1/7の夢旅人

1/7の夢旅人


突然のスポットライト。

その照らされた中にいる子を彼女は見間違う筈がなかった。


「パン君…」


🧶の驚きを尻目に、彼は一心不乱にアコースティックギターを鳴らす。


何も語らず、いつの間に練習していたのかも分からない。

「格好をつけさせて」と星空の下でくしゃりとわらう彼とも、レースで何がなんでも先頭を獲ろうとした彼とも違う。眉間に現れる真剣さに🧶の目は釘付けになった。



彼が歌いだした。


https://youtu.be/ADksMq3XJzE?si=PFsNyk9U9074tyvS


──泣きたくなるような時も 

君に会いに行きたくなっても

…強がるだけ 

今は何も…何も分からない──


一瞬だけ🧶と🍞の視線が重なった。


「ここだけは君だけに向けてだよ。」

彼の目は確かにそう語っていた。


──世界中を僕らの涙で埋め尽くして

やりきれないこんな思いが今日の雨を降らせても

新しいこの朝がいつものように始まる

そんな風にそんな風に僕は生きたいんだ

生きていきたいんだ──


そうでなくちゃ。と🧶は胸を抑えながら呟いた。

彼は世界を駆け回る。そして何にも挑戦し、たまに失敗し、でも皆を笑い続けさせてくれている。

それが彼の生きざま。そんな懐の深さが彼の一番良いところだったし、🧶が彼のなかでもっとも好きなところの一つだ。


海のように大きく深い優しい歌声に会場全体が包まれていく。

「仮装でもなんでもないじゃん…(笑)」🧶も顔を綻ばせざるを得なかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~


(イトちゃん…鉄砲玉みたいに単純でたまにバカをしちゃう僕で本当にごめん。やりたい事がたくさんあるのに、お付き合いとかとてもシャイで本当にごめん。でも、僕は君が大好きだ。)


🍞は更にピッグへ力を込めた。

マイクで音を拾ってはいるものの、このギターだけでこの会場に音を本当に届けきれてるかは分からない。

そもそもこの曲を知らない人には「?」ってなっちゃうだろう。

だから僕は考えた。大切な人に思いを伝える。そして全校を沸かせる。矛盾したこの目標だけど、無い頭なりに考え抜いてようやく分かった。


(イトちゃん、わかったよ僕のやり方。幸せを届けるには僕はこうする。)


「一人きりではできないことも──」

🍞の歌声と明らかに違うメロディーが重なった。全校が目を丸くした。もう一つスポットライトが点いていた。歌声の主は二人いた。

🍀と👑だった。そして👮の歌声が更に重なる。

「──タフな笑顔の仲間となら乗り切れる」

「たどり着いたらそこがスタート──」

🌗と🎾が加わってくれる。

またしても主旋律と異なるメロディー。でもとても気持ちの良い響きだ。

「──ゴールを決める余裕なんて今はない」

🥱と🖼️が更に続いた

これらは元々二つの曲だった。歌詞は同じだけどメロディーは全く違う。でも重ねてみると奇跡のようなハーモニーを奏でてくれる。まるで大昔から歌い継がれてきたゴスペルのように。


「誰かを愛することが──」

🐮や⛵にバビット、20組のみんなが歌う。

思えば僕らも似たようなものだ。みんな驚くほどにでこぼこだ。それぞれが思いを抱いてレースに挑み、毎日の学校生活を楽しみ、時には耳が痛いお叱りも受け、そして明日を夢見て眠る。


「──何かを信じ続けることが。」

お願いしておいた🎹君や🗽さん、🪄君たちも美しく歌い上げてくれる。


「何より今──この身体を支えてくれるんだ」

📞に♨️、そして🐦️ちゃんに🐜君達がBメロを歌い上げる。

彼らが一番頑張ってくれた。どんなに忙しくても、皆に楽しい時間を届けようとしてくれた。


そう、ここにみんなが集まったのは偶然でも、この大イベントをやりきったのは、間違いなく僕らの気持ち(メロディー)が重なったから。僕はみんなにそれを一杯感じてもらいたい。


さあ昇華しよう。


「みんなも一緒にィーー!」


一番と同じメロディー。ちょっと違う歌詞。

一フレーズずつ歌い、コールアンドレスポンス。

最初は恥ずかしくても良い。でも次はちょっと大きくしてみよう。繰り返す度に声は大きくなっていく。


──疲れきった足元から 全て凍り尽くしても

いつの日にかきっとまた南風が歌い出す──


これから冬も来る。そしてレースで実が出ない子も、不慮のケガで大切なものを諦める子も、そして去っていく子も出てくる。

それでも今日ここでの思い出が、きっと力になってくれると僕は信じる。いずれ来るさよならの日に向けて、僕たちは一つでも多くキラリとしたものを胸に蓄えておきたい。


──そんな風にそんな風に僕は生きたいんだ。

生きていきたいんだ。──


歌い終わる。

みんなの声が一つになって、そして今年の文化祭が終わる。


「大好きな人、お世話になった人に──そして、今日ここで、文化祭を、世界に誇るレースを、皆に勇気と挑戦を届けてくれた皆に伝えたい!!」


本当にありがとォーーーーーー!


Report Page