2回目

2回目


恨みを持つモブに薬を盛られて記憶喪失となったドフラミンゴ。

純粋な記憶だけではなく言語や日常生活もままならない状況だったが、1年で7割は元に戻った。

しかし周囲の人間を識別しにくくなり、あからさまに奇抜な格好のモブしかわからないためドフラミンゴはモブを傍に置くことに。

それによりモブは薬を盛りやすくなったのだが、なんとこの薬。原料は死体であり海軍の目を掻い潜って世界中から集められ、主に北の海で出回っているのである。


ドフラミンゴが記憶喪失になったらしい、という情報だけを得て潜入してきたロシナンテは、このモブよりもドフラミンゴから信用されてコラソンの地位を得る。

危険な薬は依存性もあり、ロシナンテによってモブが裏切り者だとバレて処分されてから、ドフラミンゴは自力で見つけ出して一気に飲んでしまった。


一気に薬を飲んで倒れたドフラミンゴは、モブ2により薬を無理矢理吐かされる。

その騒動に駆け付けたピーカはドフラミンゴに寄り添うが、悲しいことに実はこのファミリーにはトレーボルしか味方がいない。

そんな状況までは把握していないものの偶然その場に現れたロシナンテは、ドフラミンゴに肩を貸して部屋まで連れて行くこととした。


部屋まで連れて行き、先ほど何故か筆談では伝わらなかったためドフラミンゴの手のひらに指を滑らせたロシナンテだったが、ドフラミンゴは手を払いのけて後退り、ベッドから転げ落ちる。

実は誰にも気付かれぬように振る舞ってたが、ドフラミンゴは薬の後遺症で視覚・味覚・触覚がじわじわと失われつつある状況であり、薬を一気に飲んでしまったことでロシナンテのことがわからず、幼児退行した挙句「弟はすでに死んだ」と思い込んでいるのだった。

そんな兄を目の当たりにしてショックを受けたロシナンテは思わず声をかけるが、ドフラミンゴは手当たり次第に物を投げて暴れるため、抑え付けて落ち着かせようとする。

「弟には手を出すな!」そんな言葉を吐いた直後、弟はもういないのだと絶望し始めるドフラミンゴにロシナンテが声をかけられずにいると、部屋に誰かがやってくる。


現れたのは唯一の味方であるトレーボル。

彼のことは無意識に信用していたロシナンテはドフラミンゴの現状・ファミリーの違和感などを洗いざらい口にし、言い終えてから喋ってしまったことに気が付く。

しかしそれも何かわけがあるのだろう、ドフィにさえ危害がないのならと触れずに話を聞くトレーボル。

しかしドフラミンゴはトレーボルが誰なのかわからず、大人が増えたことで恐怖から過呼吸を起こす。

そんな兄を見たロシナンテは「ドフィを解放してくれ!」と頼むが、そこに誰かが訪れる。


威嚇程度にしかならない武器を手に現れたのはヴェルゴだった。

ヴェルゴだけは認識できたドフラミンゴは、僅かな違和感を抱きつつも這うようにしてヴェルゴの声がする方へと近付き、足元にうずくまる。

「いい加減子守りはうんざりだ」そんな酷く冷たい言葉が響いた直後、ドフラミンゴはヴェルゴに顔面を蹴られて這いつくばる。

それでもなおヴェルゴを庇おうとするドフラミンゴをロシナンテは守るように抱きしめ、トレーボルは2人の前に立つ。

あっさりとトレーボルに敗れたヴェルゴだったが、情報を聞き出そうとしたトレーボルには目もくれず、呆然としているドフラミンゴに向かって「……おれが相棒で、悪かったな」と呪いの言葉を吐き、自害する。

咄嗟に2人の目に入らないようにしたトレーボルだったが、2人は知っているのだ。

銃声も血の匂いも、死体が転がる音も。

トラウマを刺激された2人はトレーボルによってどうにか正気を取り戻せたが、ドフラミンゴはロシナンテのことを忘れ、ヴェルゴのことは裏切られたこと自体を忘れてしまう。


トレーボルとロシナンテは薬について調べようとしたがディアマンテに怪しまれ、トレーボルはドフィを1人で残せないと判断してロシナンテだけでも逃がすことに。

ディアマンテは記憶をなくしたドフラミンゴに「突然現れた男に唆されてトレーボルがファミリーを裏切った」と囁く。

それを聞いたドフラミンゴは2人を追いかけるが、もう逃げていてほしいという思いからあまり本気では捜索しないでいた。

しかしファミリーに戻ろうとするトレーボルを引き留めるロシナンテという2人はいつまでも逃げることができず、結局ドフラミンゴに見つかってしまう。


制裁のための攻撃はあっさりと躱され、ドフラミンゴはロシナンテを朧気に思い出したが「おれは海兵だ」というロシナンテの発言でやはり裏切り者なのだと判断する。

ロシナンテの身体能力の高さとドフラミンゴがほとんど視覚のない状態であることもあり、攻撃は当たらずにいるが引き付けることもできず、動きの不自然さからロシナンテはドフラミンゴが目が見えていないことに気付き、自身のナギナギとトレーボルのベタベタで拘束を試みた。

ドフラミンゴを拘束し、まずは話し合いをと思った直後、ロシナンテは拘束したはずのドフラミンゴに突き飛ばされる。


銃声が響き、目の前の体が傾いて地面に叩き付けられるように倒れる。

どう見ても即死だった。

裏切り者を始末しに来たドフラミンゴは、裏切り者である弟を庇って息を引き取った。

理不尽な現実に呆然とするロシナンテとトレーボルの前に現れたのは、ロシナンテですら対峙するのを躊躇するほどの武装を施したディアマンテ。

彼はドフラミンゴを1年後に薬の材料として使い、ロシナンテをドフラミンゴの代わりとすることを計画していた。

そんなことは知らないトレーボルとロシナンテは、それでもドフラミンゴの死体をこの場に置いていくという発想はなかった。

トレーボルは命を賭してディアマンテを足止めし、ロシナンテはドフラミンゴの遺体を抱えて海軍支部へと向かった。


海軍とはいえ支部。全ての人が海賊の死体を抱えてきた本部中佐のことを快く出迎えてくれるわけではない。

しかし「もうこれ以上この体をめちゃくちゃにするのはやめてやってくれ……」という願いは聞き入れられ、ドフラミンゴは鳥葬されることとなった。


鳥によって天へと還っていくドフラミンゴ。

それをぼんやりと眺めるロシナンテの心には後悔が押し寄せ、ついには心が折れてしまった。

もう2度と海兵としては生きていけない。まるで屍のような状態で生き、1年後。

自ら命を絶った。


奇しくもそれは本来ドフラミンゴが殺され、薬とされるまでと同期間であった。

まるで兄が生きるべきだった時を生き終え、ようやく自由になれたかのようにロシナンテは安らかな顔をしていた。

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