7人目 変態……ではなく、変態船大工

7人目 変態……ではなく、変態船大工



October 26, 2022




おれの名はカティ・フラム……って言う名前はもう捨てちまったからフランキーと呼んでくれ、宝樹アダムで作った千の海の越える夢の船、麦わらの一味の海賊船サウザンド・サニー号を作ったスゥーパーな船大工だ。

おれの作った船に船大工として乗り込み、その船で世界の果て「ラフテル」まで行くこと、それがおれの夢、まさか海賊に捨てられたおれが、海賊になるなんて不思議な縁だが、海賊人生ってのも悪かぁねぇ。


この船のクルーたちは肝の据わったやつらばかりだ、そしておれの作るものに興奮してくれる男のロマンっていうのを分かっているいーい奴らだ、なぜか女どもには不評だがな。

だが、その女どもの中には男のロマンを分かってくれるやつもいる。

その男のロマンが分かる、可愛い妹分の不思議な動く人形ウタについて語ろうじゃねぇか、アゥッ!


ウタっていうのはルフィがガキの頃から一緒にいるという一味の最古参のぬいぐるみだ。

どんな原理で動いているのか、このおれをもってしても理解することの出来ない。特殊な技術なのか?それともクラバウターマン的な精霊のようなものなのか?分かっているのは、よく分からない存在ってことだ。


ウタは、おれがいつかぶん殴ってやりてぇと思っていた政府の役人をボッコボコにしてくれた、まあおれも~象で思いっきり下敷きにしてやったけどな!その時にはあいつもグッ!と指は立ててねぇが腕を突き出してきて、なかなか気が合いそうな奴だと思ったものだ。

シカゴリラことチョッパーと一緒に冷蔵庫をあさっていた時、野菜ジュースやらスポーツドリンクなどコーラだっつってんのに別の飲み物を取り出してる中、カラシやらワサビやらデスソースやらを冷蔵庫から出して背中の小さなリュックに詰め込んでなにやってるんだと思ったが、ちゃーんと役に立ってやがると感心したものだ。

ただ、スパンダをぶっ飛ばした強い衝撃を放つ不思議な貝にカンッガンッ!ガンッ!!とハンマーを振り下ろすウタの姿は、昔ココロのババァが暑い夏の夜、ろうそく片手におれとバカバーグに聞かせてきた怪談話、権力者によって無残に殺された子供の魂が宿った呪いの人形が、その権力者の顔が載った新聞の切り抜きを貼りつけた藁人形に、ぶっとい杭をトンカチで打ち込んで呪いをかけるというという子供ころに想像したシーンにそっくりで、おれは少しゾッと寒気がしたのは内緒だ。なぜかココロのハバァの「んがががっ!」という笑い声まで聴こえてくる……ホラーだぜ。


***


仲間になってまだ日が浅い時、男達の憧れのムキムキロボボディーに改造しようとしたこともあった。

体の軽さを生かしたエンジンジェット、足場の悪いところを戦車のように進めるラジコン等々色々と仕込もうとしたが「ギィィィ!!」と拒否されたし、ナミには「やめんかァァ!!」とあの細腕からは想像できないパンチで殴られこっ酷く怒られた、ロビンからは「やめて、ウタの魅力がなくなるわ」おれのセンスを疑われる言葉を言われた。おれ様のセンスにいつもザンバイ達は「さっすがアニキ~!」って絶賛してくれたのに何故だ。

それから暫くは、おれがウタの後ろに立つとウタは脱兎の勢いで逃げ出すようになった。

ルフィの麦わら帽子に隠れたり、ゾロの腹巻に頭から突っ込んだりとまあ隠れ方のバリエーションが豊富だ。まあ今にして思うと、ウタの後ろに立って5回に1回は「……こういう兵器をつけるのもアリか」って思ってたからウタの危機察知能力は当たっていたのかもしれない。改造はしないと男の宣言をしてからも、そろ~っと遠巻きに他のメンバーがいるのを確認してから姿を見せるのは少しショックだったがな。

それにウタを改造しようとしたときの女どもの怒り方はシャレにならねェ、ナミもロビンも恐ろしい女だ、特にロビンは……うっ!!思い出しただけでスーパーなおれのオレが……ちゃんとついてるよな??もぎ取られてねェよな??おれのおれェェ!!


***


とある日のこと、おれとウソップの城でもある兵器開発工房で、おれはある作戦をこいつらと一緒に考えていた。


「おいおい~フ、フランキー……こ、これは!?めっちゃすげぇじゃねぇかぁ~~!!」

「お、おぉ~~!!これの名前はなんだ~!!おしえてくれよ~~!!」

「キィ~♪」


ウソップ、チョッパー、そして改造未遂事件があってから、おれと2人きりにするのを禁じられたウタが、ウソップのオーバーオールの胸ポケットから顔を覗かせながらおれの発案したナンバリングタイトル「計画15(タクティクス・フィフティーン)」を見て目を三者三様にキラキラとさせて発案者のおれに問いかけた。


「アゥッ!これはおれ一人では完成しねぇ……おれたち一人一人の力を合わせることが必要なんだ、胴体はこのスーパーなおれ様!!おれの足を支えるゾロとグルグル!!そして、ライトアームには長距離狙撃砲のウソップ!レフトアームには麦わらの変幻自在攻守に優れたゴム攻撃だ!」

「おう!ライトアームは任せろ!!」

「頭部は敵の弱点を見抜くブレーンとして……お前だチョッパー!」

「お、おれがブレインっ……!!おれ頑張るぞ~~!!」

「キ!キィ!!」

「まあまてウタ……ちゃーんとおめーの役目もある、お前はおれの胸元のポジションだ!!今のウソップのポケットに入ってるみてぇにな!この形態唯一と言っていい弱点……おれは両手両足が使えなくなる、そ・こ・で・だ!!ウタの音波攻撃をおれの胴体から発することでその弱点はなくなる!!」

「「「おほぉ~~~~!!(キィ~~~~!!)」」」

「いいか?オメーら、このスーパーな作戦名をこう命名する!!


パイレーツドッキング6 巨大ロボ戦士 ビッグ|皇帝《エンペラー》だ!ン~~~~~スゥ~~パァ~~!!」


「「「スーパァー!!(キ~キィ~!)」」」


おれの決めポーズを一緒にとって、いつこれをお披露目できるかとワクワクしながらオレたちは練習を重ねた。つま先までしっかりと伸ばして見栄えをよくしようと、バランス感覚を、メンバーの呼吸を合わせる……そして、いつの日かこの計画を実行に移すその日をおれたちは夢見ていたんだ。


ガイコツのそして麦わら達の影を取り戻すためにスリラーバーグでのオーズとの戦闘、あの計画を実行する時がやってきた。その時はルフィが居なかったため、ロビンにドッキングするように言ったがやつはおれ達の努力の日々も知らずにこう言って断りやがった。


「嫌よ」

「「「「……へ(キ)??」」」」

「人として恥ずかしいわ」


あの時の蔑むような眼は一生忘れられねぇ、ガーンッ!!とショックで呆然とするおれ達をよそにウタが必死で何かアピールするとロビンはさらに言葉を続けた。


「人として恥ずかしいわ」

「「「2回も言われたー!!」」」

「それとウタ、貴女は女の子でしょう?」

「キ、キィ……」

「レディとして……とても、とても恥ずかしいわよ?」

「キィッ!?」


人としてよりも、女としての部分にウタはかなりショックを受けていたようだった。この後に、ルフィとブルックを加えた|計画15《タクティクスフィフティーン》・改、パイレーツドッキング7巨大ロボ戦士パーフェクト・ビッグ皇帝もロビンには「二度と誘わないでって言ったでしょ」と言われナミには呆れられた。

「何が巨大ロボよ、ただの組体操じゃない人として恥ずかしいやつの、ウタもやめなさい馬鹿がうつるわよ」

「キ!?」


組体操じゃねぇー!!ドッキングだぁ!!ウタもショック受けんなよ!!



***


一味で一番小さい仲間のウタは、一味が崩壊した日から2年間シャッキーに鍛えてもらいながら、一味の家でもあるサニー号をハチやデュバル、そしてある戦士と一緒に守っていた。

大工道具を持って、シャッキーから教えてもらった場所に行くとウタと思いがけない人物がそこにいた。


「……まっていた」

「おめぇっ、そこで何を!」

「麦わらの一味……サイボーグフランキーだな」

「!!キィ~」

「っウタおめーなんでそいつと一緒に??」

「…………任務、完了だ…………おまえも、元気でな」

「キィ……」


ボロボロで所々機械がむき出しの体を軋ませながら、くまは肩に乗せていたウタを優しく地面へと下ろして去っていった。サニー号には傷一つなかった。甲板の芝生も、船内も汚れや埃もなく、きちんとコーラ樽もそろっていた。

ウタをおれの肩に乗せながら軽く船内のチェックを終える、ウタが「どう?どう?大丈夫??」と言わんばかりにキィキィと不安そうに鳴いた、そんなウタにおれはサングラスを外しながらグッと親指を立ててやる。


「アゥ!スーパーいい仕事してるぜウタ!!これならすぐにでも新世界の海へ行けるぜ!!サニーを守ってくれてありがとな!長い留守番ご苦労だったぜ!!」

「キィ♪」


そうウタは、なにがどうしてそうなったのか2年間の間、くまと共にサニー号を守ってくれたのだ、レイリーとシャッキー曰く将校クラスの敵が来たときはウタをシャッキーたちの所まで飛ばしてやるなど、ウタを危険な目に合わせないようにも配慮していたというではないか。

錆どころか傷一つもなく、誇りも溜まっていない綺麗なサニーを見て、おれはくまが去って行った方向を改めて見つめた、もう奴の姿はなかったが、いつかやつの本心を聞いてみたいものだ。


余談だが、島に一番最初についたのはゾロだったらしいがサニー号に一人で辿り着くことができずおれがサニー号一番乗りだったことを報告しておく、ゾロ……お前、ウタが迎えに行くまでBARで待ってろよ……このファンタジスタMr迷子がよォ。


***



2年の時を経て再開したおれ達の冒険、おれ達はトラ男の言う作戦を遂行するため、工場の破壊チームとしてドレスローザへと降り立った。


そのドレスローザに入っておれたちは大層驚いた、いたるところにオモチャがいたからだ。

人間と楽しそうに過ごしているその姿、人間のように店で働いているその姿、人間のように動き喋り日常を送っているその姿。喋れるということ以外、おれ達の仲間のウタのようだと思った。


その肝心のウタ自身は、いつもの定位置であるルフィの肩に乗ってどこか怯えていた、その様子が気になったがおれ達は情報収集のために酒場に行った。そして刀を妖精に盗まれて離脱したゾロ、それを追いかけるサンジ、さらにそれを追いかける錦えもん、追いかけようとするルフィを掴んだはいいが、あっという間におれとルフィとウタだけになった。

この|面子《キャスト》では、かつてウォーターセブンの裏の顔と呼ばれたこのおれ様がしっかりしねぇとと思い、とりあえず明らかに堅気じゃねえチンピラを占めある情報を得た。

その情報をもとに、ルフィの兄貴の能力を宿した悪魔の実を手に入れるため、ルフィはコロシアムへ行くことになった。


「じゃあ!行ってくる!」

「アウッ!しっかりな!」

「キィ……」

「ウタ!心配すんなって!エースのメラメラの実はおれが絶対に手に入れる!フランキーウタを頼む!」

「スーパー任せろ!」

「あっ!改造はすんなよ!」

「わぁってるよ!」

「キ……」


コロシアム前で衛兵相手に大立ち回りをしていた、じつはクソ真面目そうな不思議な片足のオモチャの兵隊と出会い、ルフィには変装中であること言い聞かせルーシーと名乗らせ送り出した。

コロシアムの観覧席で、黒ひげ海賊団の一味の一人が参加していた。なかなかのパワーだ、ルフィが遅れをとるとは思わねェが一筋縄じゃいかねぇ面子がゴロゴロといそうだったが、おれはおれの仕事をするまでと思い、工場破壊に行くぞとウタとともにコロシアムから移動しようかと思ったがオモチャに兵隊に止められた、そして物騒な話は別の場所でと言われ奴の案内のもと花畑へと向かった。


オモチャの兵隊に連れていかれた花畑の地下、小さな人間たち小人族が集まっていた。

そのちっぽけなアイツらから聞いた、この国の貧しくもあたたかな歴史、そしてドフラミンゴによってもたらされた悲劇。

一見町で笑顔で楽しそうにしているオモチャ達に隠された、涙なしには語れない真実。


そんなことを聞かされたら、見捨てることなんてできない。工場を破壊してとっとおさらば??ドフラミンゴにはカイドウをぶつける??確かにそれでドフラミンゴはおしまいだろう、だが今、今日、戦いを決めたこいつらはどうなる??それに、よくよく聞けばおれ達のせいで天国から地獄に落とされたようなものだ……いや、それはトラ男せいでもあるがなんか……とりあえず、ごめん。


船長からも戦闘許可をもらい意気込むおれ。そんな時にウソップが顔を青くしていて、ビビってんのかと思ったら「そうじゃねぇ!!び、ビビってねーよ!」と言った、おめーも男じゃねーかと思ったらウソップが気づいた事実を叫んだ。

その言葉に思わずおれの肩に乗っていたウタを見た。


おれ達の一番小さな仲間までもすでにオモチャの呪いに??

そうだ、どうしてすぐに気づかなかった?人間と共に友人のように家族のような存在がおれ達にもいるってことに。


ウタ、おめぇ一体どれだけ苦しい日々を過ごしてきたんだ?


おれは怒りと悔しやと悲しみで涙で前が見えねよぉぉ~ん!だがスゥーパァー安心しろい!

必ずおまえを元の人間バディ~にもどしてやっからよ!

お前が人間に戻れたら、やることが沢山あるなぁ、お前は女だから今のぬいぐるみ用のベッドじゃなくてちゃんとしたベッドの新調だろ?それとお前専用の楽器だな、ブルックにも相談して作んねえとな、作曲机も今の小さいサイズじゃだめだな、おれがお前にピッタリなの作ってやる。

そんで、お前の声で今までの曲を、今度はお前自身の声で歌って聞かせてくれよ、それを聞きながら飲むコーラとハンバーガーは格別だろうなぁ。


アゥッ!その為にも、シュガーおったまげパニック作戦っつう、スーパーイカした作戦を成功させて、オモチャ達の呪いも小人たちの仲間も皆みんな取り戻してやるぜぇ!このみんなのアニキに任せろぃっ、ん~~スゥーパァーー!!


そんで今度は真・|計画15《タクティクスフィフティーン》パイレーツドッキング8巨大ロボ戦士アルティメット・ビッグ皇帝を完成させようぜっ!






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