルの計画阻止のため動いたが、元はクロコダイル側の人間…バロックワークスの一員だったことが原因か、ビビに対して最後まで素直な仲間意識を向けることは出来なかったようだ。
「(ビビさんが私を恨むような人じゃないのはわかってるけど…)」
恐らく今のマリアンヌの心情を知ったら一味の全員が軽いお叱りをすることだろう。マリアンヌもそれがわかっているので表には出さない。
「やっと島を出たみたいね…」
ガチャ、と船室のドアを開けながら言葉を発したのはー
「組織の仇討ちか⁉︎相手になるぞ!」「何であんたがここにいんのよ‼︎」
「敵襲ーーー‼︎敵襲ーーーっ‼︎」「あ…!なんだお前じゃねえか!生きてたのか。」
「オールサンデー?」
ーMs.オールサンデーと呼ばれていた、かつてバロックワークスの副社長を務めていたニコ・ロビンであった。
「モンキー・D・ルフィ…あなた私に何をしたか…忘れてはいないわよね?」
「何言ってんだお前?おれはなんもしてねえぞ?」
「いいえ…耐えがたい仕打ちを受けました…責任、取ってよね。」
「仕打…⁉︎おいルフィてめェ!キレーなお姉さんに何しやがったんだ⁉︎」
「いや何もしてねえってば!デタラメ言うなお前!」
あくまで何も知らないというルフィに、ニコ・ロビンは淡々と説明をし始める。
「あれは、あなたがクロコダイルを倒したあと……」
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「…ということで、死を望む私を生かした…それがあなたの罪。」
「そういえばそんなことあったな。それで、おれにどうしろって言うんだ?」
「今の私には行く宛ても帰る場所も何もないの。だから…私を仲間に入れて。」
「「「「はあ!!??」」」」
ルフィとマリアンヌ以外が、あまりに唐突な提案に思わず声が出る。彼女が要求したのはまさかの一味への加入。それを受けた船長は…
「何だそうか、そらしょうがねえな、いいぞ。」
「「「ルフィ!!??」」」
…なんとも簡単に要求を飲んだのだった。
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ー突然加わった新たな仲間。そんな仲間に対して…
「8歳で『考古学者』…そして賞金首になったわ。」
「考古学者?」
ウソップは取り調べ…もとい面接を行なっていた。
「そういう家系なの。それから20年、色んな悪党に付き従うことで身を守った…おかげで裏で動くのは得意よ?お役に立てるはず。」
「ほほう自信満々だな…何が得意だ?」
「暗殺❤️」
「ルフィ‼︎取り調べの結果危険すぎる女だと判明‼︎」
…その頃のルフィはチョッパーと一緒に彼女の能力で遊んでいた。いや、遊ばれていたのでウソップの話は全く聞いていなかったが。
その後も一味が寛容なのかニコ・ロビンの立ち回りがうまいのか、警戒心の高いゾロを除いたほぼ全員と打ち解けたようだ。
「…いいわね、いつもこんなに賑やか?」
「…ああこんなもんだ。」
「そう」
「(何企んでやがる…‼︎)」
笑顔で返答するロビンに、ゾロも彼女が果たしてどんな考えでこの船に乗り込んだのか皆目見当が付かないようだ。
こうして一通り挨拶?を終えた彼女だが、最後の1人…かつての同胞にいよいよ声をかけようとしていた。
「お久しぶりね、Ms.ゴールデンウィーク……今はマリアンヌと呼んだほうがいいかしら?」
「うん、今の私は麦わらの一味だから。」
「そうだったわね。……あなた、私が一味に加わることなんとも思わないの?」
「だって私が入ったときと全く同じ状況だもの。」
「…それもそうね。」
「それに、あなたが優しい人だってことはよく知ってるから。」
そういう彼女は、かつて自分がバロックワークスに入るきっかけとなった出会いを思い出していた。
マリアンヌがバロックワークスの一員になったのは、1人で絶望の淵にいたときに、他ならぬニコ・ロビンその人に勧誘されたからだった。
「…そんな昔のこと、よく覚えているわね。」
「恩人のことを忘れるほど薄情じゃないわ。」
「あら、恩人なんてやめてちょうだい。私はあなたの能力を狙って近づいたにすぎないのよ。」
「例えそれが事実でも、私は助けてもらったと思ってる。…今更だけど感謝してる、ありがとう。」
「…あなた随分と変わったわね。組織にいた頃よりも感情豊かになったんじゃないかしら?」
「…否定はできない。」
「ほら、そうやって素直に答えることなかったじゃない。…やっぱりここの人たちのおかげかしら?」
そう言って未だにぎゃあぎゃあ騒いでいる船員たちを眺めるロビン。マリアンヌはまだそこまで長くこの船に乗っているわけではないが、過去を知る彼女からすればどうやらかなりの変化が見られたらしい。
「この船の人たちはみんな遠慮がなさそうだもの、あなたが明るくなるのも頷けるわ。」
「…きっといつかあなたもこうなるわ。」
「あら、それは楽しみね。」
お互いに軽口を言い合う2人。そこまで親しい仲というわけではないようだが、この様子なら特に問題はなさそうである。
「そうだ。私はこれからマリアンヌと呼ぶけれど、あなたは私のことなんて呼んでくれるのかしら?」
「…ロビンさん、とか?」
「できれば呼び捨てがいいのだけど。他の皆はそうしてるでしょう?私だけさん付けは寂しいわ。」
「ル、船長さんは名前呼びじゃない、から…」
「あらそうだったの。彼だけそう呼んでいるのは何か理由でもあるのかしら?」
「…ま、まだ加入して日が浅いからそう呼んでるだけ。」
「私もしばらくは名前じゃなくて役職で呼ぼうと考えてるんだけど、あなたと被ってしまうとややこしいと思うのよ。特に船長さんはね。」
「それ、は確かに…」
「だから申し訳ないんだけど、船長さんも名前で呼ぶようにしてくれないかしら?」
「え」
ロビンの果たして論理が通っているのかいないのかわからない要求、少なくとも第三者がいれば全くもって筋が通っていないように見えるだろう。だが、マリアンヌにとっては……
「む、無理‼︎そ、それにいきなり呼び方を変えたら船長さんも困惑すると思う、から…」
「確かに最初は疑問に感じるかもしれないけど、あなたが名前で呼んでくれたらきっと彼、喜んでくれるわ。」
「喜んで…ほ、本当?」
「ええ、ずっと船長さんって呼んでいたのなら尚更よ。彼、すごく仲間を大切に思ってるもの。」
「仲間………で、でもやっぱり急には無理‼︎」
そう言うと、マリアンヌは帽子を両手で深々と被りながら船室に駆けて行ってしまった。
「あら行っちゃったわ。名前で呼ぶことがそんなに恥ずかしいのね。」
普段の言動からカ大人びた雰囲気を感じる彼女だが、年齢を考えればまだまだ幼いところもあるのは当然だろう。
「本当に変わったわね、マリアンヌ。まさかあなたが恋をしているなんて夢にも思わなかったわ。」
「ふふっ、少しお節介かもしれないけれど応援するわよ。……たまにからかっちゃうこともあると思うけど…許してね♪」
これを機に、マリアンヌはかつての同僚で、現在は同じ船に乗る仲間にさまざまな形で幾度となく辱めを受けることになるーーー