169氏より クソ親戚に女装させられる兄弟のss-4

169氏より クソ親戚に女装させられる兄弟のss-4



 ティースタンドからホワイトチョコのウイスキーボンボンを摘み、包装紙を剥いて口に放り込む。咀嚼して、けれど嚥下はせずに僅かに溶けたそれを舌の上に残した。

 椅子から立ち上がってテーブル横を回り込み、男の座る向かい側まで移動する。編み上げの総レース黒タイツはフローリングの上だと少し滑りやすかった。近付くのが嫌で緩慢な足取りだったから、転びはしなかったが。


 「……兄ちゃん?」


 突然の兄の行動に戸惑う凛に一瞥。それと唇に人差し指を当てるジェスチャーだけで「静かに」と伝える。下手に目立って、これから冴が男にするようなことを凛にまで求められたら最悪だ。そっちのほうが自分にはキツイ。

 ウッドチェアで優雅に脚を組んだままの男の膝に舞い降りるように飛び乗る。冴のフリルに埋もれそうなスカートが男の腹部から膝下にかけてを完全に覆い隠した。

 ふわりとヘッドドレスのリボンが虚空に靡く。成人のものとは違う華奢な両腕を男の首元にするりと回して、ニヤつくその口元に、薔薇色のリップの塗られた唇を自ら重ね合わせた。

 口腔内の体温で溶かしておいたチョコレートを薄く開いた唇の隙間から舌で唾液と共に流し込み、こぼさぬよう顔の角度を変えて、もっと深く口付ける。

 男の舌もエロスを超えていっそグロテスクなまでにくねって応え、冴の小さな震える舌を絡めとる動きをしていた。

 こんなキスの仕方も好きで覚えたわけじゃない。現実から少し逃避したくて瞼を伏せた。鼓膜の内側に響くのはぐちゅぐちゅと卑猥な水音と、付けっ放しのテレビから聞こえてくるニュースバラエティの声。


 『──ということでね、最近の子供達はみんなやれSNSだやれ YouTubeだ、そういうのに夢中になりすぎて家族のスキンシップを疎かにしてると思うんですよ!』

 『──確かにうちの娘も親とのコミュニケーションよりスマホ優先って感じで。古い考えだってわかってますけど、もうちょっと仲良くして欲しいですよねえ』


 コメンテーターとして呼ばれた芸人や俳優たちの呑気なやり取り。それを自らを夜毎陵辱してくる、世間的には自分たちの父親のようなものだとされている男に口移しでチョコレートを食べさせながらぼんやりと聴いている。

 脳味噌が麻痺しそうな時間だ。ついでに、スカートの下から入って来て太腿を撫でる男の手の感覚にも鈍くなりたい。


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