rりく、アル先
「ねぇ、ちょっといい?」
シャーレでの仕事中。
それは本当に偶然。アルを除いた便利屋のメンバーが勢ぞろいしていた時のこと。
とはいえ、最近は便利屋68と、呼称することは、私も含めて少なくなっていた。
なにせ、今や陸八魔ファミリーといえば文字通りの大家族。
勿論、アルは便利屋を一番にしているし、今も活動をするときは便利屋だけど、周囲からの認識では既に母体である便利屋というくくりはどうしても陸八魔ファミリーという組織と比較して小さすぎ周囲からは、陸八魔ファミリーの組織の一つとして数えられてしまっている。
「どーしたのせんせ?追加のお仕事?」
「いいよ?どうせ、暇だから」
「私たち、今は、アル様がいない間はお部屋で本を読んだり、近くお散歩したりくらいですからね……」
その一つの原因はこの三人の妊娠にあるだろう。
大きく膨らんだ三人のお腹は、キヴォトスでは見る機会の少ない妊婦。
明確に、三人が、子供を宿していると周囲に意識させるには十分すぎた。
学園都市故、基本的にはない。ということだからだろうか。ほかの生徒たちも、彼女たちを強く意識している。
彼女たちを攻撃することは、陸八魔の名に喧嘩を売る行為。……ということを除いても。
大きなおなかをした三人の近くでは、銃撃戦が止むほどに。
とはいえ、流石にそんな状態で便利屋としての仕事に出ることはできないということで事実上アル単独で今は仕事をこなしているそうだそうだ。
今日、三人が来てくれたのも、家でやることがなくなった、というのもきっと理由の一つだ。
だからこそ、三人とも私からの仕事の追加を待ってくれているみたい。
だけど……。
「んー、ちょっと、違うの」
何せ、今からするのは、生徒と、先生の話ではなく、“先輩”と”後輩”のお話。
「「「どんなプレイをしているのか?」」」
そう、ひどく下世話な話であった。
夜の性生活。
アルとのえっちで孕んじゃうくらいにシた、三人。
ずっと一緒にいる三人のえっち……同じハーレムの一員として、気にならないはずがない。
そんなことを私が言うと、三人は笑顔で自分の好きなシチュエーションを語り出す。
「ん……私はやっぱり、アルに抱きしめられながら抱きつぶされるのが一番好き……。アルちゃんの大きな体に包まれるとすごく安心するし、そのままふたなりで私の体を埋められると……すごく、興奮する」
そういって、恥じらいながら語るのは意外とスタンダードにエッチなことをしているカヨコ。
「わ、私はアル様のふたなりにご奉仕するのが好きで……今は負担がかかるから控えるように言われていますが、喉の奥までしっかりとアル様の物を加えこむと自分がアル様のものだっていうことが実感できて……」
恍惚とした表情で、口元をぬぐうハルカ。
「あー、もう、駄目だよ。二人ともそんな、ふつーのこといってたら♡先生はエッチの参考にしたいんだからもっとわかりやすいのを教えてあげないと」
しかし、ムツキはそんな二人にわかってないなーという風な反応を示す。
勿論、そんなことを言われれば、ハルカはともかくカヨコは、むっとした反応を示す。
「……じゃあ、ムツキはどうするの」
「くふふ~♡そんなの決まってるじゃん?アルちゃんのことを、たーくさん誘惑するの♡今日の下着えっちなのだよー♡とか、もう、私待ちきれな~い♡とか」
そしたら、アルちゃん、どうなると思う?
そんな、言葉に……。おそらくどうなるかを知っているカヨコとハルカさえも息をのむ。
「普段真摯なアルちゃんが。私たちのことなんて気にもせずに……壊れちゃうくらい激しく抱いてくれるの♡」
優しさも、甘さも全部消え去って、けだもののように蹂躙してくれるの。
……
「つ、遂に届いちゃった……」
そんなことがあったのが五日前。
ムツキの進めるが儘に買ってしまった、普段は手を出さないような、それこそ、下着の体を為していないといっていいほどの、薄い下着。
「……買っちゃったんだから、つけないと、だよね?」
そんな、誰にきかせるでもない言い訳をしながら、私は、身にまとっていた服を脱ぎ去ってつけてみる。
「うわっ……はずかしっ……こんなの、見せられないよ……」
顔が熱くなるのを感じる。
こんなの、誰がどう見たって、痴女だ。
普段、アル相手に自分がどういう振る舞いをしているかは理解しているけれど。それでも、超えちゃいけない一線が、……。
「……でも」
頭に反響する、ムツキの言葉。
壊れるくらいに、抱いてくれるアルの姿を想像する。
以前よりも背が伸びたアルは、自分からキスしようと背伸びしてもまだ届かないくらいに大きくて、包んでくれる腕はしっかりとしていて、カヨコの言っていた通り安心感を与えてくれる。
それが、自分を貪るために振るわれる。
取り払われた優しさの奥に秘められた、野獣の如き性欲。
「……ぁ、うそ!?」
気が付いた時には、遅かった。
私は、鏡に映った自分の写真をアルへと送ってしまっていた。
「どうしよう……、どうしよう!今なら、まだ」
ぴろん、っという、軽快な音が、三度。
連続して鳴り響く。
『先生、アルさんから、通知が来ています///』
知らせてくれるアロナの声は、少しだけ上ずっていて。
頬も、普段より赤らんでいる。
『……みないん、ですか?』
「……見る」
モモトークを起動して、アルから送られた文面を見る。
一番上は、住所の羅列。
そして、その下の二つの文章は、短く。簡潔であった。
「はやく」「きなさい」
生徒としてのおねがいではなく、それは、命令。
自分の物である、私という存在に下された、飼い主からの最優先事項。
酷い、とか、こんな文章で。
なんて、本当なら怒らないといけないのかもしれない。
でも、
「……あは、……アロナ、もう、私だめかもしれない」
私の下着は、そんなアル様の言葉に喜びを覚えて、じんわりと濡れていたのだった。