1/4黒ニーソ褐色児童液
「お久しぶりです、先生。治療薬ができて以来ですね。急に呼び止めたのにお食事に付き合ってくださってありがとうございます。……先生は今何をされているのですか?」
“生塩さんは今もセミナー?”
「っ……はい、そうですよ。……行方不明と聞いていたのに、街中で偶然見かけたものでつい声をかけてしまったんです。先生は今何をされているのですか?」
“……ガァ、ァ。自動車!……児童がね、毎朝散歩するたびに私の前を通り過ぎるんだけど、褐色の肌の児童がいて黒いニーソックスを履いているんだけど”
「ふふっ、先生はお変わりありませんね。先生は今まで何をされていたのですか?復興支援?各学園の仲介?依存者の精神ケア?」
“……ウゥ。……それが似合ってないんだよ。褐色肌と黒ニーソが。私は別にロリコンやオタクじゃないけど。私はさぁ、生塩さんは恋人とかいるの?”
「……」
“私は別に生塩さんのこと好きじゃないんだけど”
「……居ませんよ。先生は何をされていたのですか?」
“私別に生塩さんのこと好きじゃないけど。……ッアア”
「あ、すみません着信です。少々、席を外しますね……はい、はい、見つけました。確かに本人で……」
“ああ、太陽が大きくってさ、落っこちそうだよ。……いや、別に落っこちそうではないな”
「……はい、では送迎の用意をお願いします。……すみません先生。それで、どこで何をされていたのですか?」
“私ニート!……エシュロンって知ってる?通話の内容を盗聴されているんだよ。だからスマホ持たないんだ”
「はい、覚えていますよ。でもそれはキヴォトスには……」
“嘘ばっかりだクロノス。……梅田君が言うんだ。道端に黒ニーソ褐色児童が落ちていたら、私と、梅田君と、梅田君の友達と、梅田君の友達の4人で4分割するなら4分割するって。……肌と黒ニーソが分断しちゃって、それじゃあもう黒ニーソ褐色児童じゃないじゃないか。わかっていないんだよ、梅田君と、梅田君の友達と、梅田君の友達は”
「えっと、つまりどういうことでしょう?そもそも梅田君とは?」
“4分の1黒ニーソ褐色児童は、もう黒ニーソ褐色児童じゃないって、そんな机上の空論はいいだろって梅田君は言うけど、道端に黒ニーソ褐色児童が落ちている仮定の段階でもうこれはバカ話じゃないか。梅田君は外での幼馴染で冗談のわかる気のいいやつなんだけど”
「そう、なんですね。こちらには来ていないのですか?」
“道端に黒ニーソ褐色児童が落ちている仮定の段階でもうこれはバカ話じゃないか。私をバカにしているんだげこ”
“私をバカにしているんだ”
“私をバカにしているんだ”
“梅田君は私のことを奇人かなにかだと思っているんだ。私は別にロリコンでもオタクでもないんだけど”
「……」
“今日お金を貯金の10000000分の1も持ってきていないんだけど”
「ふふっ、構いませんよ。私が出しますから。……砂糖事変の前の先生が懐かしいですね。2分の1猫が死んでいるんだと熱弁していらして、シュレディンガーの猫でしたよね」
“シュディンガー!!!”
“シュディンガーの猫なんだけど”
「すみません……」
“別に謝らなくていい外道”
“梅田君は外での幼馴染で冗談のわかる気のいいやつなんだけど”
「そうなんですね。こちらには来ていないのですか?」
“道端に黒ニーソ褐色児童が落ちている仮定の段階でもうこれはバカ話じゃないか”
“私をバカにしているんだべぼ”
“シロップにすればいいんだ”
“梅田君は外での幼馴染で冗談のわかる気のいいやつなんだけど”
“私はオタクじゃないけど。梅田君がもしなんでも好きな夢が叶うなら何になりたいって聞くから、私はたくさんの人を救える救世主になりたいって言ったけど”
「救世主」
“黒ニーソ褐色仁王像”
“黒ニーソ褐色児童をクラフトチェンバーに入れて溶かして大火傷。……そうすれば4分割しても褐色成分も黒ニーソ成分も均等になるから”
“4分の1黒ニーソ褐色児童液”
“梅田君料理がうめーんだ。いや食べるつもりはないけど”
「……」
“生塩さんは3分の1私をバカにする人”
「先生」
“生塩さん”
“このファミレスのどこかに残り3分の2の私をバカにする子がいるんだよね?わかってるんだけど”
「えっと、どういうことですか?」
“どうせ旱濑さんや墨嵜さんと企んで私に色仕掛けしてからかっているんでしょう?わかってるよ”
「してませんよ!」
“さっきから向こうばかり見てクスクスほくそ笑んで、あっちに3分の2いるんだろ”
「それは先生がそちらばかり見るからつられて……」
“バカにバカにしてるんだ”
“バカにバカにばっかにしてるんだ”
「バカにバカになんてしてませんよ」
“どうせ旱濑さんや墨嵜さんと企んで私に色仕掛けしてからかっているんでしょう?わかってるんだけど”
「第一、旱濑さんや墨嵜さんって誰の……」
“あっ!”
“1分の1”
“明日に持ち越す記憶が一つも欠けない。……ノアは全然変わらないね”
「先生……。変わってしまいましたね……」
“……”
「……」
元ネタ:死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々【阿部共実】