白に溶けた日
ひどく、懐かしい夢を見た
僕が這っていた
親を呼んでいた
ただそれだけの事が楽しかった
両親は来ない
だから僕から寄った
立とうとした
いつも通り、目の前で
「おとうさん!おかあさん!……っう…」
いつも通りに転んだ。渇いた床がまるで泥みたいに足を絡め取って、足裏に触れる嫌な感触と一緒に倒れる。じわり、染みるような痛みが身体に走った。
「ねえ、あなた…」「ああ…近々……」
おとうさんもおかあさんもこっちを見てくれない。最近はずーっと忙しそうで、何をしてもこっちに顔を向けてくれなくなった。
立ち上がろうとして、またころんだ。ちゃんと物をつかんでるのに、つるっとすべって支えにならない。あきらめて地面にへたり込んで、おとうさんとおかあさんを見上げた。
…よく見たらこっちを少しづつ見ていた。うれしくてわらったら目をはなされちゃった。
ぼくの手足はまっすぐじゃない。いっぱいころんだからちょっと変な形をしている。おもしろくってぶんぶんふってたらいたくなった。ところどころ色がついててきれいだと思って、火にかざしたらやけどした。また色がふえた。いちばんすきなのはあお色、空とうみとおなじ色ってきいた。
つぎにめがさめたらさむかった。みたことないものがずっとひろがってる。すこしくらいおおきなせかいはほしがきらきらひかってた。はじめてのことにこうふんしたらからだがいたんだ。
おとおさんおかあさん、あれなあに
だれもおしえてくれなかった。
がけのよこになげられた。いたいいたいいたいいたい。ごろごろころがるからいわがはだにおしつけられる。ないてたらおとおさんもおかあさんもどこかにいっちゃった。
おいかけてもころんでばっかりですすまない。からだがいたいでいっぱいになる。まがったあしがきしんでた。ぼくがひとりぼっちになっちゃった。
そのうちにしろいこながふってきた。とってもつめたくて、ふれるだけでたいおんをとられてとてもいたい。あばれてもこなはふりはらえなくてどんどんどんどんさむくなる
そのうちあったかさはぜんぶとられちゃってうごけなくなった。せめてとくるりまるまってもさむさがとまらない。ちいさくちいさくまるくなってちぢしんでさむくなってあったかさをとられてちいくなってさむくなってちいさくなってさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくてさむくて
………………
……………
…………
………
……
…
「…久し振りに見たな。この夢」
意識が途切れた所で目が覚めた。見覚えのある悪夢は生まれてこの方ずっと見てるせいで悪夢と認識出来なくなった。まあ、辛くないのは良い事だ。
静かに目をもう一度瞑り、先程見た夢を思い出す。
ひどく、懐かしい夢を見た
いつも通り曖昧な夢で
ずっと転んでいた
誰かに背負われていた
二人の人間は僕に背を向けていた
這うばかりで何もできちゃいない
誰かを呼んでいた
僕は……
「……なんだったっけ」
夢は時間が経てばあっさりと霧散するもので、思い出そうと思考にした瞬間にそれを形容する言葉が見つからなくなる。残ったのはじっとりとした嫌な気分だけだ
仕方がないからいつも通りの生活をした。ご飯を食べて少しだらけてから散歩へと出かける。いつもより少し早く出たせいか朝靄が濃いのが少し気になった。そういえば、夢の終わりもこんなふうに白い霧が出ていた気がする
はあ、と息を一つ付く
視界の端で、子供が蛞蝓に塩を振りかけていたのがやけに目についた