1と病みベルとショタベル

1と病みベルとショタベル


・アルベルが猫

・病みニャンベルとショタニャンベルがいる

・1とニャンベルが普通に会話している(愛ゆえ)

・素敵概念ありがとう!



「ミィミィ」


 新人が甘えたように鳴く声が耳に障る。おおかた腹が減って1に助けを求めているんだろうが、1は「ばいと」とやらでしばらくは帰ってこない。ならば部屋の隅に置かれた水飲みで喉でも潤して気を紛らわせばいいのに、新人はそうやっていればすぐに1が駆けつけてくれると思い込んでいるのか、扉をカリカリしながらなおも鳴くのをやめない。そんなことをしたらドアが爪で傷つくから1に迷惑がかかるのに。


『うるさい!やめろ!』

「ミ゜……ミャ…ニィニィ」


 叱責すれば驚いて一瞬泣き止むが、学習能力がないのかまたすぐに扉をカリカリする。おれがあいつくらいの大きさの時は鳴き喚いても誰も助けてくれなかったし、腹が減れば自分で食糧を調達する他なかった。当然「ニィニィ」鳴いて「おー、アルベルどうした?お腹空いた?」なんて優しく語りかけて抱っこしてくれる人なんていなかったのに。


『やめろと言っているだろ!』

「ニ、ニィッ!」


 こいつは気にしなくても無視されたこっちはイライラが募って仕方ない。ついさっきまで窓辺で毛布に包まって昼寝していたくせに……。1が朝に「行ってきまーす」と部屋を出ていった時から待ち続けているおれの身にもなってみろ。

 棚の上から降り立って小さな体を前足で小突く。ガキ相手に本気を出すほど大人げなくないが、そいつは大袈裟に吹き飛ぶと壁で頭を打ってさらに激しく鳴いた。

 はァ…どこまでもカンに障るやつだ。


バタンッ

「ただいま〜!アルベル!ショタベル!」

「ミャ!ニィニィ!」

『おい、まだ話は終わってない』


 1の帰宅に気づいて走り出そうとしたそいつの首根っこに噛み付く。ここを持つと本能的に大人しくなるが「ニィニィ」と甘えた声で鳴くのはそのままで、おれはこのまま噛みちぎってやろうかと思った衝動を抑えるのに苦労した。


「ただいまアルベ…え?アルベル何してんの?!ショタベル大丈夫??」

「ニ、ミィ…」

「……」


 おれ達を見つけると1は慌てておれから新人を引き離し、両手でそいつを撫でる。


「アルベル!いじめちゃダメって前も言っただろ」

「ニャオーン!」(『いじめてない』)


 いじめだなんて心外だ。おれはただ新人を躾けていただけなのに、なんで聞き分けの悪いガキは抱っこされて代わりにおれが怒られなきゃならない。しかもこいつなんかに構っていたせいで1に「お帰り」と抱きつくこともできなかったのに…これじゃ踏んだり蹴ったりだ。


「アルベル、聞いてる?」

「フ、ミャーオ!」(『大人しく聞いてやってるだろ』)

「…おれは悪くないって顔してるね」

「ミィニャ」(『当然だ』)


 1は大きくため息を吐くと、手に持っていた小さな毛玉を懐に入れ、そっぽを向いていたおれの顔を覗き込む。そこは拾われたばかりの時のおれの特等席だったのに、と余計拗ねたくなるこっちの身にもなれ。


「もう!反省しないならせっかく買ってきたトビウオ、おれが全部食べちゃうからな」

「フニャ!ミャオ、ナァーオ」(『トビウオだと!反省した、反省したから』)

「分かったならヨシ!」


 ……確かに意思疎通もままならないガキ相手にやり過ぎたところはあるかもしれない。おれが1の足を抱きしめて反省のポーズを取ると1もおれの頭を撫でてくれた。もっと撫でろと頭を押しつければ首までわしゃわしゃしてくれたけど、おれが満足しきるまでに離れていく1の手。


「よし、今ご飯用意するからね!」

「ミィミィ♪」


 多少ガッカリしたが、メシのためなら仕方ないか。おれは聞き分けの良い大人だから今日はこれくらいで許してやる。




追記:食後に1の膝を占領しようとして先に抱っこされてたショタベルを押し潰し説教Part2が始まる


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