>106 犬になったわけ
それは予報になかった大雨が降った日
ウタと一緒に下校したいルフィは彼女が来るのを校門で待っていた
だがいくら待っても彼女は来ない
下駄箱を見たが外履きはまだ残っている
心配になったルフィは校内に戻り彼女を探した
道中廊下で二年年上の女に呼び止められたが今はそれどころではない
ルフィは軽く流してウタを探し続けた
____ルフィは知らない その女が断られた後拳を強く握っていたことを
靴の裏が血で汚れていたことを
「…なんで私に振り向いてくれないの」
ルフィは教室を探したが誰もいない……
音楽室にも…体育館にもいな……
いや 居た
彼女は体育館の床に尽くしていた
「ウタ!!!!ウタ!!!!」
急いで駆け寄るが既に彼女の顔と髪は血で汚れていた
おそらく何度も誰かに蹴られていたのだろう
「ウタ!!なんでお前がこんなことになってんだよ!!!!」
彼は知っている 彼女の強さを
だからこそ分からない 一体何があったのかが……
「……ル……フィ……」
意識を取り戻したのか、ウタは血を吐き出しながら口を開いた
「…ごめんね……待っててくれたのに…私 遅れちゃって……」
一体誰が……
こんなにやられても自分の体よりも約束を守れなかったことを謝る優しいやつにこんなことを……
彼女は優しかった 優しすぎた
だからこそ抵抗できなかったのだろう
____だからこそルフィはウタを守るために異質な意志を持った
もう何も起きないように彼女を自分だけの犬にして体と心を守る
それがルフィの新たな信念となっていた
ウタはその考えに反抗しなかった
彼女も彼が大好きだったから
大学を辞めて彼に首輪を付けられた時、人語を捨てた時、彼女は人生で一番の幸福を覚えた
「わん♡」
____だが ルフィの信念はひょんなことから破れてしまうのだった……
公園の散歩で起きた事件の後
ウタの様子を見てルフィはもう二度と彼女を家から出したくない…他人に見せたくないとまで考えるようになったのだった
END