27日目①
鳥飼天竜人警報が鳴り響いたのは早朝、D.Dの朝食の準備をしている時だった。
嗚呼、遂に恐れていた事態が起こってしまったのか。
震える身体とは裏腹に、私は至って冷静だった。
急いで電々虫の映像を確認する。
そこには案の定、怪しげな器具を持って立ち竦む父上がいた。
D.Dはどうやら無事のようで、テーブルの上で胡座をかきながら座っている。
数人の奴隷がテープのような物を手にしながら、檻の上部にわらわらと集りだした。
なるほど。空気孔を完全に塞ぎ、毒ガスを流し込んで殺す気なのだろう。
奴隷達はD.Dの気迫に恐怖したのか、先程から全く手が動いていない。
私はやや失笑しながら作りたてのサンドウィッチをのせた皿を持ち、飼育スペースへと走る。
スペースに着き、ただ一言、何をしているのかと聞いた。
その場にいる誰も答えなかった。
私はもう一度、何をするつもりなのかと聞いた。
父上は私の顔を見ずに、こいつを殺処分するのだと答えた。
水を打ったように静かな部屋に、父上は蒼白したまま突っ立っている。
私は静かに深呼吸をし、そして、父の横っ面を思い切り殴った。
息を呑む音が聞こえる。
私は奴隷達に出て行け、とだけ命じた。
彼らは我先にと蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。
鼻血を出した父上は、化け物でも見るかのような視線で私を睨んだ。しかし、丸腰では私に敵わない事を知っているのだ。
何の抵抗も行わず、そのまま去って行く。
私は父を殴った手でサンドウィッチを差し出した。
D.Dは口の端を吊り上げた。いかれてやがる。低い声が私の頭に響いた。