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⚠一部概念お借りしました


「ボルトくんと行きたいところがあるんです」

数日前、アズが俺にそう言った。俺は特に予定もなく暇だったのでその誘いに乗ることにした。

彼は付き合う前から思い出というものを大事にしている。色々な物をスクラップブックにして保管しているほどだ。いつもならデートの際も行き先を決めるのに今日に限ってはそうではない。そんな珍しいこともあるものかと思って出かけた。

目的地に着くとそこには小さな水族館があった。俺たちはチケットを買い館内へと入る。

館内はとても薄暗く、水槽の光だけが煌めいていた。まるで深海の中にいるような感覚になる。

しかし、客は少なくとても静かだった。俺たち以外にカップルがいるくらいだろうか。

「ここ、静かですよね。騒々しいのはあまり好きじゃなくて……」

アズがぽつりと言った。俺も静かに過ごすのは好きなので彼と来る場所としてはなかなか良い選択だと思った。

「ここ、よく来るのか?」

「いえ……実は初めてなんです」

どうやら偶然見つけたらしい。元々静かな場所を好み、人の少ないところに行きたいと思っている彼だがこの水族館に行くのは初めてだったようだ。

彼は水槽を一つ一つ丁寧に見て回っていた。そしてある場所で立ち止まると目を輝かせて水槽に見入っていた。

「うわぁ……綺麗……」

水槽の中には無数の光があった。それはクラゲだった。ゆらゆらと水槽の中を漂っている姿は幻想的であった。俺も思わず見入ってしまっていた。

「綺麗だよな」

アズの方を見ると彼はいつの間にかクラゲではなく俺をじっと見つめていた。

「ふふ……どっちが、ですか?」

アズはそう言って笑った。俺は少し照れくさくなって顔を背ける。その様子を見てアズはまたくすくすと笑った。

「このクラゲ、まるでボルトくんと僕のようですね」

彼は水槽をそっと撫でながらそう言った。俺も水槽に触れるとひんやりとした感覚が伝わってくる。

「どういう意味?」

俺がそう尋ねるとアズは微笑みながら答えた。

「だって、このクラゲってゆらゆらしてて…。自由で、心地良いでしょう?」

確かにそうだと思った。俺はこのゆらゆらした感じが心地良いと感じていた。少し目を離していたら消えてしまいそうな儚さも。

俺はそんなことを考えている間にアズはまた水槽を眺めていた。その姿はとても儚くて綺麗で、俺は思わず彼の手を取っていた。

「どうしました?」

アズは不思議そうな顔をして俺を見る。その瞳には俺の姿が映っていた。

「……なんでもない」

俺は恥ずかしくなって手を離すと顔を背けた。アズは特にそれを気にしていない様子で再びクラゲを見つめていた。

俺はアズの横顔をそっと見つめる。彼の黒い髪と青い瞳が水槽の光に照らされ、とても神秘的に輝いていた。


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