nナギサ編1
トリニティは、悪魔の手に落ちました。
始まりは、そう。
私たちが気が付くもっと前。
いや、あるいはそのころにはセイアさんは気が付いていたのかもしれません。
何せ彼女には見えていたのでしょうから。
今の未来が。
えぇ、ともかく、もっと前。
便利屋68。もとい、彼女が、トリニティへと訪れるようになったころから。
計画、というほどの物ではありません。
彼女はただ、いつも通り振舞えばよかったのです。
いつも通り、ドタバタな依頼を解決し、生徒の悩みを解決して。
報酬と、一夜を共にする。
もしも、先生が来たのがもっと早ければ、彼女の手にかかる前に、悩みを解決していったのでしょう。
……いえ。それもあまり意味のないことでしょう。
あの方も、今や私たちの同類なのですから。
そして、十分な生徒が、……それこそ、気が付かぬ間にティーパーティの生徒たちの中にすら彼女の物となった少女が現れ出したころ、ゲヘナ陥落の知らせを私たちが受け取ったのです。
そう、そのころにはもう、手遅れでした。
後は簡単。
陸八魔アルがティーパーティーの最高戦力であるミカさんを抑えて、裏切り者たちが私を押さえつければ、私たちは一網打尽でした。
そこからは、もう、トリニティが堕ちていくのに、そう長い時間はかかりませんでした。
正義実現委員会も、最後まで抵抗をつづけましたが、ツルギさんとハスミさんが堕ちてしまえば、もうおしまい
シスターフッドも、救護騎士団も、トリニティにある部活のほとんども、あっさりと彼女の欲望に飲み込まれて行きました……。
そして、すべてが彼女の物になったころ。
私はと言えば……。
「……おかえりなさいませ、ご主人様」
「えぇ、お迎えご苦労ね。ナギサ」
私が身にまとうのは、メイド服。
ぼろではないものの、お嬢様だった以前の服装からしてみれば、明らかに下の者の服を着せられていました。