🏝️🐱

🏝️のお世話をする🐱の話。

※🏝️🐱同室設定(栗東と美浦で違うとか考えたら負け←)

わ

ん

く

「髪乾かして、ニャンコ」

「うわっ！？びっくりした〜！」

ガチャッ、と勢いよくシャワールームのドアを開けて、ずぶ濡れの状態でぼくのベッドに近づいてくるセリフォスくん。わわっ、ベッド濡れちゃうって。

「も〜ちゃんと水拭いてよセリフォスくん」

「めんどくさい。それに、ニャンコがちゃんとしてくれるだろ？」

「む〜………」

軽く首を傾けてそう言われると、あざといなとは思いつつも断れない。仕方なく、ふわっふわのタオルを用意してポンポンと髪を拭いてあげる。髪の毛を痛めないように、叩くようにして拭く。

「………セリフォスくんの髪の毛ってとっても綺麗なんだよ？だから、お手入れもちゃんとしなきゃ」

「別に俺はそういうの気にしねえし」

「セリフォスくんがそうでもぼくは気にするの！」

「………はいはい」

セリフォスくんの髪の毛は、ちょっとだけ暗い栗毛の髪の毛。でも、太陽の光とかに当たるとキラキラ金色に輝いて見える。それが、ぼくは好きだった。

(おせっかいかもしれないけど………こんなに綺麗なのに適当に扱ったらもったいないよ)

ある程度水気を切って、ドライヤーをかける。前にお父さんがくれた、髪へのダメージが少ないドライヤーだ。

「熱くない？」

「ん、ちょうどいいよ」

「そっか」

風が当たるたびにぴこぴこ揺れる耳がなんだか可愛い………あ、後で耳も手入れしてあげなきゃ。セリフォスくん、いつも髪の毛乾かしてもらった後「耳の方もして」って言うんだもん。

数分間風を当て続けていると、ほぼ乾いてきた。

「よし………こっち向いて？セリフォスくん」

「ん。耳もよろしく」

ほら、やっぱり。

ぼくたちの耳は繊細だから、特に丁寧にお手入れをしなきゃいけない。その分、お手入れが難しいところでもある。おまけに、お手入れに執着のないセリフォスくんのことだから、絶対ぼくに任せてくる。

「お痒いところはございませんか〜」

「ございません〜」

あったかいタオルで包んだ後、搔くようにしながら耳をマッサージしていく。こうすると、とっても気持ちよさそうな顔するんだよね。そして、仕上げにいい匂いのするオイルをつければおしまい。

…………………………

「＿＿＿えっ、セリフォスくん香港行くの！？」

「おう。ナミュールとかも一緒にな」

寝る直前、セリフォスくんは言った。

(ドバイにも行ってたし、やっぱりセリフォスくんってすごいよなあ………)

ぼくもGⅠに出たことはあるけど、それはクラシック期の話。しかも、ケガしちゃってしばらくお休み中だから、正直セリフォスくんのことが羨ましい。

(………でも、ひとつだけ)

ひとつだけ、心配ごとがある。

「セリフォスくん、今度こそはちゃんとお手入れするんだよ？」

「………」

あっ、今目逸らしたな←

イクイくんとベルーガくんから聞いた話だけど、ドバイに行っても相変わらずお手入れをサボっていたセリフォスくんは、周りの子からお世話されっぱなしだったらしい。

「真面目なイクイくんも、お世話が得意なベルーガくんも………あと、お手入れ上手なマリリン先輩も、みんな香港にはいないんだよ？」

「………あー、分かったよ。そこまで言われたら流石にちゃんとするって」

ちょっとしつこかったかもしれないけど、どうやら折れたみたいだった。いや、本当にするのかはまだわからないけど。

「………あ、あと！ぜったい無事に帰って来てね！」

「………もちろん」

「………ぜったい、ぜったいだからね？」

「はいはい、仰せのままに」

そして約1週間後、セリフォスくんたちは香港へ旅立った。

…………………………

＿＿＿12月10日。

「＿＿＿やばっ！！見逃してた！！」

ちょっと疲れてたから、レースが始まる何分か前まで眠ろうと思っていた。完全にやらかしちゃった。時計を見ると、時刻は午後6時。

「あ〜ごめんセリフォスくんにナミュールちゃん………」

せめて香港マイルは見ておきたいと思っていたのに。数時間前の自分を恨む。

「………わ、ナミュールちゃん3着だったんだ！」

レースに関するニュースを探していると、まずはナミュールちゃんの名前が目に入った。なんと、日本のウマの中で最先着だったらしい。

「………あ、セリフォスくんは7着かあ」

セリフォスくんは7着。ラッキーセブンだ←

(………あ〜本当なんで寝ちゃったんだろう)

どうしても自責の念に駆られる。

すると、

＿＿＿ﾋﾟｺﾝ♪

L◯NEの通知音が鳴った。

「？セリフォスくんからだ………」

１枚の写真とメッセージ１件。内容を確認してみる。

「＿＿＿＿＿＿っ！！」

それは、『最も美しい姿』だった。

『いっつもニャンコがしてくれる手入れやってみたらなんかベスト賞？みたいなの受賞した。さんきゅ』

光に照らされて金色に輝いて見える髪。深い紅色の切れ長な瞳。均等に筋肉のついた長い手脚＿＿＿それら全部がぎゅっと詰まったパドックの写真。

「………ふふっ、ちゃんとお手入れしたんだ」

レースリアタイできなかったのは残念だったけど、まさかセリフォスくんがこんなにちゃんとしてると思わなかったから、思わず笑みが溢れる。

(てか、ぼくのやり方でやってくれたんだ)

しかも、そのやり方で立派な賞ももらったと思うと、ぼくも鼻が高い。

(セリフォスくんが帰ってきたら、まず何しようかな)

健闘を讃える？それともまたお手入れしてあげる？

「ん〜………」

でも、まず最初は

「『おかえり』って言いたいかな」

セリフォスくんが帰ってくるまで、あと少し。