7・飢え渇く身体

7・飢え渇く身体


27日目

「フルルドリス姉さま……。お加減はいかがですか……?皆様心配しておられます……」

「……だ、大丈夫だ……。んんっ……。少し風邪をこじらせ……っただけだから……。しばら、くぅっ……すれば治る……」

昨日からフルルドリスは自室に籠ってあまり外に出なくなっていた。親しいものであるアディンやテオ、エクレシアでさえも入室を拒む。とはいえ食事などは部屋に配給させているものをとっているようで、エクレシア以外の者は、きっと数日後に迫った侯爵領での教導の件の準備での疲労のためだろうとあたりをつけてさほど心配していなかった。だが実際に部屋の中で彼女がおこなっていたのは、静養とは程遠いものである。

「ふうぅ……んっ!はっ、……ああっ!」

くちゅくちゅと水音が響く。フルルドリスは、一日中部屋の中で自らを慰めていた。左手で豊かな胸を揉み、頂点の粒を舌で舐める。右手の細い指は秘裂に潜り込み媚肉を嬲る。彼女のベッドのシーツはぐっしょりと濡れ、むんとした女の匂いで部屋を満たしていた。

「んっ—————!!」

淫核を指で押しつぶすと、腰を浮かせて全身をのけぞらせる。水気の多い身体は絶頂と共に潮を吹き、シーツに新たな染みをつくった。だが、何度絶頂を繰り返しても彼女は満たされることはない。じんじんと疼く下腹部を抑え、フルルドリスは歯噛みする。

あの日以来、最後の言葉の通り侯爵からの呼び出しはぱったりと途絶えていた。はじめの数日はようやく解放されたと思ってうれしく思ったが、体は日ごとに快楽を求めて彼女を突き動かすようになってしまった。半月前はあれほど嫌がっていたはずなのに、今は侯爵を求めて一人自らを慰めている。

双丘を大きな手で包まれ、頂点を弄ばれたい。あの剛直で奥深くまで貫かれたい。敏感な場所をカリで抉られたい。舌を絡めて呼吸すら奪われたい。

侯爵との交わりで得たいくつもの快感の思い出が彼女の中で渦巻く。だが、彼女の身体が最も望んでいるのは、最後の思い出だった。

最奥に受けたあのねばりつく熱。じくじくと広がる熱とそれによって性器を中心としてまじりあうような充足感のある絶頂。膣内射精の快感は、彼女の体に大きな楔となって残っている。

何度も絶頂を繰り返したフルルドリスは、部屋に差し込んだ夕日を見て意を決したように立ち上がった。


その日の夜。侯爵の部屋のノックが叩かれる。部屋の主が扉を開けると、そこにはローブを着て思いつめたように俯いているフルルドリスがいた。


「帰りなさい」

侯爵はすげない言葉をかけるが、フルルドリスは首をふると自らの服に手をかけた。一枚一枚衣を落としていくと、はじめは慌てて制止しようとしていた侯爵もだんだんと言葉を失っていく。

最後の一枚、ショーツを下ろすととろりとした蜜が糸をひき、甘い香りが漂った。フルルドリスは一糸まとわぬ裸体を侯爵に晒す。彼女の身体はかつての美しさはそのままに、息を呑むような艶やかさを纏っている。その媚態に侯爵は目を奪われ呆然としており、彼女が体に抱きつくまで動くことができなかった。

「離れ———」「嫌です……」

拒絶の言葉を遮ると潤んだ目で侯爵を見つめる。縋りつくように絡みつく肢体は服越しであっても柔らかな感触を伝えた。

「ふうぅう……。……身体が疼いて収まらないのです」

密着して男の体を感じたフルルドリスは、うっとりと熱い吐息を漏らすと、侯爵に耳打ちする。この疼きを鎮めることができるのは侯爵のみだと。このように卑しい身体にしたのは誰のせいだと。絡みつく柔らかな裸体と立ち昇る芳香と熱い吐息。脅迫にも似たささやきに、やがて侯爵は観念したように息をついた。

何日もの間触れ合った末に、本当に魅せられていたのは誰だったのだろうか。


「ふぅ……、随分と痛めつけてしまったね」

侯爵はフルルドリスを抱いて椅子に座ると、両方の肘掛けに足をかけ股を開かせる。彼女の秘裂は指で何度も擦りたてられた結果、真っ赤に充血した媚肉が覗き、ひりひりとした痛みで彼女を苛んでいた。侯爵は持っていた軟膏を指でたっぷりと掬い取ると、彼女の秘裂に塗り込んでいく。

「ん……っ」

フルルドリスはひやりとした膏薬が中に入り込む感触にぶるっと震えるが、すぐに待ちわびた愛撫を受ける悦びにうっとりと身を任せる。女陰を指で撫でながら、侯爵は口を開く。

「私も腹をくくろう。君が平穏に暮らせるよう体を慣らすことに協力するよ。……だが、しばらくは駄目だ」

「———っ!ですが……」

まだ待つなど無理だと声を荒げるフルルドリスだったが、侯爵の指が敏感な肉芽と乳頭を転がすと、可愛らしい嬌声をあげて口をつぐむ。

「私の首都での仕事はもうすぐ終わり、協会領に戻ることになる。君も一緒に来て、兵らの教導の任にあたるのは決まっている。それまでの辛抱だ。……私も準備したいことがある」

だから、それまではこれで我慢しなさい。そう言うと、侯爵はフルルドリスの体を手で愛撫する。フルルドリスもまた、久しくなかった体をいたわるような優しい性感を受け入れていく。2人はベッドに入ると舌を絡めて抱き合いながら、久しくなかった静かで温かい眠りにつくのだった。

Report Page