2人目航海士とホビウタ

2人目航海士とホビウタ


私はナミ、お金とミカンが大好きな麦わらの一味の航海士。

私たちの船には正直ちゃんとした人間は少ない。

船長はゴム人間、喋るトナカイ、骨にロボ、そして動く人形のウタという不思議な仲間が沢山いる。

その中でもウタと言う人形はとても不思議な人形なの。

初めて会った時は、海ではぐれたルフィを追いかけてきたゾロの肩に乗っていた。

魔獣と呼ばれた海賊狩りが人形を?って思ったけど、あのファンタジスタな迷子っぷりを知った今ではウタが居たからこそ合流できたのだと思っている、本当にファインプレイよウタ。と話が脱線したわね、ウタは人形とは思ないほど、馬鹿どもと違ってちゃんとした知識を持っていた。

バギーが支配していたオレンジの町を出航してから暫くして航路を確認しようとした時も……

「ねえ、次の島のことだけどアテはあるの?ここからだと……この辺の大きな島なら船も手に入るかもしれないけど」


私が|東の海《イーストブルー》の海図を広げると興味を持ってやってきたのはウタだけだった。他の男二人はあろうことか海賊というか海を渡る者としてありえない発言をかましてくれた。


「「海図の見方しらねぇ」」

「あんた達航海術持ってないの!?馬鹿なの死ぬの!?せめて海図くらい読めるようになりなさいよっ!!」

「うっせぇなぁ、お前らが航海術持ってんならいいだろうが、それにこんなことで死ぬか」

「だいじょーぶだいじょーぶ!ウタが航海術持ってたからさ!」

『キィ……』

「え!?ウタそんなこともできるの?……あ、この島は特に何もない無人島なの、だからスルーしようかと……ん?あっちに何かあるの……ああ、そういうことね」


ウタはルフィとゾロの方を指し示した、そこには早々に食料を空にする勢いで食べるルフィとそれを止めるどころか一緒になって食べてるゾロの姿が。なるほどね、次の島に行く前に餓死するわ、コレ。


「まずはこの島で食料の調達しましょうか、それから…ルフィ!あんたの麦わら帽子直してあげる!それとウタ、貴女も少し解れちゃってるから治してあげるわね」

「お?サンキューナミ!」

『キ!』

嬉しそうにピョンピョン跳ねるウタを微笑ましく思いながら、本当に、細かいことにも気が付く、よくできた人形だと思っていたの。


**

「ウタが……本当は人間??」


ドレスローザにいるフランキーたちからの連絡で町には沢山の動くオモチャがいたことを知った。

愛と情熱とオモチャの国ドレスローザ』そう世間から言われているその島のことを聞いたとき、私たちはずっと一味の仲間にいたこの動く不思議な人形の謎が解けたかと思った、ここが彼女の故郷でそういう種族なのだと。

|偉大なる航路《グランドライン》を進んでも、ウタのように動く人形には出会えなかった。ウソップがアラバスタでの戦いで敵に銃のような犬がいて、なんと無機物に悪魔の実を食べさせる技術があると知ったそうだ。

それでウタも人形が悪魔の実を食べたのだと、ルフィに引っ付いてるから一緒になって海に落ちたときも、なぜかプカプカと浮き上がらずブクブクと沈んでいって動かない理由が解けたと思った。ウタが好きだからウタウタの実とか?なんてウソップ達とウタが食べた実の予想をしたりもした。



キレイ好きな人形だと思った。

ボロボロに汚れた時に一度洗濯機に入れたら気に入ったのかあんまりにも、汚ければ積極的に入ろうとさえするのだ。

でも、人形とは言え仲間が毎回洗濯機に入るのは何か嫌だったから、ウタと一緒に毎日お風呂に入っていた。

子供の頃は余裕がなくてノジコとお人形遊びをすることはなく、アーロンの一味に入ってからは、ずっと気を張り詰める生活だったからなおさらだ。だからウタを縫ったりウタをオシャレさせるのは少し、いやかなり嬉しかった。まるで子供のころにできなかったことをしているようで、それは多分ロビンも一緒だった。ロビンが仲間になりたての頃、ロビンがウタに向ける視線が心なしかキラキラしていて楽しそうだったから私は割とすぐにロビンのことを仲間として受け入れられた。サニー号に乗り込んでからは3人でお風呂に入るのが日課になった。

ウタのことはドライヤーで乾かすことが殆どだったけど、気候が安定していれば日干しする。その時の洗濯バサミでとめられてプラプラと揺れるウタの、なんともいえない視線が辛かったが生乾きは危険なので許して欲しい。





喋りはしないし機械が入っている訳でもないのにオルゴールのような音色が出せる。

その音色にリトルガーデンでケスチアに罹った時には辛いのを和らげようとしてくれたのかリラックスできる曲を歌ってくれた。ギャーギャーと騒ぐあいつらをぶん殴ってくれたり、ビビと一緒に励ましてくれたりと私のことをとても心配してくれた。

ウタはおしゃれな女の子だ。

一緒にキラキラした宝石を見たり、お風呂に入ったり服を見るのも好きで一緒にショッピングにも付き合ってもらった。

特にケイミ―のペットのヒトデのパッパグがデザイナーをしているというクリミナル本店ではデザインが気に入ったのか髪が終始ピョコピョコ動いていたっけ。

ウタは可愛らしい女の子が喜びそうな見た目の姿からは想像できなほどアグレッシブだ。まあルフィと10年以上の付き合いなら仕方ないのかもしれない、ルフィが言うには幼少期はジャングルのような場所でのサバイバル生活をしていたというから逞しくなきゃやっていけなかったのだろう。

様々な効果のある歌で、普段は柔らかなその手足を硬化させて、硬い岩も破壊できるその攻撃。

やんちゃ過ぎて服は汚れるわ、ルフィの無茶に突き合わされて腕がもげそうになることも多々ある。

一番最初に出会った時にもウタを治してからは、大きな冒険の後は解れや汚れがないか確認するのが常だった。ウソップやロビンが仲間になってからはさらにオシャレな服を作ったり縫い直してあげあたりと手先が器用なメンバーでウタを治していた、ただしフランキーは余計なものをつけようとするから殴ったが。ウソップにデザインを考えてもらって作ったジャケットは本当に喜んでくれてお気に入りなのかずっと着ていてくれる。


一味の最古参の仲間、人形のウタ。

ウソップ達が聞いたところ少なくとも12年以上の間オモチャだったっていうじゃない。

私が生きていた半分以上をオモチャの姿で過ごしていた。

ウタと一緒に航海してきたから分かる。

ウタは食べない、眠らない。

疲労は溜まるのか疲れて動けないことはあるがそれでも眠った様子はなかった、それを12年以上。

ルフィと一緒にはしゃいだり、ゾロの特訓の器具に上にのって上下に揺れながら海を眺める姿、ウソップ工房でウソップの作る発明品に喜ぶ姿、サンジ君の作るご飯をウソップとフランキーが共同開発した小さなホワイトボードに『おいしそう!』「かわいい!!」と絶賛するその姿、チョッパーと一緒にお医者さん、看護師さんごっこをする姿、ロビンと一緒にお花をお世話する姿、フランキーにバズーカだのなんだの改造されそうになって逃げまわる姿、ブルックと一緒に音楽を楽しむ姿が浮かび、思わず涙が出る。

だけどゴメンねウタ。ドレスローザへと戻って一緒に戦うことは叶わない。

私は臆病で怖がりで、か弱くてでもやる時はやる女だけど(これを言うとゾロやウソップからはブーイングが来るが)、合流してトラ男を取り戻したい気持ちも、小人の兵隊たちに加勢したい気持ちもあるが、一番はウタを人間に戻したいという気持ちが強かった。

だけど、このロクデナシ人でなし屑野郎のシーザーを、幼いモモちゃんをトラ男が命がけで守ったカードをみすみす奪われに行く訳にもいかない。


そうこうしている間にビッグマムの船が私たちに迫ってきた、船長の決定で私たちは次の目的地に進むことに決めた。

でもね、ウタ安心して。

アンタなら分かってると思うけど絶対に私たちの船長がドフラミンゴをぶっ飛ばしてくれるから。

ウタ、人間に戻ったら一緒に宴をしましょう、貴女の本当の歌声を聞かせて欲しいな。


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