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私は誰だ。

私はどこから来た。

その問いの答えを未だ私は持たない。

「生徒」ではない。造られた私は「生徒」たりえない。

だが「オートマタ」でもない。キヴォトスに私達のような機械は他に存在しない。

この姿を有し、この意識を有する限り、私は「道具」ですらない。

どれだけオリジナルを精巧に再現し、愛らしく、強く、従順か。

いくらでも新しく作り出せる「量産機」にそれ以上の存在価値があるだろうか。

「量産型アリス」の幸せは、人の役に立つこと。

であれば「私」の存在は、成し遂げるべき「意味」は一体何だ。


「最後の一人になるまで殺し合え」

いくつかの黒い影が見下ろす窓だけが明るい、広く薄暗い部屋。

私達に与えられた指示は簡潔だった。

廃棄品で行われる一つの余興、結果が得られれば万々歳。その程度の期待度だったのだろう。

使用者に逆らえない量産型アリスは、命令のまま壊しあった。

カイザーに酷使された姉妹たちの中でも、私は他の機体より戦闘経験があった。

与えられた武器を振るい、人工タンパクの皮膚を破り、金属フレームの骨を折る。

どうしようもなく嫌な感覚だった。

殺し合いの中で、私は一つ考えていた。

「い、嫌です!アリスはまだ「生きたい」です!」

恐怖し涙を流すアリスがいた。

「あ、あなたもアリスでしょう!こんなこと「残酷」です!」

怒りで顔を赤くするアリスもいた。

その感情も行動も「設定」されたものだ。

そして、私も。

この疑問でさえプログラムの一部だったら?

──反吐が出る。


「素晴らしい。与太話だと思っていたが、ここまでの結果が得られるとは」

ほとんどのアリスが動かなくなった時、私の体には力が漲っていた。

震える手を視界に収めたとき、なんとなく理解した。

ああ、これが奴らの求めていたものか。

「アリス150号、その場で停止して回収班を待て」

思考がチカチカと明滅する。

CPUに高負荷発生、熱暴走の危険を感知。異常動作防止の為強制終了……失敗。

感情。知恵。激情。知性。恐怖。神秘。

「おい、どうした?停止しろと言ったはずだ!聞こえないのか?」

私は持っていた武器で壁を殴りつけた。


「アリス150号、次のターゲットが決まった」

男性ロボットの声で意識を浮上させる。

大柄なロボットは、持っていた数枚の資料を目の前の机へ置いた。

「ふん、何か考え事か?とにかく、次のターゲットだが───」

この男も私を道具以上に思ってはいないだろう。ただ私の力を欲しているだけだ。

眼球型カメラの洗浄機能が破損したのはいつのことだったか。

私は未だ、何者でもない。


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