28日目①
鳥飼天竜人荷物をこっそり纏め、出発の準備は整った。
朝食にオムレツとサラダを与える。完食。
ここのところ、D.Dの私に対する目線が変化した気がする。何が変わったのかは具体的な説明がつかない。初日より険悪なムードは増えたが、多少飼い主に対する理解が深まったのだろうか。
あとはここから不信感を払拭したいが、それは新居に慣れてからの話である。
環境の変化によるストレスを見逃さないようにしなくてはならない。
昼食にパスタを与える。完食。
飲料に混入させた睡眠薬により、D.Dが入眠。起きた状態では落ち着いた護送が困難だと予想される為、眠った状態にしておく。
MC01746は深夜、父上が寝静まった頃合いを図って持ち出す事にする。
正直なところ、MC01746を側に置く事で起こるD.Dの精神状態の悪化はかなりの不安材料だ。
しかし、MC01746無しではD.Dは生きられない。D.Dは家族が共に居ないと死んでしまうのだ。
そして、家族が共に居ないと死んでしまうD.Dは、家族を殺す事が出来る。
父上の日記は悪魔のような残虐さを記していた。その矛先は私にも向いている事だろう。
D.Dに殺される事は悪くは無いと思いつつ、ペットを置いて死ぬ飼い主など無責任極まりないのだから、そんな事はあってはならないと考え直す。
D.Dの長い睫毛を眺めながら、私は別宅への道のりをひたすら頭へと叩き込んだ。