2010年宝土冢記念2着×1着
「よ、親父」
「お久しぶりです」
一見無理やり不良と不良に連れられてきた優等生のように見える二人が現れた。不良のような出立ちの男、ナカヤマフェスタはともかく、見るからに清楚で優等生然とした女、ブエナビスタはラブホテルに入ったことがあるようには思えないが、こう見えて彼らはステイゴールドの経営するラブホテルの常連であった。
「また来たな、いつも通りの部屋でいいか?」
「おう。よろしく」
いつもの部屋とは大きなモニターのある部屋だ。専らAVかハメ撮りを流すのに使われるそれが、この二人が利用するときに限って真っ当に映画鑑賞に用いられてる。
「いつも通り2時間パックでいいのか? 最初から泊まりにしておいたらどうなんだ?」
軽く揶揄うようにいうと、フェスタは露骨に機嫌が悪くなった。
「うるっせ。今日こそは寝ねーわ」
「毎回お前はそう言ってらあ」
「ふふふ。ごめんね、毎回私の見たい映画に付き合ってもらっちゃって」
「別に。お前にも、宝塚付き合ってもらってるし」
しかし、それでもなおブエナへの対応にはどこか柔らかさがある。ベタ惚れだなァ、とステゴは内心高笑いしたくなった。が、せっかくの常連客をみすみす逃すことはするまい。
「やべえ……また寝ちまったよ……」
「おう、だから宿泊代分働けよクソガキ」
「分かってっわバーカ」
案の定フェスタは爆睡し、そのまま朝を迎えた。その事実に内心焦りながらもフェスタは至って紳士的にブエナを職場まで送り届け、蜻蛉返りでホテルに戻ってきた。律儀な男だ。だからステゴは容赦なくこき使ってやる。
「いい加減そろそろ進展したい、マジで」
とろとろと洗濯物を乾燥機に投げ込むフェスタの後ろ姿の、首筋に赤い印が残っている。
「お前、馬鹿だよなァ」
「ハァッ!?」
何故毎回フェスタが寝てしまうのか。
誰がフェスタが寝てしまった後延長申請をしているのか。
何故ラブホで映画を見ることを嫌がらないのか。
ステゴはフェスタとブエナが滞在していた部屋から回収したものを見る。睡眠薬の薬包紙、使用済みのアナルビーズとディルド。ディルドは最初は本当に細かったのが、段々と太くなっている。
『男の人ってハジメテは苦しいだけって聞いて。でも私はちゃんと最初からフェスタくんに気持ちよくなってもらいたいんです。』
そして、次回来店時にはとうとうペニスバンドの貸し出し申請がされた。
『楽しみだなぁ。たくさん気持ちよくなっているフェスタくん、絶対可愛いです!』
とんでもねぇ女に捕まっちまったなあと思いつつ、そのとんでもねえ女に息子が心底惚れているのも事実である。
「ま、次回には進展するだろ」
「……ありがとな、親父」
バカ息子どもの中では比較的可愛げがあるが、とびっきりヤバい女に惚れてしまったとびっきりのバカ息子の頭をステゴは乱暴に撫でた。