ゼイスグのターン

ゼイスグのターン




「聞いてよスグリ……ゼイユにちんちん握られたら、何か白い液体が出ちゃって!!!…………なんかの病気!?ゼイユは分からないって言うから、スグリに聞きたくて…………」

それ多分大丈夫なやつ!いやダメなやつ!

スグリは戦慄した。

かっこいいと憧れた、理想として狂うほど追い求めた親友が性知識皆無すぎる上に実姉によって(おそらく)精通させられたという事実。どうして。俺もそうなりたかった。いや違う。

「は、ハルト………だ、だだ大丈夫だべ大丈夫じゃない………」

「はあ!?どっちなのスグ!大丈夫なのね??………まあいいわ、今からスグでも試してみれば良いだけよ!」

「………え?………え?ね、ねーちゃ」

待って、を言うよりも早く、ゼイユのえげつない握りしめによる刺激がスグリの脳を焼いた。

「わ゛ゃ゛っ゛っっ!!?!?」

「良い声ね!!久々にあんたの悲鳴聞いたわ!ほら、あたしがたっぷり遊んであげる」

ぐにゅぐにゅくにくに…………数時間前にハルトがされたように、スグリもまた悪タイプの笑みを浮かべたゼイユによって男の急所を蹂躙されていた。

「これ、いじったらこんなことになっちゃうんだ。昔一緒に風呂はいってたから見慣れてたけど……こんな面白いことになるなんて知らなかったわ!」

熱をもち、固くなったスグリの急所を愉し気に眺めながら、ゼイユは握りしめる強さを上げていった。

「わ゛や゛ぁ゛っ!う゛ああ゛っ!?ん゛っ!ひ、い゛っっ……!!!」

風呂場に苦し気なスグリの喘ぎ声が響く。

「す、スグリ大丈夫!?大丈夫なの!?ね、ねえ!ゼイユ!やめようよっ!良くないって!!」

気持ちよさはあったものの、初めてを強すぎる刺激で蹂躙されてしまった初心な少年ハルトはこの手の行為に恐怖を抱いてしまっているようだった。

「…………!!!!」

───スグリはとにかく混乱していた。

こんな淫らなことは今すぐやめるべき、しかも姉弟でやるなんて禁忌もいいところ………でもハルトはしてもらったんだ、いいなうらやましい………いや違う……ハルト怖がってた、親友をそんな目に遭わせた姉の暴挙は何が何でも諫めるべき………でも、でも………気持ち良い、良い………今まで自分自身で慰めてきたそれよりもずっと、ずっと良い。

…………何より、大好きな、それはもう何度その手の妄想をしてしまったか分からないほど好きな姉に扱かれているということが。

───わからない、もう頭が回らない。

快楽が全身に巡る、しびれる。とにかく股間が熱い、苦しい。

「う゛うッ゛!!?ね゛ーっちゃ!!はなれて、離れろ!!!!」

「やだ。あたしに命令するとかスグのくせに生意気!!…………ね、かけていいよ、アレ、スグの見たい!!」

「わ゛や゛ぁ゛!?!?♡♡♡も、もう出゛る゛ッッッ!!!!」

びゅるるっっ!!!

真っ白な液体が勢いよく発射され、ゼイユの顔に命中した。

「うっわ!!………やだぁ!!やっぱりくさいし!!きっっっも!!!こんなのかけるとか最悪じゃん!!!」

ゼイユは自分から言っておきながらハイパードリル並みのえげつない手のひら返しをお見舞いした。

そしてキーキー文句を言いながらシャワーで顔を洗い始めた、神経質に何度も。

スグリは聞いていない、いや聞こえていなかった。

その一瞬だけ、スグリは自身の汚れた劣情をゼイユに受け入れてもらえたかのように感じていた。脳が熔けてしまった。

”かけていいよ、スグの見たい”

………あ、ああ…………

「あ……ああ……わ、や……わやじゃぁぁ………わゃ……わ…………」

熟れたりんごのように顔を火照らせ、大量の汗をかき、ぺたりと前髪が鬱陶しくかかったスグリは、呆けたように意味のない言葉を発し続けていた。

「は……わ……す、すぐり……はじめてあったとき、みたいなかみがた………」

絶頂した親友がショッキングなのか、ハルトは真ん丸な目をめいっぱい開きながら場違いなことを言った。汗だくだった。

…………もう、戻れない気がする。もう戻らない。致命的な一線を踏み抜いてしまったかのような。

「だいじょうぶ?ねえ…………」

ぎゅ、とスグリの腕にハルトが抱きついた。少し震えている。

スグリは、光のない眼でハルトを一瞥する。

───虐めたい、姉が俺たちをそうしたように、この純粋無知な親友を虐めたい。その素直な反応をぐちゃぐちゃな形で引き出してやりたい。

……一瞬だけ、強さに狂い果てていた頃の自分が蘇ってしまったような気がした。……深呼吸をする。

「っはー……大丈夫………」

「って、スグも出るのね。白くてくさいやつ!何なの、それ?」

ひとしきり顔を洗った後、ゼイユは幼い子供が親に問いを投げるかのように純粋に言い放った。

「ね、ねーちゃん、知らないの……!?!?」

スグリは目を限界まで見開き、硬直した。

……思えば、じーちゃんばーちゃんは絶対にそんな話しはしないだろうし、キタカミのような極限の田舎ではその手の本も入手できない。

かくいう自分自身もリーグ部男子とのそういう繋がりを得て初めて、エロ本というものを手にした。

その手の繋がりのないであろうゼイユが無知なのは仕方ないことなのかもしれない……それにしても無知すぎるとは思うが。

「ぼ、僕も知らない……!!」

お前もか、というかなぜ……スグリはこの最強に思えた親友がことのほか純粋すぎるかもしれないと思い始めた。

「………せ、せいし、精子。……赤ちゃん、作る素になるやつ……」

───信じられないくらいの羞恥プレイだと思った。なんて言葉を言わされてしまっているのか。

これを好んで愉しめるほどの性欲と余裕はスグリにはまだなかった。

「せいし、って何?生きるとか死ぬとか?……って赤ちゃんってそれで作るもんなの!?オトシドリが落としにくるんじゃなくて!?」

「は…………?????」

スグリはもう、この姉に一般的な知識と感性を期待しない方が良いのではないかと思い始めていた。

「え……僕もう赤ちゃん作れるってこと……どうやって!?っていうかオトシドリが落としたら赤ちゃん死んじゃうんじゃ??」

「そ、それもそうよね……って昔ばーちゃんかじーちゃんに言われたのよ!!赤ちゃんどこから来るのか聞いたら!!」

「も……も……もう出て!!出てよハルトとねーちゃん!!!お、俺シャワー浴びたいから……!!!」

「あ、僕も浴び直したいな……汗かいちゃった」

「あたしも!なんかくっさいのかけられたし!!!」

「さっき散々シャワー浴びてたじゃん……」

それにねーちゃんが良いって言ったせいなのに……誰にも聞こえないくらいの声でスグリは呟いた。


結局三人で大騒ぎしながらシャワーを浴びた。

「気持ちよかったー!」

すっきりとしているハルトとゼイユのあとに続いて、ぐったりしながらスグリは風呂場から出た。

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