25日目
鳥飼天竜人父上が怒鳴り散らす声で目が覚めた。
何事かと思い急いで廊下に出ると、父上がこちらに向かってくるのが見える。
私が用を尋ねようとした、その時。胸元に鈍い衝撃が走った。
父上に胸ぐらを思い切り掴まれたのだ。
お前だろう。と恐ろしく低い声で囁かれ、私は久方ぶりに感じる恐怖に身を震わせた。
見つかったのだ。
父上の怒りは収まらないようだった。お前がMC01746に手を出したのだろう、あの酷い傷は何なのだ、なんて事をしてくれたんだ。
私は平静を装いながら淡々と答えた。
MC01746を友人達に披露しようと思った。
その際にうっかり落として傷を付けてしまったのだと。
我ながら酷い言い訳だ。わざわざ鍵のスペアまで作り、センサーを無効化してまで潜入したことの説明がつかない。
父上は私を睨みつけ、そのまま何処かへと向かった。
私は慌てて身支度を整え、D.Dの檻へと向かう。
D.Dの意識は先日より遥かに明瞭であった。
私を見てクソ天竜人と罵る姿に、安堵で涙が溢れそうになる。
今日は話が出来そうだ。
私は全ての出来事を一切包み隠さず話した。
父上を欺くためMC01746を手元から奪ってしまった事。
遂に発見され、窮地に立たされている事。
そして、父上はD.Dを殺そうとしている事。
安全の為、数日前に買った別荘へと避難したい事。
MC01746は私が必ず取り返して見せると言う事。
D.Dは黙って私の話を聞いていた。
額に苦悶の汗が滲んでいる。しばらく考えたあと、D.Dは好きにしろと呟いた。
好きにしたあとはお前を殺してやる。
何故かそう言われたような気がした。
その晩はD.Dに一口サイズのサンドウィッチを与えた。完食。
部屋には戻らず、檻の外、硬いコンクリートの床に寝転がる。
何故かは分からない。そうしなくては不安に押し潰されてしまいそうだった。