100回部屋第2?ラウンド
「ん、ふぅ…っ」
目を覚ますと湯殿だった。晴信に全身を預け、やわやわと身を清められている。
「起きたのか」
「…っは、」
答えようとしたけれど、声にはならなかった。すっかり声が枯れている。
「水、飲むか?」
頷くと、晴信は水を口に含んで口付けてきた。水を移すだけでなく、舌を吸ったり歯列をなぞったりするものだから、さっきまで晴信のいいように鳴されていた身体は勝手に快楽を拾ってしまう。
「っ、はっ、はるのぶ、もういいです…!」
「そうか?」
なんとか静止をかけると、愉しそうな目で覗きこまれて鼓動がリズムを乱した。
だけど、何かが足りない。もっともっと切実な、他の何も視界に入らない熱量が欲しい。
「疲れただろ?綺麗にして休もうな」
石鹸の泡を立てて、手のひらで全身を撫でられる。
「あっ、はぁん…♡」
それも全て快楽に変換され、身体が震えてしまうのを止められない。
昨日までは一度も感じたことのない未知の感覚だというのに、何もかもすっかりこの男に染められてしまったのが口惜しい。
しかし同時に、なにか感じたことのない温かい気持ちもあるから、人間というのは不思議だ。
「しっかり洗わないとなあ」
晴信の声はやっぱり愉しそうだ。私は息も絶え絶えなのに、どうしてこんなに余裕があるのだ。そういえば出られない部屋のミッションは片付いたのだろうか。
「部屋から、出られたのですか」
「ああ。おまえがたっぷり達してくれたからな」
「ずるいです、私ばかり」
「何言ってんだ。俺もたっぷり注いでやっただろ、こことか、ここに」
抱え上げて、大きく足を開かせられる。自分でもろくに見たことのない場所が鏡に映し出され、女陰から晴信の子種が流れ出る様を見てしまった。
「っ…!」
あまりのことに顔を背けると、晴信に顎を掴まれ、耳元で囁かれる。
「きちんと見ろよ、景虎」
この声がもうダメだ。脳天から腰に衝撃が突き抜けて、頭が真っ白になってしまう。
「おまえと、俺の大事な場所だから、綺麗にするだけだろ?」
そう言って、女陰に指を挿し込まれる。
「あ、んっ…」
声を殺そうとするけれど、殺しきれない。晴信のせいだ。
くちゅくちゅと音を鳴らして晴信が指を動かすたび、びくびくと腰が浮く。
「あっ、ぁ……っ」
「綺麗にしてるだけなのに随分と感じちゃってるなあ?」
「ちがっ……はぅん!」
反論しようとしたけれど、不意打ちのように陰核を弾かれて大きな声が出てしまう。そのままぐりっと押し潰されて腰が跳ねる。
「自分の顔、見てみろよ」
言われるままに鏡に目を向けると、そこには、目をとろんと潤ませて、弛緩しきった顔をした「女」がいた。
「晴信の…せいでしょう」
「そうだ。俺がおまえを女にした。おまえが女の顔をするのは俺の前だけだ」
あまりに当然のことを言われて口を尖らせる。
晴信以外の男に触れさせることなどないし、晴信以外に触れられてもこうはならない。あまりに当たり前のことだ。
「そんなの当たり前でしょう」
「そうか」
晴信は、少しだけ驚いたあと、目尻を下げて微笑んだ。これは、初めて見る顔だ。
そのままそっと口を吸われる。
なんだか、とても温かい気持ちだった。
唇が離れると、すっと何かが寒くなる。もっと温かくなりたくて、上体をひねって晴信に両腕を回す。
「ねえ、晴信。川中島、しましょう?」
「はあ?今からか?おまえ、身体動くのか?」
動かない。それを指摘されると辛い。しかし。
「でも川中島したいんです」
「わかったわかった。じゃあ別の川中島でいいか?」
「別の川中島ですか?」
それが何を意味するのかは分からなかった。けれど、晴信がくれるものならなんでもいい。
「じゃあそれでいいですよ」
「よし、そうと決まれば行くか」
晴信が私を抱えて立ち上がる。身を清められている途中だったはずだが、切り替えが早い。
「もう洗わなくていいのですか?」
「どうせまた…いや、なんでもない。なんだ?俺に洗われるのが好きか?」
「嫌いじゃないですよ」
「へぇ……じゃああとでたっぷり洗ってやるよ」
晴信がにやりと笑う。その意味は、後々たっぷり分からされることになったのだが、それは別の話である。
さて、晴信に抱えられて連れられたのは、晴信の自室だった。
「カルデアでの戦闘は禁止ですよ」
「戦闘はやらんから大丈夫だ」
褥に横たえられ、のしかかられる。
これはさすがに私にも分かる。
「これは川中島ではなく、さっきの部屋の続きでは?」
「似たようなもんだ」
「そうですか?まあ、そうかもしれません」
口付けて離れた晴信は、いつもと違う眼をしている。
熱く烈しく強い眼差しで、私だけを見ている。
この眼だ。これが私を人に堕とした。
そうか。ならばこれはやっぱり川中島なのだろう。
「負けませんよ」
挑み返せば、晴信も愉しそうに笑うから、私ももっと楽しくなる。
「まあ、せいぜいがんばれよ」
そして、私は再び晴信におぼれていった。