14番目
「ウォオオオ!! スーパーゴールだ斬鉄!!」
「やべぇ!!」
剣城がゴールを決めて大興奮のチームV。皆が駆け寄ろうとする中、剣城は何故かダッシュしてきた。
「おい。御影玲王」
「!」
「(お)」
ザザァ、と芝を滑って御影の前で止まる剣城の目は、輝いていた。
「もっと教えろ。俺のレンジでチンのやり方」
「ハッ、やっと聞く耳持ったか、バカ斬鉄。そのレンジじゃねーけど」
逆にそこを理解してなくてあのシュートが撃てたのか。すごいな。
「いや、勝つためだ」
「あ?」
「お前のことは嫌いだが、お前の賢さは好きになった……。剣城斬鉄(このバカ)を使ってみろ」
「OK、これでWin-Winの関係だな」
「(アドバイスありがとうって素直に言えば良いのに)」
だが、とりあえず、当初の目的の『チームでまとまる』はクリアできた。あとは、いつも通り御影の手足になることに、『天才』の真似をすることに、意識を持っていけばいいだけである。
「じゃあ次の作戦だけど……」
「ちょっと待て……。その前に『うぃんうぃん』てなんだ?」
「いや良いから今それ」
「お互いがキモチイイ関係ってコトだよー」
そう言いながら、2人の横を通り過ぎる。
さて、続きを始めよう。
「イライラするなお兄……どーせたまたまのゴールだ。試合はこっからぁ!!」
REST ART!!
鰐間兄弟が苛立った様子でボールを蹴る。凪はその様子を見ながら、先ほどの作戦を思い返していた。
「(まず、連動プレス)」
御影を囮に剣城がボールを奪う。そして、お得意のドリブルテクで、走り去っていく。
「(で、射程に邪魔が入ったら、スピード任せじゃなくて)よっ」
凪に出す。
「(そんで、このままスピード殺さず、考える暇、あげないで──)」
玲王様(王様)に献上!!
「やりゃできんじゃん、ニート飛車・角!」
「Win-Win」
「……ずどん」
GOAL!!
ニートは不本意だが、そう見せたのは凪なので仕方ないか。見事ゴールを決めた御影は、満足げに歩いてきた。
「ナイスパス」
「うぇ」
背中を叩かれ、変な声が出た。
これで本当に連携できることがわかった訳で、凪は内心安堵の息を吐いた。
「いくぞ次」
「あと何点だっけ」
剣城と話しながら、次の得点について考える。
「(ま、これだと普通に決めれるんだろーけど)」
そして、その通り、チームVは次々と得点を重ねていく。後方のメンバーも動きやすくなったことで、より連携が深まっていったみたいだ。
「(もう勝ったな)」
と、ちょっと油断しながら見ていると、剣城の撃ったシュートを鰐間兄弟がヘディングで返していた。しかも目の前で。
「げっ(ヤバ、油断してた!)」
どうやって受け止めようかと思って混乱した結果、首の後ろで受け止める暴挙に出た。いけた。
「(マジかラッキー)……あーあー熱くなっちゃって」
慌てて天才っぽいセリフを吐きながら、肩でボールの位置を調節し、えいっと後ろ足でシュートに放り込む。
幸いにもちゃんとゴールはできたが、凪の心臓はバクバクとものすごい勢いで鳴っていた。
「(コワ……。”青い監獄”って、やっぱ面倒くさ!)」
少し油断しただけでもこうなるのか。今でこれなんだから、『天才』の皮を剥がしにくる奴はもっといるのだろう。
「(気をつけよ)」
ミラクルはそう何度も起こることじゃないと自分を戒め、凪は頭を切り替えた。