kかいてるうちにちょっと不穏になったアルヒナ
「キキキ、さぁ、どうする……?陸八魔アル」
それは、突然の出来事であった。
互いに仕事がひと段落付いた二人。
……というには、便利屋メンバーもしっかりそろっていたのだが。
とにかく、りっちゃんと私がのんびりと落ち着いた時間を過ごしていた時だ。
唐突に現れた万魔殿の議長羽沼マコトは、お前たちが恋人の証明をして見せろと私たちに迫ってきた。
「風紀委員もゲヘナの部活である以上ある程度の監査はある……。当然、風紀委員が犯罪者として扱っている相手と親密であるというのはよろしくない」
……彼女にしては、珍しく、ごもっともな意見でだった。
その場にいる誰もが思ったことだろう。
実際、私たちと彼女たちの間である程度のなぁなぁな関係が築けているのは、便利屋が基本ゲヘナ外での活動が主。
風紀とかち合うことも少なく、依頼、という前提があるため、風紀全体のヘイトの多くは彼らの雇い主に向かうことが多いためである。
だが、それはおいても、くうちゃんである、私から見れば、家族同然の彼女たちが実際に風紀委員の空崎ヒナとしては、敵であるというのは間違いない。
「とはいえ、こちらも別段、同性間不純交友を咎めたいわけじゃない。風紀委員長も仕事として、便利屋との敵対をしているのはこちらも把握している。
私も、危惧しているのはお前たちの間に金の流れなどがないかどうかだ。だから、そう、お前たちには証明してほしいだけだ」
「証明?」
「そう、私たちは健全なお付き合いをしている一学生ですと。このマコト様の前で。恋人同士というのであれば、できるだろう?」
後ろから、ムツキの、私たちは認めてない、という声が出るが、それは、カヨコがどうどうと諫める。
マコトの顔は、明らかにできるはずもあるまいという表情だ。
SNSに上げられた私たちの写真、見ていないのだろうか。
「ねぇ、りっちゃ……」
私が、もう一度と、提案をする、数秒前。
私の体は、彼女の大人びた体に抱き寄せられ、唇が触れる。
視界の端で、マコトと、ムツキが固まる姿が見える、すると、思っていなかったのだろうか。
……それで、終わり。そうおもって、離れようとして、私は、りっちゃんに、頭を抑えられてることに気が付く。
上から抑えるのではなく、腕で、しっかりと抱き留められて、離れられない。
ぬるり、と、口の中に、彼女の舌が入ってくる感覚。
思わず、目線を合わせれば……。
本気の表情のりっちゃん。
この前の仕返し、なんていって、ちょっとだけ意地悪しようとおもったのも吹き飛んだ。
私も、抱き着いて、逃がさない。負けじと、舌を絡めて、彼女を求める。
視線をもう一度向ければ、そこには意外なことに、顔を抑えて真っ赤になっているマコト。
本当、一体、どのていどまでを要求するつもりだったのか。
そしてもう一つ、……私が家族だと思ってる三人に目を向ける。
突き刺さるのは、無数の感情。
敵意も、好意もごちゃ混ぜになった視線が私へと突き刺さる。
けれど、それも全部受け止めて、私は、りっちゃん。……アルから、唇を離す。
「……ご馳走様」
「それ、私のセリフじゃないの?」
私が、誰に向けていったのかを、りっちゃんは、気が付いていなかった。