20秋天🥈×🥇

わ

ん

く

っ

し

ょ

ん

↓

同期で飲みたいと言ったのは確かに私だ。

暇そうなふぃえくんを誘ったら、想像以上に酔いが回りやすかった。現役の頃から体が弱いみたいだったけど、それは私も一緒だし、少しは飲めるかな…と思ってた。

「天皇賞(秋)勝ちたかった〜…ひっく！

今からでも僕にくれない？」

「どうやってあげるのよ…」

「今から降着するようなスキャンダル発覚、とか？」

「そんなのないわよ」

「ちょっとくらいいいじゃーん…ひっく！」

これは相当悪酔いしてるな…このままではまずいので、とりあえずおぼつかない足元の彼を抱えて居酒屋を出、とにかく休める場所を探した。しかし夜の街に簡単に休める場所などなく、周りで休めそうな感じの場所は中々見つからない。「💤…もう食べられないよ〜…」まじかここで寝るのか。少し街の奥へ行った先で、不思議な様相を醸している「黄金旅程」とかかれた看板の建物を見つけた。前に一度、暴君の娘から耳にしたことがある、祖父がいわくつきのホテルを経営していると。この名前が、彼女のいういわくつきのホテルということを示している。

いわくつきが何なのか怖いが、この酔っぱらった男を抱える重さに耐えるよりましだと決心して、ホテルに入った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あのー、すいません。急なんですけど部屋空いてますか？」

「いらっしゃいませ、どちらの部屋で？」

あれ、意外に丁寧。暴君の父っていうからもっと乱暴なのかと…おっと、このパネルということはもしや、あれか。いわくつきってそういうことかー、と一息ついて落ち着く。帰ろうとしたが、ここまで来た手前引き返せない。多分この背中で気持ち良さそうにぐっすりと眠ってやがるこいつはどうせ朝まで起きないし、何か起こってもこいつならまあいいだろう。

「じゃあ、ここの部屋で」

「何時間で？」

「4時間でお願いします」

「了解。その兄ちゃん楽しませてやんなよ。」

いや、楽しませるどころか起きるか分かんないし…でも有り得たら面白いわ、間違いなく。駄目だ、私も酔ってきたわ。とりあえず、部屋に入って背中にいるそいつを大きいベッドに乗せ、自分は風呂に向かった。

「はぁー…これからどうしようかしら。」

溜息をつきながら風呂を楽しんでいると、

「ふぃえぇ！？」という音が外から聞こえた。

起きてしまった。とにかく急いで酒の匂いと、居酒屋臭に包まれた服を着る。

「いつの間に起きてたの？」

「いや、今起きたけどさ…これどういう状況？」

察しの悪いやつめ。察しろ。私の鋭い目線にちくりと刺されたからか、急に勘付いたような様子で「とりあえず、お風呂入ってくるね…」と言った。風呂から出てきた彼は、それ以前と変わらない服に身を纏っていた。かくいう私もそうだけども。

「うー、頭痛い。僕どのくらい飲んだの？」

「ジョッキ3杯くらいだったかな…かなり悪酔いしてたわよ」

「覚えてないんだけど…とにかく今日は寝よ。頭痛いし。おやすみー。」

いやちょっと、ここまでして寝るの？相変わらず恐ろしい奴だわ…察しろ。

「えいっ」

「いった！何するのさ！ぐっすり寝ようとしてたのに！」

「ここまで来て寝るのもさー、なんかあれじゃない？せっかくなんだし…」

「えぇっ…本当にいいの？」

いいわよ。あなたなら。そう思って、元々酔いに弱いから居酒屋に呼んだってのもあるし、だからここに入っても引き返さずに決心した。それもこれも、あなただから、あなたがいいから選んだの。

「あなたのこと、私は好きよ。」

ぽかーんとした表情の彼の唇を奪い、耳元で囁く。

「今日は寝かさないわよ…」

「ふぃえっ、冗談だよね…」

「冗談を言うような奴じゃないわよ」

「勘弁して〜…」

私と彼の口の間の銀の橋は、これから続く夜のように長かった。

〜朝〜

オーナーは、今日も今日とて一晩お楽しみであったカップルを見送っていた。その中で、昨日も一際目立った瞳の美しい美少女と、病弱そうなイケメン(その時酔っ払ってはいたが)に話しかけた。

「嬢ちゃん、楽しめたかい？」

「ええ、おかげで足がガクガクだわ。なんか少し頭も痛いし。どうやって帰ろうかしら。」

「僕も頭痛いよ〜…体も筋肉痛みたいになってるし…」

「運ちゃん呼んでやるよ、ちょっと待ってろ。」

彼は美少女の横の男を連れ出した。

「よくあんな嬢ちゃんと付き合えたな。」

「ただの飲み友です、急に告白されたけど。

これからは、彼女として連れてきますから！

また待っていてくださいね。」

「あんがとな、兄ちゃん。楽しみに待ってるぜ。おっと、運ちゃん来たみてーだ。彼女と仲良くやれよ、またな！」

彼が見送った新たなカップルは、オーナーの懐を手厚くしてくれる大切な存在となる、なんて願望を抱きながら、また清掃を始めた。