🍋×🪞

※閲覧注意

※擬人化

※完全に自分の解釈

※性的は控えめです

🍋→23フェブラリー1着

🪞→22武蔵野1着

雨で濡れた彼女の髪は、鏡と見間違うほど美しかった。

それをかき上げる仕草はあまりに扇情的なもので、よろしくない欲求が頭を満たしていた。

いや、うん。途中までは豪雨に感謝してしまったけれど、彼女がくしゃみをしたところでさすがに冷静になった。少し休憩できる場所を探そうと言うことになって、歩いて、見つけて、普通だったらそのまま雨宿りするわけだけど

僕は今立ち尽くしている。

緊急事態とはいえ、これはなんだか………

「早く行きましょ」と僕の気持ちを置いてけぼりにした彼女の顔はネオンの明かりに照らされていた。

「ふー…ありがと、先にシャワー入らせてくれて。レモンも早く入りなさいね。服着替えた分良いけど風邪引かないようにね」

「あ、は、はい。」

手の震えが止まらない。

これが日本の…ラ、ラブホテル？なんでしょうか……？モーテルとは違ってもっとそういう事のために作られている、ような………

初めて見る独特の雰囲気の部屋。ベットに腰をかけているだけなのに落ち着かず辿々しい受け答えになってしまう。

「にしてもせっかくのデートで雨とか最悪ね。もう帰るだけだったから良いか。」

「ええ……まあ」

「アタシ疲れちゃったから宿泊にしたけど、良いわよね？」

「…………」

「何アンタ緊張してんの？」

「え゛！？」

目を細めこちらをニヤニヤと覗き込む彼女はいつのまにか隣に座っていたようだった。

「別に大丈夫、襲ったりしないから！」

「お、おおお襲う……！？」

「やっぱ可愛いわねーレモンって」

「かわっっ…！？いやじゃなくてその、大丈夫ですそういう事しないですからお気になさらず……」

明るく冗談めかしに笑う彼女に、茶化さないでくださいと言葉を返そうとしたその矢先、間隔を詰め寄られてまだ若干濡れている彼女の髪が肩に触れた。

そういう事、あっても良いのよ？

彼女の甘い囁きが脳を満たした。

その綺麗な艶髪は、雨で濡れてなお魅力的な彼女の姿を思い出させた。理性がどうとかこうとかそんな事は煩わしくなって、もう全てがどうでも良くて

気づけば彼女は自分の真下。ただ僕を見つめていた。

「………あ、あ…れぐらいで興奮しちゃうの？あらアンタも男の子で」

「男ですよ」

「ミラーさんにはわからないでしょうけど、僕はどうしようもなく男です。」

「えっ…」

「その髪も、ふとした瞬間僕が穢してみたくなる。」

「レモ」

「貴女が口を開こうとする瞬間すら、劣情を掻き立てるんですからね？」

「……」

彼女の首筋を静かになぞっていく。

「………ミラーさんはいつまでも僕が可愛い後輩ですか？」

「付き合っているのに、僕を1人の男として意識してくれないんですか？」

「思わせぶりな態度だけして、『また』僕を置いて行きますか？」

沈黙の中思い出すのはあの日の砂を被った貴女。初めて知ってしまった悔しい気持ちと心を奪われていく感覚。

貴女に魅せられて、必死になって走って走って、ついに貴女と肩を並べられたと思ったのに

貴女は僕を置いて行った。

逃げるのは僕、差すのは貴女の筈なのに

僕はずっと届かない貴女を追いかけ続けてるみたいだ。

「アンタ」

「アンタってアタシの事まるで分かってない。そんなんだからいつまで経っても子供扱いしてるのよ。」

「あのね！！……………そ、その、そういう事を意識してない人とは緊急とはいえ宿泊でホテルなんて取らなのよ……それに、思わせぶりな態度だって完全に揶揄ってるってわけじゃないっていうか……そんな事すら分からないからいつまでもアンタは子供扱いなんでしょ……！」

彼女は頬を赤く染めあげ息遣いか少し荒くなる。どうやら僕はその姿に滅法弱いらしい。あの日だってそうだった。レース後の貴女を思い出してしまい、気分が高まっていく。

「い、良いんですか？そんなこと言っちゃったら後戻りできないんですからね……？」

「もう我慢…できませんからね？」

余裕のない僕に彼女は小さく頷く。

恐る恐る彼女の頬に手を添えてだんだんと距離を埋めていく。

お互いに踏み込んで、震えながらも愛で満たして

その美しい鏡に口付けを落とす。

最初は優しく、大きすぎる愛情と貴女への気持ちを宥めるように。口を離そうとすると手を掴まれて、切なそうに身体を此方に寄せてこられて、それが堪らなく愛おしいから深いキスへと落ちてゆく。水音が部屋全体に甘ったるく響く事なんて全然気にならない。ただ求め続けるだけ。

それが、それだけのことがこんなにも……

幸せだなんて

「んっ………ぁ……」

「……はぁ」

「……そういえばレモン」

「アンタシャワー浴びてないわよね？」

「え」

「まだ髪ちょっと濡れてるし、風邪ひくわよ。」

「いいえ濡れていません」

「いやいや無理ある」

「あれ？そういえばミラーさんも髪乾かしてないじゃないですか！風邪ひいちゃいます！」

「…………ふふっなにそれ！自分のことは棚に上げといて私の心配？ふふふっあははははっ！」

「何で笑うんですか！……ははっ…ふふふっ」

見つめ合って、可笑しく感じてきて、二人で笑って、また見つめ合って、意外と子供みたいだなって

暖かく感じた。

「シャワー終わるまでお預け、ですかぁ……」

「そんな顔しないでよ。追い込みって焦らして焦らしてがあるから最高に気分が良いのよ？」

「それ関係あるんですか」

「さあ？シャワー入りなさいよ」

「不満です……」

「……なるべく早くあがってきなさいよ」

「ええ、言われなくても。」

そう言った貴女の表情は僕には直視できなかった。

でも、なんだか幸せな夜が始まる気がする。