1レスまとめ
立ち塞がるは死の神
「久しぶり、A.R.O.N.A」
「お久しぶりです。ですが今はプラナと」
「ん、わかったよプラナ。………それで、いけそう?」
「はい。先生は先輩が守っておられますから。私の戦闘支援能力は全てあなたに注ぎ込みます」
「わかった。……全力で、行こうか」
目の前に広がるのは無数のヘイロー。アビドスを潰しに連合軍がやってきた。その全ての銃口が、主犯であるホシノ、ヒナ、ハナコを討つために向けられる。殺意と憎悪に満ち満ちた、悪を裁く正義の顎だ。
「残念。ここから先は通せない」
「………あなたは、確か………」
「こんにちは、ミレニアムのハッカーさん。あなた達はこの世界の先生と私の邪魔になるから、私が足止めする。………私、容赦しないから。殺す気で来ないと、あなた達が死ぬ羽目になる」
全ての咎を私に。
「ハスミ」
「ツルギ……!お久しぶりですね。最後に顔を合わせたのはいつでしたっけ。どうしました?私たちと一緒に来てくれるのですか?そうだ、コハルは?コハルも一緒ではないんですか?」
「………コハルなりに決着を着けに行った。今ここにいるのは、私ひとり」
今思えば、後悔ばかりが湧いてくる。ツルギがこの麻薬を避けたのはひとえに幸運、というか野生の勘、直感だ。あの時はただ単に話題のお菓子だったのだが、なんだかやけに手をつけたくなかったのだ。食べたら戻れなくなる気がして。事実、あれを口にした正義実現委員会のみんなは戻れなくなった。食べなかった自分と、補習で食べられなかったコハルだけが助かった。
「ごめん、ハスミ」
「……?謝らないでください、ツルギ。私も、みんなも、幸せですよ」
ああすればよかっただとか、こうすればよかっただとか、後に立たない後悔ばかりが押し寄せる。みんながこうなったのは、真実、私の責任で、私の罪だ。私だけが止められた。私だけがどうにかできたのにしなかった。ただの悪い予感、気のせいという言葉で済ませて。
「これが終わったら、私は正義実現委員会の委員長を辞める」
「え?それはどういう────ッ!」
流石にハスミは強い。今の一撃を避けられる生徒は中々いない。でも、それはハスミだけ。その隣にいた二人は潰れた空き缶だ。でも、いつもと違って私の気分は高揚しない。あくまで冷静なまま、銃口を向けられる。
「遊びの時間だ。……けひひっ」
神よ────彼女たちの罪をどうかお赦しください。そしてどうか、その全ての咎を私に。
あゝ誉れ高きレッドウィンター
「ご無沙汰しております」
「うむ。ご無沙汰だな連邦生徒会長代行!おいらは────」
「レッドウィンター連邦学園の生徒会長兼、環境美化部部長、書記長、運動部代表、清掃部部長、風紀委員長、給食部長の連河チェリノさん、ですよね?」
「そうだとも!だが一つ足りないな!先日のチェリョンカ試食家最優秀賞も獲得したぞ!」
「そうですか。……それで、チェリノ生徒会長。レッドウィンター周辺の雪についてですが……」
「ああ、構わん。いくらでもあるからな!……しかし、この雪があるが故に我がレッドウィンターの同志たちはあまり麻薬についての危機感が無くてな。かくいうおいらもない。なので大量採取の人手は獲得できない恐れが……」
「高級食材を使用したプリンを生徒一人につきお二つ、ご提供します。もちろん砂糖はアビドスシュガーではないものを」
「乗った!!我が学園の同志たちもすぐに動くだろう!!」
悪人らしいですよ
「………誰かな〜?」
『FOX小隊、七度ユキノだ。こんにちは、小鳥遊ホシノ副会長』
「………SRTか〜。どうしたのかな?おじさんの電話番号見つけたのはびっくりしちゃったし、あまりおじさんの心臓を驚かせないでほしいかな〜。おじさんの寿命が縮んじゃう」
『RABBIT小隊を制圧した。月雪ミヤコ小隊長の証言に従い、特定状況下になった際に我々はアビドス高校の対策委員会の面々を救出する』
「………それを信じる根拠」
『我々はRABBIT小隊の先輩で、正義を必ず遂行する。それ以外の理由が不要か?」
「…………いいよ。でも何か条件があるでしょ」
『カバーストーリーを作りたい。彼女たちが陽の光を歩めるように。そのために痕跡は全て消した。……口裏合わせを頼みたい、小鳥遊ホシノ』
「はぁ………ミヤコちゃん………ん〜………考えとく」
『恩に着る』
「私たちはミヤコちゃんにたくさんお世話になったからね。ミヤコちゃん、犯罪って犯罪はあんまりしてないし。闇市場の摘発とかって、どちらかというと良いことだしね〜」
「ああ。ミレニアムの生徒か。こんにちは、FOX小隊の小隊長を務める七度ユキノだ。話は聞いている。今回の騒動を基にして、フィクションを織り交ぜたゲームを作りたいそうだな。我々もシナリオ作製には力を貸そう。後の教訓になるからな。……月雪ミヤコ?ああ、そうだ。私たちの後輩だな。小鳥遊ホシノに聞いただろう?RABBIT小隊は皆、麻薬中毒になってしまった。彼女も例外じゃない。
………ただ………そう、だな。少しシナリオに対して口添えをするのならば、私は月雪小隊長が正気のままだと嬉しい。SRTだからかな。正気のまま、正義と不義に揺れ動いてほしいと思うのだ。それが彼女たちのためになる。彼女たちが復帰するまで今しばらくかかるだろう。どうか、負担をかけるのはやめてあげてくれないだろうか。その分の話は私と小鳥遊副会長がするよ。……私も、彼女も、悪いことをたくさんしてきたからな。色んな側面から見た今回の事態を話すことができるだろう(精一杯の意地悪い感じの表情)」
黒服の考察あるいは与太話
おや、あなたは……クックック。こんにちは、先生。此度はご協力ありがとうございました。おかげさまで、キヴォトスに眠る数多の神秘が消え失せる事態を阻止できました。
お礼を言うのはこちら?律儀でいらっしゃるのですね。ではそのお礼もありがたく受け取りましょう。……名もなき神々の王女、アトラ・ハシースの箱舟……AL-1S……アリスと言いましたか。彼女がいなければ今のキヴォトスはありませんね。砂漠が残っていれば、その砂漠を用いて悪を成す者はいるでしょうから。
そうだ、先生。あの砂漠と、天童アリスについて少し話を聞いていただけませんか。何も彼女を所有したいという話ではありませんよ。結果的に言えば天童アリスは砂漠を変換し世界を救いましたが、実は名もなき神々の王女として期待されていた役割はまた異なったもの、という考察です。
クックック……いえ、以前の色彩の嚮導者にまつわる一件を思い出していただきたい。アレが呼ばれたのはそもそも我々ゲマトリアの不手際です。というよりは、ゲマトリアのメンバーであったベアトリーチェの悪意、狂気ですね。あの時は色彩により、キヴォトスの全てが崩壊するところでした。
しかし、ベアトリーチェの意思とは別に、明確に色彩をキヴォトスに呼び寄せることでキヴォトスを滅ぼそうとした者たちもいるのです。名もなき神々を崇める無名の司祭たち。……そう、名もなき神々。天童アリス、もとい名もなき神々の王女のそれです。
アビドス砂漠の砂には色彩の断片が含まれていた。きっと、あのままキヴォトスが色彩に沈めばその全てが色彩により破壊されていたでしょう。私はこれも無名の司祭たちが絡んでいると見ています。そして、天童アリスには砂の毒が効かなかった。それは何故か。
思うに………先生。無名の司祭の狙いの一つは、名もなき神々の王女の機能で、砂漠の砂をさらに色彩との接続が強いものへと変換する、というものではないのかと。色彩をこの地に呼び寄せる触媒とするために。
そこで名もなき神々の王女が砂に狂えば正常に機能しないかもしれない。だからこそ、このキヴォトスの中で唯一、天童アリスだけは砂の毒が通用しなかったのではないか、とね。
しかし、どうでしょう。名もなき神々の王女は天童アリスへと成りました。その結果、導き出された結末はひとつ。アトラ・ハシースの箱舟の機能を用いた、砂の浄化です。無名の司祭たちが思い描いたビジョンとは相反する結果となったのです。
クックック……ええ、ただの与太話です。私は無名の司祭ではなく、彼らとの繋がりもなく、そして天童アリスの内側からも無名の司祭を知る人工知能は失われました。真実を知る方法はないのです。
いったい何故これを話したのか?……人に話を、自分の考察を聞いて欲しいときは誰にだってあるでしょう?もちろん、私にも。お付き合いいただき、ありがとうございます。またお暇があるときにでも、ゆっくりお話ししましょう。
“断るし帰る”
クックック……それでこそ先生だ………