XCUSION 翼対策
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「お前ら ちょっと話がある」
カランとグラスの中で氷が子気味の良い音が鳴らした
「黒崎一護に関連したことだが『虎屋翼』が随分とデカい障害になりそうだ」
銀城をしてデカいと言うその人物に興味をまず持ったのは月島だった
「物語をひっくり返しかねない登場人物なのかい 銀城?」
肯定の意として銀城は頷いた後にグラスの中のウイスキーを一気に飲み干した
「ざっと調べただけで俺たちXCUSIONにとって不都合極まりない事が羅列されてたよ 鋭い勘といえる『第六感』 奴の完現術である『MIND SWEET』は対象の肉体の操作権を奪う...こちらの事情を話せと言われればそれを防げない 月島の『ブック・オブ・ジ・エンド』と競合した際にどうなるのかも未知数だ」
「それで...どうするんですか?その人物を」
次に口を開いていたのはギリコだった マスターとしての作業を止め話を促す
銀城は空になったグラスをゆっくりと置いた また氷は音を鳴らす
計画にとって虎屋翼は一切助けにならず多少のリスクを背負ってでも確実に排除すべきだと銀城は断定した
「それで...誰が殺すのさ タスクって奴」
携帯ゲーム機を一度止め銀城を向き直って雪緒が問う
「そうだな...まず雪緒はダメだ タスクって奴を自身の作った空間に入れた場合に『MIND SWEET』がどう作用するか分からない
次にジャッキーだが…タスクはどうやら相当足が速いらしい 持続力は無いが一撃で行動を縛られる以上「汚れるほどに強くなる」という特性上相性も悪い」
無論一度陣営を離れる月島と銀城はそれらに参加するのはリスクが大きすぎる 最悪の場合の対処としておいておきはするが
「となると 私とリルカさんが残りますね...」
「…殺すのね わかったわよ」
「作戦としてはこうだ ギリコが焼く リルカが固い金庫にでもねじ込む そして捨てる」
シンプルだ ただ単に殺人なのだから言うだけなら実際シンプルではあるのだ
「聞いただけじゃ"ただの人間"のやり口ね」
「時の神との契約内容を吟味しておかなくてはなりませんね 出なければ焼かれるのは私ばかりになってしまうかもしれません」
リルカとギリコの様子を見た後に銀城は更に付け加えた
「そしてもう一つ厄介なのが行動パターンがあまりにも読めない点だ...外にいる時間も不定期で木の棒倒して道を選んでいるから確実に先回りするのは無理だ
だが石田雨竜を俺たち二人が斬った際に恐らく仇討ちに出てくる そこをワザとバレて誘導して作戦を決行する」
XCUSIONはこれから行う凶行に胸の内で様々な考えを巡らせながら時がくるのを待っていた