空裂雛
バサァ!
私は今、空を飛んでいる。
ビュオォォォォ!
何者にも縛られることなく、風を切って宙を舞う。
それがとても気持ち良かった。
最初は羽根が増えたことに不安を覚えたけど、
今は翼が増えて本当に良かったと思う。
建物の間を縫うように飛び回るのは爽快だった。
ガヤガヤ…
下の方で雑音が聞こえる。
見てみたら生徒同士で喧嘩をしていた。
「…うるさい」
ズダダダダダ!
私は喧嘩をする生徒達を空から撃った。
どっちが悪いのかは知らないが、どうせ下らない喧嘩なのだろう。
二人とも気絶したようで、私は地上に降りて部下に連絡した。
『喧嘩をしていた二人を仲裁したが、それでも止まらなかったので両方を気絶させた』
そう言って面倒ごとを部下に押し付けて、空へと戻る。
空へと戻る際中、誰かが私のことを
「正しく『裂空』だな」と言ったことが聞こえた。
…悪くない。
空を飛びながら私はそのことを考える。
しかし、考え事をしながら飛んだおかげで…
バリン!
「あっ」
ビルに窓から突っ込んでしまった。
幸いにも廃墟だったので、中には誰もいなかった。けど…
「…はぁ」
萎えてしまった。
「…帰る」
そして私は、ポケットから飴を取り出して食べ、アビドスの本校へ飛んでいく。
廃墟に突っ込むなんて…
「私自身は雛のままなのかもしれないわね」
そう愚痴をこぼして、私は空を裂く。
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(SSまとめ)