02相談

02相談

ss


※一応閲注

前回からの続き。疲れてるナギちゃんなので少々キャラ崩壊気味かも。解釈違いなら申し訳ない

書いてて途中から力尽きたので後半雑。そのうち修正する









さて、仕事の休憩中ではあったが急ぎの案件については概ね片付いている。今日一日、数時間くらいはこの子の為に時間を使うのもいいだろう。まぁあからさまに普通の生物ではないし、監視という名目でも問題無い筈だ。えぇ、これも仕事です。仕事なので大丈夫です。


とりあえずはシャーレの先生にこの子について相談してみよう。もしかすればキヴォトスの外から来た先生は知っているかもしれないし、仮に知らなくても各学園の生徒が所属するシャーレの力があれば何かしら情報を得られるかもしれない。そう思いモモトークを送る。



『先生、少々ご相談したいことがあるのですがよろしいでしょうか?』



ひとまずはこれでいいだろう。これで後は返信を待って、その間にこの子について調べ...



ピロン♪



...スマホを再び取り出せば、その画面には通知が一件。



“どうしたの?“



...相変わらず、返信の速い人だ。とはいえあちらも忙しい身だろうし、簡潔に用件を済ませよう。



『いえ、実はティーパーティーの庭にこんな子がいたのですが』





『先生はこの子について何かご存じでしょうか?』



数十秒の間の後、返信が届く。



”ごめん、私も見たことが無いや……”



『そうでしたか。申し訳ありません。』


キヴォトスの外から来た先生でも知らないというのなら、本当にこの子はなんなのだろうか。もしかしたら私や先生が知らないだけでキヴォトスのどこかにこの子達が暮らしているのか?


『もしよければ、お手隙の際でも構いませんのでこの子について調べてはいただけないでしょうか?』


『トリニティの郊外の、私が知らない所に生息しているという可能性もありますので』



”分かった。他の学園の子に聞いてみるね”



色々な学園に伝手があり博識な先生でも知らないとなると、もしや人の手が入らない場所に生息しているのだろうか。レッドウィンターの山奥やゲヘナの深い森、アビドスの砂漠は...本当にウミウシのような生態ならば砂漠にはいないだろうが、候補ではある。


...そういえば百鬼夜行にはツチノコという幻の生物がいると聞いたことがある。

幻の生物。なるほど、確かにこの子にはピッタリかもしれない。もしかすればこの子も百鬼夜行あたりから来たのだろうか。


古書館でそういった生物に関する本を借りて調べてみよう。そう思い準備をしていると、再びスマホから通知音が鳴った。



”その子、見に行ってみてもいい?”




...はい?







「お待ちしておりました、先生。来ていただいてありがとうございます。それと申し訳ありません...急でしたのでお出迎えの準備もあまりできていませんが...」


"大丈夫だよ。それに無茶を言ったのは私だしね。"



先生が来たのは、それから僅か一時間後の事だった。



「先生、本当によろしかったのですか?この時間はお仕事中だと以前お聞きしていましたが....」


"いやぁ、まぁ...うん、大丈夫だよ大丈夫。それよりも、あの子が?"



煮え切らない返事。恐らくは仕事の途中で来てくれたのだろう。よく見てみれば、先生が少し汗をかいていることに気づいた。どうやら以前お茶会に招待したときと同じように走ってきたようだ。

...またやってしまった。急いでまでくる必要はなかったというのに、私の伝え方が悪かったのだろうか。まだ日は高く、先生のお仕事もまだ残っている。そんな状態で呼び出してしまったという事実が申し訳ない。エデン条約の件から先生には迷惑をかけてばかりでこちらは何もできていないというのに...



"えっと、ナギサ?"


「...すみません、少々考え事をしておりました。えぇ、この子が先程お話した子になります」



...いけない。最近どんどん思考がネガティブになっているが、今は先生というお客様が来ている時間なのだ。せめてこれ以上醜態を見せないようにせねば。


先生を呼び出すことになった理由であるこの子は、新たな訪問者をじーっと眺めていた。



"ほんとにいるんだ。てっきりナギサのドッキリかと"


「もしそうであれば急に来ていただいたことに対してお詫びをせねばならないところでしたが...」


"まぁナギサはそんなことしないだろうけどね"


「そう言っていただけるなら嬉しいです」



実際私も最初は幻覚だと思っていたし、もしこの子に会っていない状態でミカさんに写真を見せられたら悪戯を疑うだろう。実際、この子をティーパーティーの他の方に相談することに少し抵抗があるのはそういった理由もある。行政官やセイアさん、ミカさんには問題ないだろうが...それはそれとして、詳しいことが分かったら相談するつもりだ。


先生がおそるおそる頭を撫でると、目を細めてされるがままにしている。先生も何かを考えているのか、時々小さく独り言を呟いている様子。意外とひんやりしているその体と見た目にそぐわない気性の穏やかさもあって、かなり驚いているようだった。



"この子を見つけてからの事を、聞かせてくれる?"


「はい。そこの机で休憩していたのですが...」



この子と遭遇してからのことを先生に話した。先生は少し悩んだ後に、困ったような笑みを浮かべる。



"そっか...でもナギサ。砂糖が苦手な動物もいるから気を付けてね。この子は大丈夫みたいだけど"


「そうですね...失念していました。ロールケーキはやめた方がいいでしょうか?」


"そうかもね。この子が何を食べるかは分からないから、少し探してみて...うん?"


「はい?」



直後、右手に冷たいものが当たる。そこには先ほどまで穏やかな顔で先生に撫でられていた筈だったあの子が慌ただしい様子でぽわぽわと鳴いていた。袖先を咥えて引っ張ったり手に頭を擦りつけたりと何かを訴えているようにも見える。先生が宥めようとして頭に触れると、それに反応して今度は先生にも同様の行動を見せた。



"この子...どうしたんだろう?"


「えっと...」



私を見て、先生を見て。ぽわぽわと鳴くが言葉は分からない。困惑している私をよそに、先生が何かを閃いたのかその子の頭を撫でながら言った。



"もしかして、ロールケーキ?"



先生が言うと、目を見開いて首をぶんぶんと縦に振る。頷いているのだろうか。



"ロールケーキ好きなんだ"


ぶんぶん


"あ~、分かるなぁ。ナギサの作ってくれたロールケーキ美味しいもんね"


ぶんぶんぶん!



...人の言葉を理解しているのかはなんとなく分かっていたが、ここまで賢いとは。


答え合わせが済んで満足したのか今度は先程とは違い嬉しそうに先生にじゃれついていた。



"あはは!可愛いね、この子"


「えぇ...とても、可愛いです」



机の上にあったロールケーキを一つ差し出すと、笑顔でそれを食べ始めた。言葉は話せないのにこちらの言葉を理解して全身を使って感情表現する様子についつい癒されてしまう。先生はそんな私たちをどこか微笑ましい目で見ていたが、そういえば、と話を切り出した。



"さっきからこの子、あの子って呼んでるけど名前は付けないの?"



...そうだ。この子は何と呼べばいいのだろうか。


学名は?分類は?もし名前が既についていたら?


ロールケーキを食べ終えたこの子は急に固まった私を不思議そうに見上げている。


そっとしゃがんで、この子と目線を合わせた。動物と話すにはこうすればいいとどこかで聞いたことがあったからだ。それにセイアさんもよく腕先に止まったシマエナガさんと目線を合わせていた。


「お名前は、なんというんですか?」


なるべく優しい声色になるように心がけて語り掛ける。人の言葉を理解できるこの子なら、何か分かりそうな気がしたから。


...まぁ結果としてぽわぽわ鳴いていることとしか分からず、先生からの温かい目線を頂戴することになったが。



結局何もわからず仕舞いである。うんうんと唸りながら何か丁度いい呼び名が無いかと頭をひねる。ウミウシちゃん?安直だろうか。ピンク色だからももちゃん?どこかで同じか似たような名前の生徒の方がいそうな気がする。ナメクジちゃん...は無い。流石にちょっと違うし他の方に呼んでいるところを見られるとまずそうだ。もういっそピンクだしミカさんと同じような名前を...なんて考えていると



"ぽわぐちょちゃん..."



微笑ましいものを見るような目でこちらを見ていた先生がふと呟いた。私とこの子の視線が先生に集まる。


ぽわぐちょ


ぽわぐちょ...


ぽわぐちょちゃん...


なんとなく頭に残るフレーズである



「先生?」


"あぁごめん。鳴き声と見た目の感じで色々考えてね。この子のどこか奇妙なかわいさも表現できてるかなぁって"


「ぽわぐちょちゃん...」


この子の視線が先生から私に移る。


"...?ぽわぐちょちゃん"


今度は先生に。



確かに一件すると珍妙に見える出で立ちとそのうちに秘めた可愛らしさとのギャップ、そしてぽわーおと鳴く様を見ているとなんとなくしっくりくる。

それに何故だろうか。口に出すたびにこの子が反応している。もしかして元からこの名前だったのだろうか。そうなればこの子の名づけ親は相当ユニークな方らしい。丁度先生のように。



「ではぽわぐちょちゃんで」


"あれ、いいの?"


「えぇ。私もかなりしっくりきましたし...それに、この子も気に入ってるようなので」



この子、改めぽわぐちょちゃんも名前を呼ばれるたびに反応しているし、こちらの呼び方が決まったことを理解したのか足をばたばたと動かして喜んでいる。



"そっか。なら良かった"



丁度その時、先生のスマホが鳴る。どうやら仕事の連絡のようで、それを確認した先生の笑顔が少し崩れていた。



"ごめん、呼び出されちゃった。今日は失礼するね"


「はい...本日はお忙しいところにありがとうございました、先生」


"気にしないで。生徒の悩みならいつでも聞いてあげるし、何より私も楽しかったしね。というか..."



先生が名残惜しそうにぽわぐちょちゃんの頭を撫でた。



"またこの子に会いに来てもいいかな?"


「えぇ、喜んで。その際にはしっかりお出迎えさせていただきます」




その後、ティーパーティーの他の方に見送りをお願いして先生と別れた。ぽわぐちょちゃんがいる為室内までではあるが、ぽわーおと鳴きながら先生を見送っているところを見るとどうやらこの子も先生に懐いたらしい。


...次先生が来てくださるのはいつだろうか。

ひとまずは今度歓迎するのための紅茶と、この子も気に入ってくれているロールケーキを用意する為に私はキッチンへと向かうのだった。



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