2ヵ月後
「久しぶりだな、ゼフ、この2ヵ月元気にしていたかな?」
『…あぁ、おかげさまでな
四六時中野郎の視線くらってのと、このチビナスの相手させられてること以外は、すこぶる快適だったよ』
『おい、チビナスの相手ってどういうことだクソジジイ!!
おれはお前の手伝いしてやろうと『フンッ!』---イッッ!?』
「そうか、なら結構
では早速、成果を報告してもらおうか」
ゼフとの会合から、早二ヵ月
海軍との交渉は少々難儀したものの、無事乗り越えることが出来た
というのも、この指名手配凍結制度、作られてから実際に使用されたことが殆どない
あっても片手で数えられる程度
それだけこの制度を利用する難易度は高いという事であり、その前例に少なさから必要書類の作成にもだいぶ苦労した
専門の弁護士を雇い、綿密に打ち合わせをしたうえで海軍との交渉に臨んだ
が、前例が少ないというのは海軍側にも言えたようで、対応してくれた事務官の海兵君もこの案件にどう対応したらいいかわからず、世界政府の法典を引っ張り出し、態々海軍本部の専門部署にまで確認を取ってくれたらしい
おかげで最初の見立てでは1ヵ月程度で終わると思っていた交渉も2ヵ月たっぷりかかってしまった
ちなみに今日が期日で、海軍と我々、双方合意で話が付いたのが昨日のこと
本当にギリギリ、だが、おかげで精神的優位に立っていたこちら側が契約不履行、なんて無様を晒さずに済んだわけだが
しかし、交渉に想定以上に時間がかかったため、今回はゼフとサンジ君のいる島に行くことはできず、映像電伝虫越しの面談という形に落ち着いた
映像の向こうで、サンジ君が頭を押さえてうずくまっている
2ヵ月前と同じように、ゼフの義足による脳天への一撃が決まったのだ
ああの流れるような動作を見るに、この2ヵ月の間に同じようなやり取りが何度もあったのだろう
『てめェは黙ってろチビナス!
…悪いな怪物さん、それで、成果っつってもどう報告すればいい
こっちで考えたレシピで料理したところで、まさかそっちまで持ってくってわけにもいかねえだろ?』
「…その前に確認だが、本当に出来たのかね?二百種類」
『…あぁ、そういう契約だからな
作ってやったよ、二百種類のメニューとレシピ、アンタのお眼鏡にかなうかは知らねぇがな』
『おっさん、おれも作るの手伝ったんだ!
本当にうめぇもんばっかで『黙ってろつっただろチビナスが!』いっって―――!?』
…驚きだ、本当に作って見せるとは
正直な話、どんなに多くても150種類くらいだと思っていたのだが…
まぁこれでも十分常軌を逸した数であることに違いはないか
「…では、そちらに画像送信用の電伝虫があるはずだ
それでメニューとレシピを送ってほしい
気になったものはこちらで用意したシェフに実際に作らせ、私が確認する」
『分かった
だが、数が数だ、時間はかかるだろうが文句言うなよ』
「当然だとも、数を指定したのは私の方なのだからな」
やり取りの数秒後、最初の一枚が送られてくる
電伝虫10匹体制で臨ませているが、それこそ数は膨大だ
送るだけでも1時間、すべて細かく確認しようと思えば数日はかかりだろう
だが、それだけの頭脳的重労働を前にして、私の心中では未知の味への好奇心によって、まるで新たな島への船出のごとく高揚していた