🦎×🏔

わんくっしょん

「せんぱい」

甘い声がする。

部屋に入るなりぎゅうぎゅうに抱きしめられた。

「…ん…」

間髪入れず口づけられる。

ベッドまで待てが出来ないとは随分余裕がないようだ。

少しかさついた唇、滑らかな頬。

初めてこうした時には俺の下にあったそれが今は同じ高さにあるのが少し腹正しい。

性急にねじ込まれてきた舌に応えながら、宥める様に、あやすようにリードしてやる。主導権はいつだって俺の方にあるのだから。

「はぁ…」

つ、と、互いのあいだに糸を引いて唇が離れる頃には少し落ち着いたようだった。何だかバツの悪い顔をしているのを見て思わず笑ってしまう。

「そんなに溜まってたのかよ」

「そういう訳じゃないですけど…いや、そうかもしれないけど…」

「若いな」

「だって先輩が」

「俺が何？」

意地悪く揶揄えばむう、と頬を膨らませたまま黙って首筋に顔をうずめてきた。

素直で、青くて、かわいい、俺の。

「せんぱい」

「うん」

「オレとセックスするのは悪いことですか」「…悪いだろ。未成年を引っ掛けて引きずりこんだんだから」

「オレにとっては「いいこと」でした」

「…へえ」

「アタマ爆発しそうなくらい嬉しくて幸せで…初めてのときも、今も、いつだってずっと」

「これはいいことです」

顔をあげた真っすぐな視線が居心地悪い。

知っている。

さいしょから。

憧憬と興味から始まったこの関係が、何回も体を重ねるうちにお前の目がどんどん恋情を帯びてきたことも。

「だって先輩、オレはあんたを」

「黙れよ」

その先を聞きたくなくて今度は自分から口付けた。

恋とか愛とか、そんな重くてキレイな感情を俺に与えるのはやめとけよ。

俺はお前と道が一時交錯した悪い先輩そのくらいが丁度いいんだ。