179氏より 両親が事故に遭ってしまった凛ちゃんの六歳の誕生日のss-1
────あの日から、なにもかも変わってしまった。
二年前の、おれの誕生日。それがすべてのはじまりだった。
いつも通り、おれは兄ちゃんがサッカーしてるのを見てた。向かうところ敵なし。どんなに相手のチームのメンバーに囲まれようとも、兄ちゃんはそんなのするりと抜けて。
いつも通り、ゴールを決めた。
やっぱり、兄ちゃんはかっこいい。
試合が終わって。日はもう暮れそうになっていて。いつも通り、おれは兄ちゃんに買ってもらったアイスを食べながら。
兄ちゃんと二人で家に帰っていた。
その日は少しおなかがいつもよりすいていて。
『アイス、もういっこたべたい』だなんて、兄ちゃんにねだったっけ。
でも、兄ちゃんは、『今日は凛の誕生日だろ。食べすぎるとマグロ食べれなくなるぞ』なんて言って、おれの頭を優しく撫でた。
そうだった。
今日はおれの誕生日。六歳の。家に帰ったら母さんと父さんが皿いっぱいのマグロと、誕生日ケーキとプレゼントを用意してまってる。
きっと、その筈……だった。