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ワンクッション

閲覧注意

擬人化注意

悪い🏔先輩概念シリーズラスト

ワンクッション






「あ~~~沁みる…お湯さいこー…」

肩まで湯に浸かった瞬間思わずオッサンみたいな声が出てしまった。

冷たい雨は随分体を冷やしていたようだ。

無駄に広いジャグジーはそれなりに長い手足を思いきり伸ばしても

十二分に余裕がある。

趣味じゃない無駄にムーディな照明とちょっとあやしい椅子。

アメニティに混ざったいかがわしいローション類。

ここはいつもの、爺ちゃん経営するラブホだった。

バスルームの外の気配は妙に静かで。

「……」

ぶくぶくぶく。

行儀悪く頭のさきまで潜って静寂の中で思考する。

さてどうしようか。


ドアのむこう、息を潜め寝室で俺を待っているのは

あのセニョールバスカドールだった。



弁解するとこれは完全に予定外だったんだ。

来日した彼に誘われて一緒に観光と飯を食って。

うっかり終電逃してタクシー並ぶのめんどくさ

(なんでお前そんな辺鄙な場所のホテルとっちゃったの?)

そういや爺ちゃんのホテル近かったっけ?と

ダラダラ歩いてるうちに激しく雨が降り出して…


「お前がまだいける、俺らの末脚なら間に合うとか余裕かますから」

「は~?ウシュバがいじきたなくいつまでもゴハンにがっついてたからだろ?」

「お残しは悪なんだよ」

「どうでもいいがはよ部屋決めてくれませんかねろくでなしども」


カウンター前、びしょ濡れでぎゃあぎゃあ騒ぐ俺たちに爺ちゃん代理のファンロンさんはうんざりした顔だった。


…と、ここまでがこれまでの経緯。

そして今。

ベッド(当然のようにひとつである)にガッチガチに固くなって座ってる

セニョールと並んだ俺。

うーん。

「ウシュバ」

「おう」

「ここってふつうのホテルじゃないよな」

「説明した通りだけど」

「その…motelとかHot Pollow Jointsてきな」

「ラブホだな」

らぶほ。口の中でモゴモゴつぶやいて真っ赤になった男をちらりと横目で眺める。

普段は押しの強い、ガタイの立派な妙齢の牡馬が照れまくって縮こまっている姿は

ちょっと可愛いと言えなくもない。

うーんこれは。

どう考えてもそういう流れだよなあ。

「セニョール」

すこし低い声で名を呼べば肩が大げさに揺れた。

肩にかかる髪の一筋を掬ってさらりと落とす。

「俺は別にいいけど…どうする?」

「ど、どうするって」

「セックスするか、そのまま寝るか。

俺はどっちでもいい」

「や、やる!!」

…言い終わる前に食いつかれた。

「Sleep with me、きみとsexしたい、ウシュバ」

「おお情熱的…」

セニョールは覚悟を決めたようで俺の手を握りずいっと

こちらに身を乗り出してくる。

「すこしだけきたいしてたんだ。tripちゅうに、きせきがおきて。

もしももしも、そんなきかいがあれば。

きみにふれることができたなら。

きっとこのおもいをつたえようって」

「…思い?」

拙い言葉で訴えられる思いは随分真摯だった。



海外参戦が決まってから。いや、その前から。

あのドバイのレースで先頭を走る君を知って

ずっと気になっていた。

研究だと言って毎日、レースを見ては何度も繰り返し胸を熱くした。

サウジの直線、最後に二人ゴールまで全力で競り合ったあの瞬間、

今までで生きてきた中で一番幸せだって思った。

このまま走り続けて灰になったって構わないとさえ

感じたんだ。



「それは…光栄なことだな」

くそほどストレートに伝えられる熱に居心地の悪さを感じるが

セニョールはまだまだ言い足りない様子だ。

「どうかこのねつをしってほしい。そしてもっと、きみをしりたいんだ」

「そう」

ゆっくり彼を抱き寄せれば思い切り腕のなかに飛び込んでくる。

熱い吐息が首筋に触れた。

「おれはきみが、」

「このまま抱くぞ」

「!ああ、ああ…」



すき。

あなたが好きです。

I love you.


全部聞きたくなくて耳を伏せて目を閉じた。



部屋の中には濃い情事の気配がまだ漂っている。

セックスは気持ちいいけどこの疲労感だけは何とかなんねえかな。

ならねーか。

「なあ」

裸のままで寝転んでいるセニョールは俺の髪をずっと弄って遊んでいる。

なあそれ楽しいか?

「ウシュバにはすきなひとがいるのか?」

「…いねえよそんなの。なんでそんなこと聞くんだ?」

一瞬だけ過った誰かの姿を頭の中から消してなんでもないように答える。

「うーん…なんとなく」

「わかんの?すげえなエスパーかよ」

「きみのことだけをみてきたからね」

「怖」

「ふふ、…うん。きめた」

「何を?」

「いっかいだけでもおもいでができればいいとおもってたけど。

やめた。

おれだってきみをあきらめない」

「はあ」

「わすれないでくれ。

きみとおなじけしきをみれるのはせかいできっとオレだけだ」

「セニョール」

甘い言葉と裏腹にギラギラとその眼は燃えるようだった。

ああ、この目はサウジで、そしてドバイで見た。

俺を狙うハンターの眼差しだ。


「つぎにあうまで、ウシュバもオレのことをいっぱいかんがえて」

「…善処するよ」



部屋に来た時とは正反対で、強気を取り戻した彼は少し腰の引けた俺の返答を聞いて

満足そうに微笑んだ。







とりあえず妄想はここまでになります。

🦎くんはセニョールのことをあんま好きじゃない。

セニョールはいまのところ🦎くんが目に入ってない。

🎲は今日もご機嫌でウィル先輩は振り回されてる。

長々とありがとうございました。


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