106氏より 初めてクソ親戚に凌辱された己の八歳の誕生日の回想をする兄ちゃのss-1

106氏より 初めてクソ親戚に凌辱された己の八歳の誕生日の回想をする兄ちゃのss-1


 

 初めてあの男に押し倒された日のことを未だに夢に見る。

 8歳の誕生日の夜だった。


 いつものサッカーの練習から凛と2人で帰ったら、家には夕飯とは別にさも高級そうなホールケーキが用意されていて。カラフルなロウソクも8本ちゃんと立てられていて。

 あの男が歌う音程の外れたバースデーソングをBGMにふっと火を吹き消してから、贅沢に三等分したケーキをテレビを横目に食べた。

 誕生日プレートは目を輝かせる凛にくれてやった。

 ニコニコ笑うまろい頬に生クリームがついていたからティッシュで拭いてやった。


 それから。

 それから、凛と2人で風呂に入って、もう夜も遅いから2人でベッドに寝転んで。

 両親が昏睡してからというもの余計にひっついてくるようになった凛の背中をとんとん柔らかく叩いてやり、無事に眠りに落ちるまで見届けたから、自分も目を閉じて眠ろうとした。

 けれど寝室のドアを控えめにノックする僅かな音でそれを邪魔されて、すやすやと寝息をたてている凛を起こしたくないから、そっと布団から抜け出してドアを開いたら。

 扉の向こうにはあの男がいて、酒でも飲んでいるのか妙に赤い顔でこちらを見下ろしていた。

 そういえば、今日は『特別な日』だからとケーキと一緒に値の張りそうなワインの栓を開けていたのを微かに記憶している。

 凛の世話を焼くほうが大事だったから銘柄までは覚えてはいないが。

 そう近くもない親戚の子供の誕生日を秘蔵の酒の解禁日にするほど喜ぶなんて、そんなに子供好きならどうして結婚していないのだろうか。

 それなりの病院の医者で稼ぎも良く、持っている家はこうして住人が2人も増えても充分なほどに広い。

 凛と冴の血縁というだけあり顔も悪くはないし、テレビドラマで小さな子供と夫婦の一家団欒なワンシーンなんかを観るたびに「いいなぁ」とこぼしている姿からは家庭への憧れも感じられる。

 まあ、医者は忙しいと聞くし出会いが無いのかもしれないが。その割には凛にも冴にもしょっちゅう構おうとする。風呂だって最初は凛や冴と一緒に入ろうとして来たくらいだ。

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