24日目②
鳥飼天竜人父上は仮眠をすると言い寝室へと赴いた。
突然の睡魔に襲われたのだろう。
当然だ、紅茶の中に睡眠薬を混ぜ込んだのだから。
実の父に薬を盛ることには抵抗があったが、もしD.Dが暴れでもしたら気付かれてしまうリスクがある。
私はD.Dの命を守りたいのだ。どうか許してほしい。
私が飼育スペースへと足を運ぶと、D.Dはぼんやりと壁を眺めていた。
まずはMC01746を無断で持ち出した事を詫びなければと思い、そっと檻の扉を開ける。
ここに至るまでかなりの量の薬を投与している。鎮静する事を優先し過ぎたのだ。
精神状態に悪影響を及ぼしている可能性が高い。
心苦しいが、記録として音声を残しておこうと思う。
〈トーンダイアルの記録〉
「D.D?どうしたんだえ?まだ身体の調子が悪いかえ?」
「…しぃ…」
「…え?」
「ろしー、ロシーがどこにもいないんだえ、きっとさらわれたんだえ、殺される、また火、火が、あ、あ、ころされる、ころされる!」
「大丈夫だえ、ここにいるえ、とにかく深呼吸できるかえ!?」
「ハッ…ハア……ハア…」
「ここが分かるかえ?」
「ロシー、ァ、…….違う…ロシナンテ!!裏切りやがって!お前まで何故おれを憎む、おれと同じ目にあったお前が、何故おれを愛さない!?何故、ロシナンテ、ロシナンテ!!!!」
「駄目だ…錯乱してるえ…ほらこっちを見るえ!大丈夫だから落ち着くんだえ!」
「どうしてだよロシー….父上…う、う、う…」
この後も対話を試みるが、激しい過呼吸状態となる。ビニール袋を口元に当て、呼吸させる。
呼吸状態は落ち着いたが、疲れ果てたのかそのまま眠ってしまった。
錯乱状態のD.Dの口調。あれは天竜人独特の訛りでは無いか?父上の日記にはMC01746の身元は秘匿すると書かれていた。
もしや、D.Dは天竜人だった?
何らかの事情で下界に降りざるを得なくなった?
詳細は何も分からないが、今はD.Dの精神安定が最優先だ。
薬の分量を全て見直し、少しでも落ち着いて生活できるように努めたい。