2 獣王キマイラ

2 獣王キマイラ


あらすじ:リリウムが悪魔祓いの一環で訪れたとある村。目的の悪魔を祓うことに成功したものの、村ではまだまだ魔物に関する悩みが絶えないらしい。

幸い次の悪魔の報告はまだ上がってないのでリリウムのシスター達は村を助けるために魔物討伐をすることになったのだが……




 ---数年前---

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 ステラ……カスピテルの悲鳴が辺りに響き渡る。そこには獣王に蹂躙される彼女の姿があった。

「嫌゛っ!や゛め゛っ゛!あ゛あ゛っ!」

 戦場に突如として現れた獣王はカスピテル達が相対していた悪魔を瞬く間に葬り去り、そしてその場にいたエクソシスター達にも牙をむいた。

 次々とシスターが倒れる中、当時は新米だったカスピテルは果敢にも獣王へと立ち向かい、仲間たちが逃げるための足止めを担おうとした。

「あぐッ!あがッ!がふッ!」

 カスピテルが獣王に放った渾身の一撃は一切通用せず、獣王が前脚を一振りするだけで彼女の身体は面白いくらいに地面を跳ねまわった。

「ぐふッ!がはッ!うぶぅッ!」

 生まれて初めて口から血を吐いた。一撃を受ける度にどこかの骨が折れる音がした。仲間を守るために武器を手に取ったのに、自分の命に迫った危険に心が怯えきってしまった。

「だ゛れ゛が゛ぁ゛!゛!゛!゛だ゛れ゛が゛だ゛ず゛げ゛で゛ぇ゛!゛!゛!゛」

 獣王に踏みしめられる中、カスピテルは必死に救けを求めて声を上げる。だがそれに答える者はいない。彼女の望み通りに逃げおおせたか、物言わぬ屍になり果てたかのどちらかだった。

(嫌……死にたくない)

 心の底からそう願った時、不意に獣王はカスピテルから足を離した。

「ぇ……?」

 獣王は三つの顔でカスピテルを一瞥すると、大きな翼を広げそこから飛び去った。


「ねぇ!君!大丈夫!」

「んん……」

「お姉さま!まだ生きてる子が!」


 最終的に、足止めを担ったシスターたちの甲斐もあり、絶望的状況の中で多くのものが命を拾った。だが、足止めを担ったシスターはステラを除いて……

 瀕死の重傷を負ったステラだったが、奇跡的に跡が残るような傷には至っていなかった。全快の状態で復帰した彼女は、後にとあるシスターと姉妹の契りを結び、多くの人を救う救世主の一人となる……


「獣王キマイラ……」

 近辺を通る旅人を襲う危険な魔物の討伐を請け負ったステラ。だが、現場に到着した彼女が目にしたのは討伐対象の魔物の死骸と、満月に向かって勝利の咆哮をあげる獣王キマイラの姿だった。

「まさかここで相対することになるなんて……」

 獣王はステラにとって忘れられない敗北の記憶を植えつけた存在。今まで相対して無事に済んだ者は極めて少なく、万が一遭遇した場合は即座に撤退・避難するよう厳命されている。

 だがステラの頭の中に「撤退」の文字は存在していなかった。

(あの村は悪魔の被害からまだ癒えてません。あの方たちが嘆き悲しむ姿はもう見たくない……)

 ステラは意を決してカスピテルへと変身する。

(あの頃の私とは違う……それにリリウムの皆がいます……倒すことはできなくても追い払うくらいなら……!)

 救援要請の信号弾を空に打ち上げた後、カスピテルは槍を構え戦闘態勢に入った。


 目にもとまらぬ速さで戦場を駆けるカスピテル。彼女は土の星の守護神の祝福を授かった使者であり、神の速さを持つとも称される。その力を活かした高速戦闘によって数多くの悪魔を屠ってきた彼女は、今やキマイラに敗北した時とは比にならないほどの実力をつけていた。

(まずは速さで攪乱して隙を作ります……!)

 その足を一切緩ませることなく全速力で動き回るカスピテル。対するキマイラはその場から動かず、カスピテルが己の攻撃圏に入ってくるのを待ち構えていた。

(今です!)

 キマイラの二頭が右側をむいた瞬間、カスピテルは仕掛けた。

「はああああっ!」

 キマイラの左後方、二頭の死角から槍を構え突撃するカスピテル。その穂先が届かんとした瞬間、キマイラは不意に動きを見せた。

「ぐぶっ!?」

 聖槍の穂先はむなしく空を突き、代わりにキマイラの禍々しく捻じれた黒い角が深々とカスピテルの腹部に突き刺さる。キマイラがそのまま頭を振りぬくと、カスピテルの身体は軽々と宙を舞い、そのまま固い地面が彼女の全身を打ち付けた。

「げほっ!げほっ!げほっ!……うぷっ……」

 口から吐き出したものがびちゃびちゃと音を立て白い聖衣を汚していく。カスピテルは自身の腹部に手を当て、そこに穴が開いていないかを本能で探る。

(聖衣がなかったら今頃私は……死……)

 聖衣によって貫通を免れたものの、それがなければどうなっていたか……腹部に走り、今も痛みと熱をもって訴えかける衝撃は如実にそれを語っていた。

「早く体勢を……っ!?」

 腹部を片手で抑えながらも立ち上がったカスピテルの前には、前脚を振り上げるキマイラの姿。致命の一撃が地を穿ち、カスピテルはかろうじてそれから逃れる。

「はぁ……はぁ……っ!」

 即座に距離をとり、槍を構えるカスピテル。だがその穂先はグラグラと揺れ、キマイラへの照準が定まらない。

(私……なんで震えて……)

 キマイラが一跳びでカスピテルへと迫る。太陽を背にしたキマイラの影がカスピテルを覆った瞬間、彼女の中で何かが壊れる音がした。

「あ……ああ……ああああああああ!!!」

 カスピテルは悲鳴を上げ、獣王に背を向けて走り出した。獣王はその背を逃すまいと追いかけ始める。

「嫌あぁぁああ!来ないで!許して!」

 半狂乱で叫びながら逃げ回るカスピテル。さながら猛獣に襲われたウサギの様なその姿に、エクソシスターとしての誇りや使命は一切見えてこない。

(私……なんで逃げて……ダメ!戦わないと!)

 両手で槍を握りしめ、振り返る。すぐ目の前には獣王。

「ああ、あ…あ……ひぃぃいいい!」

 獣王の爪が鼻先をかすめ、目の前の地面を深々と抉る。カスピテルはすぐに踵を返し、逃げようとした。

「あ゛あ゛っ!」

 獣王の蛇の尾がカスピテルを捕らえ、ぐるりと巻き付く。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ひっ!」

 二又に分かれた蛇の舌が、カスピテルの顔を舐め上げる。獣王の6つの目に見降ろされたその瞬間、彼女は悟った。


(わ、私なんかに……私なんかに勝てるわけがないんだ……あの日負けた私なんかに……この獣王は倒せない……!)


 数年前のあの日、獣王に敗北したその時から“格付け”は決まっていた。

 あれからどれだけ強くなっても、対策を練っても、獣王キマイラには意味をなさない。

 一度敗北したら最後……

 心が…身体が…遺伝子が…魂が……その者の全てが獣王キマイラに屈服するのだ。



「ぅ…ぅぅ……」

 蛇の締め上げる力が徐々に徐々に増していく。ほとんど呼吸ができなくなっていたカスピテルの口端からは、ブクブクと泡が見え始めていた。


ゴキ……ボギ……ペキャ……


 体のどこかの骨が折れる度、薄れる意識が若干戻る。一思いに気を失えればどれだけ楽か。身を苛む苦痛にカスピテルは延々とあぶられ続ける。


ドサッ!


 蛇の拘束が解かれ、カスピテルはその場に崩れ落ちた。抵抗する力も逃げる力も彼女には残されていない。そんな中で一つの想いだけが彼女の中にあった。


(死にたくない……)


 そんな時、どうするべきかをステラは知っていた。


 それはエリスと姉妹の契りを結んでまだ日が浅い頃……

 悪魔に憑依された男によって絶対支配がされた村。そこへ派遣されたエリスとステラは、女性たちが生き延びるために進んで悪魔に抱かれていたのを知った。

 女性たちの行いが理解できないというステラに対し、エリスはこう諭したのだ。

「たぶんだけど……生きたいって気持ちがとても強いとね、そうなっちゃう人だっているんだよ……」

 少しだけ雲がかかったようなエリスの顔と、その言葉はやけに強くステラの心に残っていて……



(生きたい……)


 カスピテルはスカートを捲り、両の脚を広げてその内側を獣王へ供した。

「はぁ、はぁ、どうか……命だけは……なんでも……捧げますから……」

 供された中身は、下着やタイツを隔ててなおもわかってしまうほどに、びしょびしょに濡れそぼり、淫靡な雌の匂いを漂わせている。既に獣王への貢ぎ物として出来上がってしまっているほどに、彼女のカラダは屈服していた。

 獣王の蛇が、その匂いの発生源を吟味し始めた。

「あっ……あっ…あんっ……あんっ!」

 チロチロとした蛇の舌が触れる度、カスピテルは小さな声を漏らし、身体をピクリと震わせる。

「んんぅ~~~っ!」

 ひときわ大きく身を震わせ達するカスピテル。彼女のカラダが受け入れる準備を整えたことを察した獣王。その両後ろ脚の間から巨大な陰茎が姿を現す。

「っ!!!」

(そ、そんな……なんて大きな……それに……2本もあるなんて……)

 蛇のように2本生えた陰茎。それらが放つ強烈な雄の獣臭にカスピテルは脳が茹だるような感覚を覚える。

(すごい臭い……よく見たら棘まで……あんなの挿入ったら……し、死んじゃう……)

「はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ 」

 冷静(?)な思考とは裏腹に、カスピテルの息は乱れ、顔は真っ赤に染まっていた。動かなかったはずのカラダがおもむろに獣王の陰茎へと吸い寄せられ、片方に跨り、もう片方を両腕で抱きかかえた。

「あんむ……っ!」

 抱きかかえた陰茎の先端を頬張り、腰を前後に揺らして拙い奉仕に移るカスピテル。カラダを揺らす度、聖衣が棘に擦られボロボロになっていく。


 だがそんなことはもうどうでもよかった。


「はぁ はぁ はぁ はぁ 獣王様ぁ……💛」

 獣王の精がカスピテルに降り注ぐ。身を焼くかのような熱い精に包まれて尚、カスピテルは奉仕を続ける。

 敗者の掟に従い、一匹の雌として獣王にすべてを捧げる。それが彼女が生き残る唯一の道だった。


「どうか……おねがいします……💛」

 まるでバナナボートを抱えるかの様に獣王の陰茎にぎゅっと抱き着き、腰を突き上げる体勢をとるカスピテル。粘着質な涎を滴らせた秘部にもう片方の陰茎があてがわれる。

「ぁ あ…ぁあ゛ッッッ!おお゛お゛ッ゛💛💛💛」

 両脚付け根の骨が外れ、カスピテルの腹部が臍辺りまでボコンと盛り上がる。獣王にとっては先端も先端。だが彼女にとっては許容の範囲を優に超えている。

(ナカに…獣王様の…お…おちん…ちんが……ぁ💛)

「んあ゛っ💛ああ゛あ゛💛💛💛」

(ナカで…ふ、ふくらんで……と、とげが……ッ💛💛💛)

「ひ、ひぎ……ふぎゅ……💛…うう゛ッッッ!!!」

(そんな!…う、うごかれたら……こわれッ💛💛💛)


「あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛あ゛ッ💛」


(どんどん💛はやく💛なかで💛ビクビクして💛ビクビクしてぇ💛💛💛)


「あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛あ゛゛~゛~゛~゛~゛💛💛💛💛💛💛💛💛💛💛」


 瞬く間に膨れ上がるカスピテルの腹部。それでも許容できない分の精が挿入口の隙間から勢いよく噴き出し、明け方の空に白い弧を描いた。


「お゛あ゛っ💛」


 獣王が陰茎を引き抜くと、カスピテルの開いた穴から白の塊がごぽっと吐き出された。

「ぁ……ぅ……」

 カスピテルにはまだ微かに息が残っていた。だが獣王は止めを刺すようなことはせず、朝焼けの空をどこかへ飛び去って行った。


 冷たい風が周囲を撫でる中、白い聖衣は持ち主の命を護るという役割を果たし、静かに消滅した。


「……テラ……ス…………ステラ!」

「ぁ……エ…リ…ス…?」

「ステラぁ!」

 目を覚ました妹をエリスはぎゅっと抱きしめる。

「よかった……目を開けてくれて……ぐす……」

「わ、わたしは……」

「ごめんね……ぐす……助けに来れなくて……私、ステラのお姉さん失格だ……ぐす……」

「エリス……」

 信号弾を目撃した直後、エリスはすぐに救援へ向かおうとした。だが、不測の事態により足止めを受けてしまい、ステラを助けに行けなかったのだ。

「わたし……生き延びたんですね……」

「うん……ステラは、ちゃんと生きてるよ」

「そっか……」

「でも、酷い怪我だから早くお医者様に見てもらわないと……私じゃちょっと不安かもしれないけど我慢してくれる?」

 エリスはステラをおぶり、村の方へと歩き出した。


 村までの道なき道を、エリスはステラをおぶって歩く。ステラの容態が悪くなってもすぐ気づけるように、エリスは出来る限り話しかけ続けた。

「置いてきちゃった槍は後でまた拾いに行くね」

「お願いします……」

「しばらくお休みしないとね」

「ごめんなさい……」

「ステラは悪くない!」

 他愛のない会話。話のレパートリーが世間話に移って久しい。村が見えてきたところで、ステラからエリスに話しかける。

「エリス……私は……負けちゃいました……」

「そんなことはないよ……ステラは勝ったんだよ。魔物からあの村を守ったの」

「エリス……」

 ステラはエリスにぎゅっと体を寄せ……

「私……もっと強くなります……」

「そうだね……一緒に強くなろうね……!」

「強くなって……強くなって……強くなって……」









(また獣王様に……💛)


 そう心で付け加えたステラの顔を、おぶったエリスは見ていない……

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