加筆まとめ②

加筆まとめ②

ギン戦

「ぬゔん!!!」


 兕丹坊が雄叫びをあげて門を持ち上げる。大きく重い門扉が音を立てて持ち上がった。


「す…すげえ…!」

『…へえ、こういう感じなのか……』

「…こんなのが持ち上がっちゃうなんて…」


 感嘆の声を上げる一護達。しかし、兕丹坊は返事もなく、微かに震えて動きを止めた。


「…どうした? なに止まってんだ? 何かあったのか?」

『! …あの男は……』

「…あ……あああああ…」


 兕丹坊の視線の先、白い羽織りを着た一人の男が立っていた。カワキが静かに手首を振り、滅却師十字を取り出す。


「…………誰だ?」

「さ…三番隊 隊長……市丸ギン…」


 震える兕丹坊の後ろから門の奥を覗いた一護。兕丹坊は怯えた顔をしながらも男の名を口にした。

 男が口を開くと同時にカワキが銃を構成する。


「あァ、こらあかん」


 門を支えていた兕丹坊の片腕が飛ぶ。


「…あかんなぁ…。門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ」


 市丸が貼り付けたような笑みを浮かべて言った。兕丹坊の腕から血が噴き出す。苦痛に叫ぶ兕丹坊。


『……なるほど…早いな…』

「な…何だ!? 今…今あいつ何をした!?」


 鋭い眼差しのカワキが囁くように呟いた傍で、何が起きたか認識できなかった一護達の顔が驚愕に変わる。

 ガラガラと音を立てて門が下りてきた。兕丹坊は斬られた腕から血を撒き散らし、苦悶の声を上げながら、門を支える。市丸が感心したような声を上げた。


「おー、片腕でも門を支えられんねや? さすが尸魂界一の豪傑。けどやっぱり門番としたら失格や」

「……!! …オラは負げだんだ…負げだ門番が門を開げるのは…あだり前のこどだべ!!」

「――何を言うてんねや? わかってへんねんな。負けた門番は門なんか開けへんよ。門番が“負ける”ゆうのは――“死ぬ”ゆう意味やぞ」


 市丸が刀に手をかけた。しかし、刃が兕丹坊に届くより先に一護が市丸に斬りかかり、カワキも動く。


「…な…」


 驚いた様子の市丸と刀を振る一護が正面に対峙する。側面に位置取ったカワキが光のない目で銃口を向けた。


『門番の仕事に関しては君の言うことは最もだ。だけど、敗北者の処断は敵前でするものじゃないよ。規律の乱れが丸わかりだ』


 冷たく言い放つカワキ。そして、兕丹坊と自分達の間で勝負はついたと言う一護は、井上に治療を任せて啖呵を切った。


「来いよ。そんなにやりたきゃ俺が相手してやる。武器も持ってねえ奴に平気で斬りかかるようなクソ野郎は…俺が斬る」

「はっ、おもろい子らやな。ボクが怖ないんか?」


 笑みをこぼした市丸に、一護が返答する言葉を遮って夜一が制止の言葉を叫ぶ。


「もう止せ一護!! ここはひとまず退くのじゃ!!」

『夜一さんに賛成だ。撤退しよう、一護。彼と戦うのも、そこの門番を助けるのも…どちらも本来の目的じゃない』


 夜一の言葉に賛同を返したカワキが撤退を促す。二人の言葉を聞きながら、市丸が何かに気付いたように声を上げた。


「…キミが黒崎一護か」

⦅……この男…⦆


 漏れた言葉と雰囲気を変えた市丸に、カワキが妙な違和感を感じ取る。

 自分を知っているのかと聞き返した一護に応えず、市丸は独り言のような口調で話しながら門の奥へと歩みを進めた。


「なんや、やっぱりそうかァ。ほんなら尚更…ここ通すわけにはいかんなあ」

⦅……これは好都合だ⦆

「何する気だよ、そんな離れて? その脇差でも投げるのか?」


 市丸の行動を訝しむように一護が声をかける。スッとカワキが後方へ下がった。刀を持った手を水平に持ち上げ、市丸が応える。


「脇差やない。これがボクの斬魄刀や」

『一護 刀を前に。来るよ』


 市丸が腰を落として腕を引く。カワキが一護に警告した。市丸から気圧されるほどの圧が放たれ、静かに解号が述べられた。


「射殺せ“神鎗”」


 一直線に刀身が伸びた。一護は刀の側面で受け止めるも、門を支える兕丹坊もろとも流魂街へ向かって押し出される。


「く…黒崎くん!!」

「黒崎っ!!」


 カワキが市丸から視線を逸らす事なく、背走する。仲間達が一護に駆け寄る背後で、ゴォォと重い音を立てて門が閉じて行った。


「!!」

「しまった!! 門が下りる…っ!!」

「カワキちゃん! 早く外に!!」


 カワキは門の手前に差し掛かると背を向けて、弾き飛ばされた一護を追うように門の外へ向かって駆けた。


『何が目的かは知らないが……』


 後ろを振り返り市丸に視線をやりながら囁くと、市丸の顔を目掛けて一発 銃弾を撃ち込む。


「――! おっと…!危ない危ない…」


 撃ち込んだ弾丸が軽く防がれるのを確かめると、カワキは振り返ることなく門を抜けた。

 その様子を見届けた市丸は下りていく門の向こうに、笑みを浮かべ、腰を屈めて手を振った。


「バイバーーイ♡」


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